薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

【特別授業】学校対抗トライアスロン

リアクション公開中!

【特別授業】学校対抗トライアスロン

リアクション



第三章 競技終わりて

「結果を発表するよ」
 閉じかけの目をしたベルバトス・ノーム(べるばとす・のーむ)教諭がゆっくりと口を開いて、そして雫した。
一位:シャンバラ教導団、二位:空京大学、三位:天御柱学院。はい、おめでとう。授業は以上、解散」
 特別面白くもないといった様子で壇上を降りた。
 集合場所となった広場にはテーブルが出され、バナナやチーズ、それに柑橘系のジュースなどが振る舞われている。どれもアリシアが用意した物だそうだが、彼女は彼女で「教諭の指示ですよ」と笑顔で説き応えていた。
「わーい、お・や・つ! おやつー!」とはしゃぐパートナーとは対照的にエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は静かに教諭の元へと歩みを寄せた。
「……暑くはないのですか?」
 だいぶ陽は傾いている、とはいえ相変わらずに湿度は高いし気温は高い。じっとしていても汗ばむほどだというのに教諭は変わらず今もスーツ姿にコートを羽織っている。
「そしてそれ、見ているだけで熱いのですが」
 教諭が手にするカップからは湯気が立ち揺れている。「熱くなければコーヒーとは言えない。熱いからコーヒー、コーヒーだから熱い。そういうものだよ」と言う教諭にエースは「なるほど」とだけ応えて話題を変える事にした。
「ところで、やっぱり俺らは『遊ばれて』たのかな?」
「遊ばれてた? 何のことかな?」
「何の企みもなしに、こんな授業をしたりはしないでしょう?」
「ん〜〜、どうだろうねぇ」
 白々しく応えて、教諭は目線を歩ませた。
 パーティ会場と化した広場では生徒たちが飲み物片手に楽しそうに談笑している様が見てとれる。競技の疲れなど誰も彼もどこかに吹き飛んでいるかのようだった。
「知っているかぃ? 『ハートの機晶石ペンダント』には恋人同士で持っていれば、どんなに遠く離れていても心を通じあわす事ができる、そんな効果があるんだそうだ」
 そのペンダントを教諭は選手一人一人に持たせていた。しかし出場資格の中に「恋人同士でなければならない」といったものはなかったはずだ。ペンダントは恋人同士が持たなければその効果が発揮されることはない。
「そう、まさにそこだ。思い合っている者同士の心を繋ぐ、果たしてそれは恋人同士でなければならないのか、契約を果たした者たちもまたある種の思い人であるはずだろう? それでは足りないのか、ではその距離が近ければどうだ、肌が触れるほどに接近して実際に手まで繋いでいる、この状態なら例え恋人同士でなくても心を通じあわせるというペンダントの効果は発揮されるのではないだろうか」
 堰を切ったように語った教諭は指を立ててエースに問いた。
「君はどの種目に参加したんだぃ?」
「俺は『ほふく前進』に」
「ペンダントの効果は実感できたかぃ?」
「いや……どうだろうか」
「君も同じか。まあ良い『恋人同士でなければ効果は発揮されない』それが分かっただけでも良しとしよう」
 恋人同士でなければ……確かにそうなのかもしれない。教諭に応えた通りエースにもそんな実感はなかった、しかし―――
 同じ競技を共に経験した者同士が互いの労を労うことも、同じ卓を囲んで同じ物を食べることも、飲むことも。また久しぶりの再会を喜びあうアリシアダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)ルカルカ・ルー(るかるか・るー)が会話を弾ませている事だって、きっとみんなどこかで心は通っている。
 もちろんペンダントの効果とその実証結果は教諭の導き出したものが正しいのだろう。
 ただ、参加者たちが得たものは『ただ授業に参加しただけ』でも『教諭の検証に付き合わされただけ』ではないはずだ。
 繋いだ手の温もりと合わせた2人のリズムを改めて確認できたような。参加したみなさんにとって、そんなある日の特別授業になっていたらうれしい限りだとノーム教諭は…………いえ、助手のアリシアは願っていたそうです。

担当マスターより

▼担当マスター

古戝 正規

▼マスターコメント

 
 お疲れさまです。ゲームマスターの古戝正規です。

 「【特別授業】学校対抗トライアスロン 」如何だったでしょうか。
 お楽しみ頂けたなら幸いです。

 さて、今回は単発シナリオ、しかもイベントシナリオでしたね。
 短い言葉で紡ぎまとめる事の難しさを改めて実感した次第であります。
 私事になりますが、完成した原稿データの入ったマイクロSDを取り出そうとしたところ、なぜかスロットから射出、そのまま部屋の手付かず無法地帯へダイブして行方不明になるという珍事件も起きました。
 SDとデータは3時間後に発見・救出されましたが、バックアップの大切さを改めて実感した瞬間でした。

 シナリオの話しに戻しましょう。
 学校対抗という事で、最終結果をお知らせすると、
  一位:シャンバラ教導団
  二位:空京大学
  三位:天御柱学院
  四位:蒼空学園、イルミンスール魔法学校、百合園女学院
  七位:薔薇の学舎
 となりました。参加の多かった学校と特別ルールの是非が勝敗を分ける形となりました。

 今回設けた『手を繋いで』という枷は、ただ走るだけならまだしも、泳いだり這ったり漕いだりするのはかなり難度が高いものだと思います。
 実際に私も同じようにして泳いでみたのですが、あっさり溺れかけました。プールでなければリアクションの提出が2日は遅れた事でしょう。良い子は真似をしないでね、と誰よりも心を込めて言える自信があります。皆様もお気をつけ下さいませ。
 そんな無理のある枷があるにも関わらず、多くの個性的なアクションが寄せられた事は本当に嬉しく、また助かりました。ありがとうございました。
 ガイドに「各競技における参加者の不足分はNPCで埋める」と記載しておきながら完遂出来なかった事を、ここでお詫び致します。
 私の力不足です。申し訳ありませんでした。
 
 折を見て今回のような単発シナリオも公開してゆけたらと思っております。
 次の機会にもお会いできることを心より祈っております。

▼マスター個別コメント