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第1章  古城内は魔物の巣窟!? その1


「なぁランディ?」
「ん?」
「お茶会のことなんだが、所有者を捜し出してきちんと許可をとるべきでは?」
「やっぱりそう思うか?」
「あぁ……しっかりもののランディが言いだしたって聞いて、ちょっと意外だったんだよね。
 でも、それくらいスリルがあったほうが、親睦会としては面白いのかな」

 フェンリル・ランドール(ふぇんりる・らんどーる)と会話をかわすのは、鬼院 尋人(きいん・ひろと)である。
 双方とも薔薇の学舎に所属しており、幾度かの遭遇も経験済み。
 騎士道精神を重んじる者同士、意見も近しいものがあった。

「俺も迷ったのだが、少なくとも古城の掃除は、悪いことではないと思うんだ。
 その過程でひょっこり持ち主が現れてくれれば万々歳。
 現れなければ、さっさとやって撤退すればいいしな」
「うん、そうだね……はっ!
 モンスターの気配だよ!」
「ああ……噂をすればそこの部屋に……」
「いや〜っ!
 マスター、もう帰りましょうよぅ……ここ絶対なにか出ますよ。
 幽霊とかゴーストとか白い悪魔とか赤い彗星とか……」
「……受けた依頼を投げ出すわけにはいかない……それと、最後の2つは絶対出ないと思う」
「でもでも、モンスターとか出るんでしょう?」
「だから、3つ先の部屋にいるんだって」

 尋人と同じく、【超感覚】で索敵していた銀星 七緒(ぎんせい・ななお)
 シグルーン・メタファム(しぐるーん・めたふぁむ)に敵の出現を報せるも、若干パニックに。。。

「……ゴブリンは俺がやる、シグはスライムを……」
「なっ、なら【スプレーショット】ですっ!
 って効いてないし、成す術ナシ?
 初陣で殉職なんていやだよぉ……」
「なに弱気になってるんだ、シグ!
 スライムには『核』が存在するはず……そこを狙うんだ」
「っ……うわあああああっ!」

 七緒の助言を受け、シグルーンはライトブレードを敵へ突き立てる。
 ほどなくして動きをとめたスライムに背を向け、ゴブリン戦へと参戦した。

「ゴブリンに、スライム……毒スライムですかぁ。まぁ、なんとかなりますよねぇ〜」
「うん、日奈々とあたしの2人なら、向かうところ敵なしだもん!」
「よいしょ……っと、到着ですぅ〜。
 窓……開いていると、いいんだけど……」

 お城の外、屋上に冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)冬蔦 千百合(ふゆつた・ちゆり)の姿。
 侵入を試みるも……どの窓も、開いていない。
 残念な表情を見合わせつつ、正面扉から入場した。

「まぁ、いきなりモンスターですぅ。
 フェニックスと、サンダーバード……召喚しますねぇ〜」
「防御スキルはたくさん持ってるからね、そうそう傷つけられないよ!
 日奈々には傷一つつけさせないんだから!」
「千百合ちゃん……」
「気をつけて、また増えたよっ!?」

 日奈々の召喚を邪魔されないよう、光翼型可翔機を構えて前衛へ飛び出した千百合。

「モンスターがいたら、安心してお茶会ができないよね。
 早くモンスター達を退治してお茶会を成功させないと!」
「あちきのトリッキーな戦い方に、ついてこられますかぁ〜。
 ローグならではの戦い方ですからねぇ」
(まぁ、旦那に花を持たせたいし、あくまでも地味にやりますけどねぇ)

 加勢にきたのは、ブルーウォーター夫妻とパートナーだ。
 リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)も、レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)も。
 夫婦そろって、2本のヴァジュラを振りかざす。

「いや〜しかし、旦那はいつ見ても凛々しいですぅ」
「そうか?
 レティシアにそう言われると嬉しいな、ありがとう」

 龍の右眼は【ドラゴンアーツ】により、【鬼神力】で頭に短刀のような角を、【超感覚】で大きな犬耳と長い尻尾を生やしたリアトリス。
 スキルを駆使しながら、どんどんと敵の数を減らしていった。
 そんな夫に、思わずうっとりのレティシアである。

「まったく……」
(レティ夫婦がモンスター退治に行くのはいいけど、回復役がいないじゃない!?
 絶対に、私がついてくることになるのよね」

 楽しそうなパートナー達を、少し離れたところから見守るミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)
 ともに戦う冬蔦夫妻をも視野に入れ、プティフルスティックをまわす。

「さぁ、好きなだけ戦ってよ。
 毒だけでなく、石化や睡眠などにも対応できるようにしてきたから!
 もちろん、使う必要がないのが一番だけどね」
(あきれながらも回復をしていく私……損な性分だわ。
 まぁ、仕方がないのかしら)

 ミスティは、溜息をこぼした。

「ゴブリンはともかく、スライムはちょっと面倒そうだな。
 毒スライムとか……」

 入り口少し入った廊下では、クレア・シュルツ(くれあ・しゅるつ)が懸命に敵へと挑んでいる。
 挑んで……いる?

「さぁこい……いや、やっぱいいや」

 まだまだ、戦いは始まったばかりだった。