First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
Next Last
リアクション
第四章 第3試合
イコンチーム
シフ・リンクスクロウ(しふ・りんくすくろう)&ミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)
エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)&ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)
秋月 茜(あきづき・あかね)&エーベルハルト・ノイマン(えーべるはると・のいまん)
猿渡 剛利(さわたり・たけとし)&猿渡 雉秋(さわたり・ちあき)
志方 綾乃(しかた・あやの)&リオ・レギンレイヴ(りお・れぎんれいぶ)&ラグナ・レギンレイヴ(らぐな・れぎんれいぶ)&マール・レギンレイヴ(まーる・れぎんれいぶ)
巨大化チーム
マグナ・ジ・アース(まぐな・じあーす)
近衛 栞(このえ・しおり)
近衛 光明(このえ・みつあき)
神代 明日香(かみしろ・あすか)
エリザベート・ワルプルギス
「第3試合、イコンチームのリーダーは綾乃。サブリーダーはシフだよ。では、戦闘開始!」
「この姿で、海を歩いてみるですぅ〜」
戦闘開始と同時に、エリザベートがまさかの自由行動に出る。
イコンチーム、巨大化チームともに気づかなかったフリをして、それぞれが戦闘待機体勢へと入った。
「こんな面白そうなもの、見過ごすことできないわよね」
「良いのかい? 遊び感覚で参加なんかして……他の参加者に迷惑かけるだけじゃ……」
プラヴァー(高機動パック仕様)の中では、茜とエーベルハルトが不穏な会話を繰り広げていた。
「ゲームなんだし、気にしない、気にしない」
「まぁ止めても、素直に聞く君でもないか……」
ため息を吐きながら、エーベルハルトは通信や操縦の補佐に入った。
「わかったよ……サポートは任せて」
「どうせなら派手に戦いたいわよね!」
少し離れた地点でマグナは栞と合体した。
能力の上乗せされたCHP007パワード・マグナの姿となって、敵イコンを探すために動き始める。
光明は少し離れたところでマグナの動作確認と状況把握のため、様子を見守っていた。
綾乃はTOE-TETSUグランシャリオでビル群を容赦なく破壊しながら動き始めた。
「こうすれば、敵の姿がすぐに見つけられます」
ほくほくと破壊進行を続けるグランシャリオの付近で、シフは陣形を形成する。
「見つけたぜ!」
IRR-S01Wヴェルトラウムに乗ったエヴァルトから声が上がる。
数区画先にビルから頭の飛び出したマグナの姿が見えた。
「下がりますわよ!」
リオが即座に綾乃に指示を出し、グランシャリオを後衛に配置する。
「前衛の方、全力でお願いします!」
綾乃の指示に、まずエヴァルトが飛び出し、近場のビルを足場にすると、そのまま加速をつけて飛び上がり、マグナの銃剣付きビームアサルトライフルを目掛けて打ちかかる。
流れるような連続攻撃を仕掛けるエヴァルトに、マグナは風術を発動させる。
「くそっ!」
後衛の剛利がCHP008プラヴァーで後方から援護射撃を行う。
マグナの気が逸れた隙に、即座に距離を取るエヴァルト。
「シミュレーションだからって無茶しないでよねー……実機でやったらさすがにヤバいもん」
ロートラウトがぼやくが、どことなく楽しそうだ。
「イコンとしての能力と、契約者としての能力を両方持ったイレギュラーみたいだな。巨大化チームの姿が他に見えないのが不安だが、総動員でかかるしかないと思うぜ?」
ラグナが状況を分析する。
「現状他は出現していませんし、今は目の前の敵を倒すことを考えましょう」
剛利とシフは合図をすると、同時に弾幕を展開する。
すかさずエヴァルトが再び攻撃をしかけ、茜もプラヴァーを駆る。
敵が仲間を招集しないよう、マールが情報撹乱を発動した。
綾乃はグランシャリオからビームアイによる遠距離精密射撃を開始。
動きまわりながら各機のフォローを行っていたシフの後ろで、ミネシアが不思議そうな声を上げた。
「あれ? 色のついた球がいろいろ飛んでるね!」
周囲を見渡したシフは咄嗟に仲間との通信回線をつなぐ。
「みなさん、弾幕で見えにくくなっていますが、周囲を球体に囲まれているようです。気をつけてください!」
と、突然上空の球体から天の炎と天のいかづちが降り注いでくる。
シフの助言により間一髪で各機攻撃を避けた。
「海鮮鍋がかかってるのですわよ! シャッキリ働きなさーい!」
なかなか進まない戦況に、リオがしびれを切らす。
そうこうしているうちに、再び炎といかづちが降り注いだ。
「分かったぜ! それぞれ色の違う球が、視覚の代わりと、攻撃用のやつになってるんだ! 色の判別がつけばだいぶ楽になるぜ!」
「了解! 暴いてみせるわ!」
海のほうへと動いていく球を茜が追っていく。
「単独行動は危険です!」
慌ててシフが後を追う。
天のいかづちの座標攻撃で集中攻撃を受けそうになっていた茜を、シフが引き戻す。
先ほどまでシフたちがいた場所では、マグナとグランシャリオが壮絶な技の打ち合いを繰り広げていた。
合間を縫って飛び込んでいくエヴァルトと、剛利の援護射撃が連続し、壮絶な戦場となっていた。
「こちらも来るよ!」
エーベルハルトの声に、シフと茜は咄嗟に飛びのく。
緻密に計算されつくした座標攻撃に直撃だけは避けなければと考えるシフとエーベルハルト。
「明日香と戦いますぅ」
そこに、巨大化したエリザベートが合流する。
球体がエリザベートを守るように動きを変える。
「仕方がありません。こちらはこちらで片付けましょう」
「そうこなくっちゃね!」
マグナと交戦中の味方機に連絡を取ったシフは、共に身動きの取れない状況だと判断し、二手に分かれての戦闘を決断する。
「くるくるくるくる動いてるよ!」
球の動きを目で追うミネシアの声を聞き、シフが戦略を割り出す。
「茜さん、私がおとりになります。球の色の種類を見分けましょう」
「ああああああ!! もういいじゃない! とにかくぶっ潰せばいいのよ!」
「あはは、キレたね〜」
茜の反応にミネシアが楽しそうに笑う。
「駄目じゃないか。戦場では落ち着いて行動しないと……」
エーベルハルトがため息を吐く。
その隙にも、明日香はエリザベートと共に二機の周りをくるくると回り始める。
シフがその下に飛び込むと、球体からの攻撃の隙間を凄まじいスピードで駆け抜けた。
「赤からは何も出てないんだね」
「黄色が炎よ!」
ミネシアと茜が同時に叫ぶ。
「赤が視覚ということですね。茜さん、赤の下なら大丈夫です。そこを活路に切り込んでいきましょう」
「分かったわよ!」
茜は上空に飛び上がると、プラヴァーの高機動を活かし、黄色の球体をメインで狙いながらのヒットアンドアウェーを繰り返す。
「明日香、色を変えたほうが良いですぅ」
「わかりましたぁ」
球体の種別を判別して動き始めたシフと茜の攻撃に、エリザベートが明日香に助言をすると、シフはすぐに球体の色を変え、かく乱する。
折を見てはタチの悪い攻撃を挟み込んでくるエリザベートに標準を定めると、シフも動き始めた。
BMIからのサイコキネシス出力で機動力の底上げしつつ、真空波、サンダークラップを搦めて多角的な攻撃を行う。
エリザベートが引いたのを見届けると、シフはすぐさま茜の援護に回った。
上空を飛んでいた球体が、今度は地面を凄まじい勢いで転がり、思わぬところから攻撃を受ける。
「もう!!」
飛び込んでいく茜の後ろから、シフも真空波とサンダークラップを搦めて攻撃へと繋げる。
「シフちゃんと茜さん、おっきな戦力ですぅ」
明日香はそう呟くと、一気に二人との間合いを詰め、自分ごと天の炎で焼き尽くした。
「二機反応ロスト! 敵もいなくなったぜ」
「なんにせよ、後はこっちだけってことだよね!」
マールの報告にロートラウトが反応する。
「おや、困ったねぇ」
光明も状況を把握すると少し首を傾けた。
エリザベートが遊び始めた以上、このままマグナと3機のイコンでの戦いが続いてしまう。
できることならばもう少し戦況が変わる環境で経過の確認を見たかったのだ。
「まぁ、今回はこれで貴重な資料かねぇ」
すぐに気を取り直すと、特殊例としてはなかなか良いサンプルだと考え、記録を更新していく。
すでに残り時間は半分を切っていた。
「時間もありません。一気に畳み掛けましょう」
綾乃の言葉に、剛利は再度弾幕を張った後、後衛からの射撃を開始する。
グランシャリオがそれまでの緩慢な動きから一転、バーストダッシュで高速機動を展開、マグナの死角から無尽パンチを叩き込むのを確認したエヴァルトは、ロートラウトに声をかける。
「いけるか?」
「一応、ボクは変形後の制御もしたことあるけど……大変なんだよね……。出力が桁違いになるまで跳ね上がるんだよ?」
「だから良いんだよ」
「まあ、多分大丈夫だろうけど。ボクも鍋楽しみだし、一緒に頑張ろう!」
次の瞬間、二人の機体はヴェルトラウム・エスへと変形した。
マグナの懐に飛び込むと高速で飛び回り、死角に着地しての容赦のない攻撃を繰り返す。
だが、イコン3機を相手にしながらも、マグナに大きなダメージは見当たらない。
多少の攻撃を与えても、ナノ治療装置で回復していくのだ。
舞い降りる死の翼や風術も巧みに操り、飛び回るエヴァルトや剛利の機体にも強力な攻撃を放つ。
切羽詰った戦況において、グランシャリオ内ではラグナが頭を抱えていた。
「やっぱ饕餮タイプの最大の欠点は、中に三人いるのに全員が全員暇なのが難点だなあ……」
「何をおっしゃってますの! いくらでも働きようはありますわよ!」
リオが強く主張する。
そんな中綾乃はバスターライフルを使用しマグナにぶつけていくが、あっという間に振り払われてしまう。
「にぃさん、わたしに秘策があります、試させてもらえませんか?」
膠着した戦況の中で、雉秋が突然剛利に提案した。
「どうした雉秋? 秘策? よしやってみろ」
「いいんですね? あ、耳をふさいだほうがいいですよ」
「耳を?」
首を傾げる剛利には答えず、雉秋は耳栓をはめると、ガラス板と釘を用意しつつソニックブラスターを起動し、ガラスの引っかき音をソニックブラスターの音響装置に乗せて音波攻撃を行った。
「ぎゃーーーーーー!!」
剛利の叫び声とともに、マグナも一瞬動きを止める。
グランシャリオでは状況を即座に判断したマールが、ヴェルトラウム・エスではロートラウトが通信を一瞬切り、全員がノーダメージだった。
「行くぜ!」
その隙を逃がさずエヴァルトが飛び込む。とどめとばかりにロートラウトが動きに合わせリアルタイムで出力調整をかけていく。
綾乃もイチかバチがでグランシャリオでマグナに組み合い、押さえつける。
そこを狙い、エヴァルトが左右の貫手から始まる連続攻撃で一気に片をつけた。
「ほぅ……」
まさかとも思えるマグナの停止に光明は思わず声を漏らした。
「降参ですぅ」
「私も、戦力にはならないからねぇ」
エリザベートと光明が白旗を揚げる。
「そこまで! イコンチーム有効戦力2に対し、巨大化チーム有効戦力の残り2が投降。よって、第3試合はイコンチーム勝利!」
「有効戦力2ってことは」
「剛利さんと雉秋さんは撃沈ということですね」
ハラハラと状況を見守っていた茜とシフは、ルカルカの宣言に思わず顔を見合わせて笑いあった。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
Next Last