リアクション
エピローグ
「月でも見てるのか? 村長」
集会所の屋上。その淵で夜風にあたっているこの村の村長に瑛菜は後ろから声をかける。
「瑛菜さん……はい。少し考え事を……。アテナさんは眠ってらっしゃるんですね」
瑛菜の背中にはすやすやと眠っているアテナの姿があった。
「ま、会議なんてあたしにしてもアテナにしても柄じゃないからね。あんだけ頑張ってたら疲れもするさ」
調査隊が集めてきた情報をまとめ、実際の街道作りの計画を決定する会議はつい先程まで行われていた。日が暮れる前に始まった会議だったが、今は夜の冷気にあたりが包まれている。
会議の中では調査隊の意見が活発に交わされた。モンスターへの対処や森の環境への配慮。村長が想像もついていなかったような情報や意見をアイディアが飛び交った。調査隊の一様に真剣な表情が村長は印象に残っている。
「私、何も分かっていなかったんだって実感しました。村を便利に……大きくすることしか考えてなかったんだって」
「それがあんたの仕事だろ?」
「はい。だから私にとって街道づくりとはその手段でしかなくて……環境に配慮するとか言って本当に配慮ができていたのか、今では自信がありません」
それほどまでに村長と調査隊の間には意識の差があった。ルカルカやエースの話を聞き村で使われていた薬草もただの便利なものという意識が大事にしなければいけないものだと変わったりもした。
「それにモンスターへの配慮なんて本当に考えてもいなくて……」
会議の中で一番長く話し合われたのはモンスターへの対処だった。最終的には排除などせずに彼らが襲ってくる場所を避けて街道を作ることで全会一致した。そのために彼らが襲ってくる場所、つまり薬草が生えてる場所を街道作りには不向きな場所に植え替え花壇を作る計画も発案された。
「ま、冒険者でもない普通に人には分からないものかもね」
そう置いて、瑛菜は自分の背中で眠っているアテナの顔を見て続ける。
「村長、なんでアテナがあんなに頑張ってたか分かるかい?」
「……可哀想だからとかでしょうか」
「それも当然あるだろうけど、たぶん自分に重ねた部分があるんだと思うよ」
「重ねる……ですか?」
「そう。この子にしたって、この子と契約したあたしだって、あんたらと同じ普通の人間とは言えない。だから『邪魔だから』という理由で一方的に消されるゴブリンやコボルト達をどうにかしたいと思ったんだよ」
「そんな……瑛菜さんやアテナさんたちは私たちと同じ人です」
「ありがとう。あんたがそう思っているように、冒険者の中にはモンスターたちを『生きているもの』という括りで見ているのも少なくないんだよ。そんな実感を持てるのはモンスターたちと直に命のやり取りをしているからこそだけどね」
「……私にはモンスターは人の敵対者というイメージしかありませんでした」
「それも間違ってはいないんだよ。あたしだって敵対してきたモンスター相手に手加減するほど優しくはないし強くもない。」
そこで、ただと置いて瑛菜は言う。
「敵対しなくてすむならそれが一番じゃん?」
「……そうですね。本当にあたり前のことでした」
そこで会話が途切れる。静寂の中『瑛菜お姉ちゃん』と寝言でむにゃむにゃ言うアテナの声が響く。
「……そろそろ宿に帰るよ」
「はい。おやすみなさい。瑛菜さん、アテナさん」
そう村長に見送られ瑛菜はその場を去っていく。
「瑛菜さん! 私も、あなた達と同じ実感を持てる日が来るんでしょうか?」
後ろからそう村長の声がかけられる。
「……ライブはもちろんだけど街道作るときもあたしらを呼びなよ!」
質問には答えず、瑛菜はそう返す。
「……はい! 必ず!」
瑛菜の言葉の意味を理解したのか、村長の少しだけ明るくなった声が瑛菜に届く。
(今度はもっとたくさん教えてあげないとね)
そう心に決め、瑛菜は寝坊助なパートナーを背負い直した。
初めてのリアクションでしたがお楽しみいただけたでしょうか。
少しでも面白いと思っていただけたとしたら幸いです。
今回のテーマは王道に『共存』です。開発系の話をするなら避けられないテーマといえるでしょう。
今回はまだ調査の段階なので深くはかけませんでしたが、今回分かったことを元に実際の街道作りやライブ・村おこしのシナリオを書く予定です。
その時はもっといろいろな共存の形を書けたらと思いますので、興味があればご参加いただけたらと思います。
今回のご参加ありがとうございました。
※MCやLCのキャラに違和感を感じたらリアクションの感想でご指摘していただけると幸いです。次からはもっと自然にかけるように精進します。