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【4周年SP】初夏の川原パーティ

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【4周年SP】初夏の川原パーティ

リアクション

「いい格好ね、リネン」
 軽快な声が響いた。
「フ、フリューネ……!」
 泣き出しそうな顔で、リネンが川原に手を伸ばす。が、その手にもタコが巻き付いて、リネンはよりタコの方へと引っ張られてしまう。
「あはははは、全く何やってんのよ」
 フリューネは、セクシーなタンキニの水着に、青色のパレオを巻いていた。
「さて、どうしようかな?」
「笑ってないで、ホントに困ってるの、ああっ、助けて……!」
 タコの吸盤がリネンについつく。気色悪くて、力が抜けていく。
 そしてはねた水が、水着にかかる……と、何故かリネンの水着が溶けていく。
 川の家で、勧められるがまま、怪しい水着を買ったせいだ。
「うーん、流石に可哀相か」
 フリューネは笑いながら、槍を手に駆けてきて。
「この娘は返してもらうわよ。お遊びはほどほどにね」
 絡むタコの足を払いのけ、槍を足の付け根に突き刺した。
「ふ……あっ」
 開放されたリネンが水の中へ落ちる前に、フリューネは両腕で彼女を抱き留めた。
「このまま水の中に落ちたら、生まれたままの姿になっちゃいそうね」
 おかしくて仕方がないというように、フリューネは笑っていた。
「もぉ……っ」
 ちょっと膨れるリネンを片手で抱くと、もう片方の手で自らのパレオを外して。
 リネンの体にくるっと巻きつけた。
「お嬢様、タコ男爵とのダンス、楽しめましたか?」
 お姫様抱っこで運びながら、フリューネがリネンに悪戯気に問いかけた。
「もぉ……! 楽しいわけないでしょ。ホントにびっくりしたんだから」
「ふふふ。私は楽しかったけどね! リネンのあの姿ったら……」
「フリューネー!」
 リネンは赤くなって、フリューネをぺちっと叩こうとして。
 ……やめて、抱き着いた。

「ヴァイシャリー湖には行かせないよ! 船とぶつかったら大変なことになるからね」
 美羽は軽身功で水面をぽんぽんと走る。
「リコ、行くよーっ!」
 そして、跳ねた巨大魚を、脚力強化シューズの力も借り蹴り上げた。
「任せて! 刺身よりステーキなき・ぶ・ん♪ とおっ!」
 助走をつけてジャンプをすると、理子は斬姫刀スレイブオブフォーチュンを巨大魚に叩きつけて一刀両断。
 ビチンッと、対岸に落ちた魚肉は美羽が回収。
「了解、バーベキューやってる人に、焼いてもらおー」
「うんうん、お腹いっぱい食べられそう!」
 そのままにしておくと、腐敗してしまったり、他の魚のえさになってしまうので、2人は一旦回収した巨大魚を料理場へ持っていくことに。
「すげぇ! 未知の巨大生物との戦いかー!」
 事態がよく飲み込めていなかった彼方も、巨大魚との戦いに目を輝かせていた。
「でも、なんでコーラルリーフ? 自分の剣型の光条兵器の方が使いやすいんだけど?」
「細かいことは気にしない。後でわかるから、さ、突撃よ彼方!」
 自身のパートナーが自身の星剣を奮って戦う姿はきっと好感触を得られるはず!
 そんな風に思って、祥子は星剣をティセラとテティスから借りたのだ。
「おお! タコに捕まった子達を助ける為にも、まずは魚を捕獲だ!」
「ええ」
 祥子はティセラのビックディッパーを手に、川の中へと入り巨大魚を狙う。
「俺は刺身が食いたーい!」
 彼方はコーラルリーフを手に、跳ねた巨大魚に突撃をした。
「っと、川が汚れるわ。岸に飛ばすわよ!」
 祥子はビックディッパー下方から振り上げて、巨大魚を斬り、彼方と共に体当たりと蹴りで、巨大魚を岸へと飛ばした。
「……っと」
 川原で待っていたテティスがびちびち跳ねている巨大魚を見下ろしてくすっと笑みを浮かべた。
「彼方……子供みたい」
「はしゃいでますわね」
 見守りながら、ティセラも淡い笑みを浮かべた。
(あれ? 逆効果だったかな……でもないか)
 祥子はちらりと2人を振り返り、そっと微笑んだ。
(彼方のこういう活き活きとした部分、テティスは好きだろうし……ティセラは剣を振り回して、狩りをするような人じゃないしね)
「そっち、タコの足! 川原には行かせるなよ!」
 彼方の声が飛ぶ。
「わかってる。美味しい食材を獲るのは私の役目よね……ッ!」
 祥子はビックディッパーを振るい、迫っていたタコの足を斬りおとした。
「頑張って、彼方! 料理は任せてね」
「皆様と川を、守ってくださいね」
 テティスとティセラの応援に、彼方は目を輝かせて「任せておけ〜!」と答えた。
「手料理、楽しみね」
 祥子は不敵な笑みを浮かべながら、ビックディッパーを振るっていく。

 パーティの準備をしている若者達を見て、メルヴィア・聆珈(めるう゛ぃあ・れいか)がため息をつく。
「誘ってくれるのなら、材料の準備くらいしておけ」
「現地調達で問題ないやろ〜」
 メルヴィアは瀬山 裕輝(せやま・ひろき)から川原でイベントがあるから寄っていこうと誘われただけだった。
 他に何も受けていなかったため、バーベキューの材料や、遊び道具など何も持ってきていなかった。
「森で獲ってきてもいいが、獣の肉の調理などはじめたら、主に女性達にひかれるぞ」
「ほうほう、そんな生々しいメルヴィン見て見たい〜」
「やかましい」
 嫌そうな顔で裕輝を睨むメルヴィア。
「で、なんで川原を歩いているのかというと」
「ん?」
 裕輝がにこにこ川を指差し、メルヴィアが振り向く。
「お、……わっ!」
 泳いできた巨大タコが足を一本メルヴィアへと伸ばしていた。
 メルヴィアが武器を取り出すより早く、タコの足は彼女の身体を絡めとり、水の中へと引っ張っていく。
「ちょっとま……あ、はははははは……!」
 タコだけではない。
 以下もメルヴィアへとくっつき、触手で彼女の身体を撫でまわす。
「あー……だから上着は不要だと言ったのに」
 川へと近づき、弄ばれているメルヴィアを憐れそうに裕輝が見る。
 水を吸収した上着が身体にまとわりつき、メルヴィアは思うように動けずにいる。
「うるさい、早くたすけ……は、はははは、ひぃ、やめろ……っ!」
 メルヴィアは水の中に引っ張り込まれつつ、変な声を上げている。
「しかしこのタコイカ、女ばかり狙ってるんちゃう?」
 沢山の女の子がタコに捕まっているし、イカも女性にばかりべったりくっついている気がする。
「まさか、繁殖期か……? ヤバイな」
「真顔で分析してる場合か、くそっ!」
 メルヴィアはなんとか上着を脱ぐと、足をばたつかせ、手を振りタコとイカの足から逃れようとする。
「とりあえず、その娘はやらんぞ。オレが食う!」
「き、貴様。な、何を言ってる……!?」
「ん? たこ焼きを食うって意味やけど?」
「な、なんだ……」
 タコに捕まれながら、メルヴィアは何故か赤くなっている。
「よっこらせー!」
 裕輝は、メルヴィアを助ける為、拳を繰り出すが……相性がわるく、彼の攻撃はほとんど効果がなかい。
「うわあっ、やめろ、こら!」
 タコの吸盤でメルヴィアの服が引っ張られ、隠れていた肌が露わになる。
「おおっと、ギャラリーに見られんのは……不愉快やな」
 裕輝は川に飛び込むと、渾身の力でメルヴィアをタコ、イカから引きはがし、川原へと飛ばした。
「おい……!?」
 そのまま、裕輝はタコとイカに蹴られて、ぶくぶくと沈んでいく。
「瀬山裕輝ッ!?」
(さ、皆頑張って〜な〜)
 メルヴィアは心配したが、当の裕輝は川底付近を飄々と泳いでさっさと逃げていく。
 皆が倒してくれた後は、タコ足でメルヴィアを弄……ではなく、タコ焼きをメルヴィアにご馳走しよーなどと思いながら。

「えっ?」
 スイースイーと泳いだイカが、ぺたんと杜守 柚(ともり・ゆず)にくっついた。
「な、なに……あっ、や、やめてください!」
 柚は高円寺 海(こうえんじ・かい)と共に、浅い場所で水遊びをしていた。
 格好は、お気に入りの水着。胸の前のリボンがチャームポイントだ。
「柚!?」
 気付いた海が柚に手を伸ばす。
 柚は海の手を掴みたい、と思ったけれど。
「だ、だめですっ! 離して下さい!」
 イカの触手が水着のリボンに絡まって、振りほどいた拍子にリボンが解けてしまって……。
「あっ」
 柚はざばんと肩まで川の中に入った。
「やめてください……やめてっ」
「離れろ……」
 静かな怒りを露にし、海は石をイカに投げつけた。
 スゥーと離れたイカを追いかけ、石を手に威嚇する。
「海くん……もう、大丈夫です。で、でも……」
 柚の水着のブラは解かれてしまい、流されてしまっていた。
 柚は水の中から出る事が出来ず、海にも近づくことができずに、ただ赤くなっていた。
「そっち、行ってもいいか」
 海は顔をそむけながら柚に問う。
「え!? う、うん……」
 柚は両腕で胸を隠しながら海を待った。
「これでよかったら使ってくれ」
 柚の方は見ずに近づくと、海は着ていたパーカーを脱いで、彼女に差し出した。
「あ、ありがとう……海くん」
 海はさりげなく、皆がいる川原側に立つ。
 柚は海の後ろに隠れながら、彼のパーカーを纏った。
「海くん、寒くないですか? 川の家ですぐに羽織るもの買ってきますね」
「いや、それよりも」
 海が柚に手を差し出した。
「取りに行くんだろ? お気に入りだって言ってたし」
「え……っ。うん。一緒に行ってくれますか?」
「ああ。深いから気を付けろよ。パーカー濡らしても全然構わないから」
 海の言葉にこくんと頷いて。
 柚は彼の手……ではなく、腕にぎゅっとしがみついて、一緒に流された水着を取りに行った。