校長室
リアクション
* * * しばらく時間が過ぎ――。 「ほんと、散々な目に遭ったわ……」 花妖精の村に戻ってきた雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)が、顔を出した。 「でも、向こうを出た時は夜だったのに、こっちはまだ陽が出てるのね」 どうやら、ゲート先とこの村では時差が生じているらしい。 「ちょっと遺跡の方見てきたけど、各ゲートから少しずつ調査団が村に戻ってきてるよ。詳しくは後で報告があると思うけど、大まかには伝えておくね」 平等院鳳凰堂 レオ(びょうどういんほうおうどう・れお)が、海達に報告した。 「しかし、一つ妙な点がある」 イスカ・アレクサンドロス(いすか・あれくさんどろす)が言う。 「ゲートの向こうにこちらから行くことが出来る、ということはあちらからも来ることが出来る……と思ったのだが、どうやらあちらの世界の者は――人や幻獣といったものは、こちらへ来ることが出来ぬようだ」 こちら側の世界にいる人間は自由に行き来出来るのに、ゲートの先の世界で暮らしている者達はそれが出来ない。 そこ何らかの力が働いているのは、間違いないだろう。 「だから、この村が襲撃される心配はなさそうだけど……むしろ、片方だけしか自由が利かないっていうのは、もしかしたらゲートが不完全なせいかもしれない。この村の『おとぎばなし』とかで、そのあたりも調べた方がいいかも」 その後に、各世界の状況をレオが伝えた。 「海くん、とりあえず各世界で重要な要素からまとめるのが良さそうですね」 杜守 柚(ともり・ゆず)は、海と顔を合わせた。 「そうだな。まずはそれぞれで拠点になる場所と、環境の違いの確認からか」 マッピングを行った人のデータをパソコンの中に取り込む。 「第一世界は幻獣が住んでいる世界で、辺境の村。第二世界は、魔法協会の本部がある『スプリブルーネ』っていう街。第三世界はアンドロイドがいる未来的な世界で、『オリュンズ』っていう都市。最後は、ガンマンや無法者がたくさんいる荒野の世界で、酒場のある町……こんな感じかな」 クッキーをかじりながら、杜守 三月(ともり・みつき)が分類を行っていく。 「しかも、第三世界に至っては本当の『軍』ですね。こちらでいうイコンのようなものもありますが、向こうは可変機が主流みたいです。第二世界の魔法協会は、それ自体が政治機関としても機能するほど、魔法の力が強くなっています」 「第一世界は、聖域っていう厳かな場所があって、その中にたくさん幻獣がいるみたいだね。第四世界は市長主催のガンマン達の大会がある。ほんと、見事なくらいにバラバラなんだね」 それは、封印による影響でそういう文明になったのか、それとも元々そうだったところに封印がなされたのか。 「ガンマン!?」 驚いたように大きな声を上げたのは、雅羅だ。 「知っていればそっちに調査に行ったのに……」 「次からは行けばいいだろ?」 海が彼女を促した。 先祖が保安官である雅羅としては、第四世界こそが相応しいだろう。 「そうね。たとえ無法者が襲ってきても、このバントラインスペシャルでやっつけてやるわ」 巻き込まれ体質である彼女だが、今度は自分の意志で飛び込んでいくことを決めた。 その先に待ち受けている災厄――「異変」に否応なく巻き込まれるとも知らずに。 |
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