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リアクション
宮殿内・準備
「玉座の間」では、アイリス・ブルーエアリアル(あいりす・ぶるーえありある)の下へ彼女に味方する者達が集まっていた。
彼女を囲み、協力に難色を示すアイリスに対して説得する。
「どうして、そこまでして僕と戦いたいんだ?」
アイリスは不思議そうな顔だ。
「僕は負けるはずが無いんだ。
むしろ君達の方が心配だよ」
アイリスは一礼して、「玉座」の下に立つ。
右腕に、気絶したネフェルティティの姿。
彼女と共に「玉座」に座ろうかどうか一時考えてから、首を振った。
「いいや、ここは他国の王座。
僕がそんな不敬を働くべきじゃない」
「随分と礼儀正しいんだね? 君は」
初めに答えたのは、ロイ・グラード(ろい・ぐらーど)だった。
鎧化した常闇の 外套(とこやみの・がいとう)を装備し、アイリスに対しては丁重に首を垂れる。
「やはり、『龍騎士』だからか?」
「僕は僕だよ。趣味の悪いことはしたくないだけさ。
……とそんなことはいい。君とは面識もないはずだが?」
「ああ、だが、主義主張が気に入ったのだ。
俺は君が主張するところの『戦争による犠牲を最小限に食い止めたい』という部分に共感したのでね」
アイリスの興味が、ロイに傾く。
「どうするつもりだい?」
「話し合いで解決する。
ネフェルティティを取り戻そうとする連中と」
「話し合いねぇ……」
はぁ、と大きく息を吐いたアイリスだが、口ではこう告げた。
「いいよ。
君の気が済むようにするがいいさ」
「その腕のお姫様を、守らせてもらってもいいかい?」
スッと前に跪いたのは、駿河 北斗(するが・ほくと)とベルフェンティータ・フォン・ミストリカ(べるふぇんてぃーた・ふぉんみすとりか)。
アイリスの右腕を指さして。
「ネフェルティティと俺は浅からぬ縁でね」
「ダークヴァルキリー……確か『斬った』勇者だったっけ?」
アイリスが即答する。
北斗とダークヴァルキリーの件は先刻承知の様子だ。
「で? 今度は警護をしたいって?」
「本来、これはロイヤルガードの仕事なのかもしれません」
ベルフェンティータは北斗の傍から口を挟む。
「けれど、彼らには別の役目があります。
現在ここに居る者の中でなら、私達が最適な護衛であると自負していますが……」
「いや、いい心がけだと思うよ、君達」
アイリスは柔らかく笑った。
考えがあって「警護」を買って出た北斗は、ううん、と曖昧に頷いて、ネフェルティティを受け取る。
罪悪感、てこういうものなのかな? と。
「俺は単純に君を守りたいだけだ。
君のことが好きなんだ! アイリスさん」
エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)はどさくさに紛れて告白した。
傍らで、メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)が頭を抱えている。
「まったく君って人は……」
アイリスはプッと噴き出した。
「相変わらずだね? エース。
それでどうしたいんだい?」
「なに、簡単なことさ」
エースはアイリスの手を握って、力説する。
「貴女の無事が、俺には何よりも重要なんだ!
貴女を亡くしたくないから……だから、傍で守らせて欲しい」
アイリスは守ることはともかく、仲間に入ることだけは了承した。
「OK! 君と、メシエだね。
適当に見学でもしていてくれ」
残りの者達は「百合園女学院」で、つまりアイリスの学友達だった。
桐生 円(きりゅう・まどか)。
オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)。
カトリーン・ファン・ダイク(かとりーん・ふぁんだいく)。
明智 珠(あけち・たま)。
牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)
ラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)。
の、以上6名。
「アイリスの性格は面倒臭いからね……」
溜め息をついたのは円。
「だから、守るんだ。
友達じゃないか! 地獄の底まで付き合うつもりだよ」
「あたしだって!
それに、あの学校は好きだから。アイリス」
アルコリアは両肩をすくめて見せる。
「だから、このまま黙ってなんかいられません!」
「私は、アイリスさんには何か考えがあって、こんな行動に出られていると思って……」
「僕に考えなんてないさ……」
哀しげな顔。
カトリーンはアイリスの返答に面食らう。
だが、これも彼女の作戦かもしれない――。
「そんなことを言って、私達を遠ざけようとしても無駄なんだからっ!」
「遠ざける? 別にそんなつもりはないけれど……」
アイリスは困ったように苦笑して、友人達に一礼した。
「ありがとう。
疲れたら、僕の後ろにくるんだよ?」
こうして、アイリスは合計12人の頼もしき勇者達を獲得したのであった。
そして、戦いの時は迫る――。