空京

校長室

戦乱の絆 第3回

リアクション公開中!

戦乱の絆 第3回
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リアクション


エピローグ

 アイシャの戴冠式が成功したことで、間もなくシャンバラは統一と独立を宣言することとなった。


 そして、国家神の出現に伴い、龍騎士団は撤退を余儀なくされる。
 正式な国家に対しては宣戦布告なしに戦争を行えないためである。
 アイリスは百合園女学院を去り、高原 瀬蓮(たかはら・せれん)もまたシャンバラへ戻ってくることは無かった。
 一方、イアンの死などにより後ろ盾を失ったメニエスミストラルも、藤乃と地球系鏖殺寺院の手引きによって、早々に姿を消していたのだった。


 国家神の復活に加え、御神楽環菜がナラカより帰還したという報を受け、シャンバラは新たな年を前に大きく活気づき始めていた。
 それに合わせ、地球側の反シャンバラ勢力は、その勢いを削がれていく。

 東西シャンバラは統一後も行政区分として残され、そのため、空京は西シャンバラ首都兼、シャンバラ王国首都となった。


 ――空京。
 シャンバラ宮殿では、アムリアナの追悼式典が始められようとしていた。

「…………」
 理子は控えの部屋で、ぼんやりと何も無い壁を眺めていた。
 他の人たちは、忙しそうにしている。
「……これで、良かったんだよね? ジークリンデ」
 呟いた声は、誰にも聞こえなかったのだと思う。
 返る声は無かったから。
(いつも、そばに居たのに。……ずっと声の届くところに居たのに。一緒に話したり、笑ったりしてたのに)
 そして、準備が出来たことを告げられ、理子は立ち上がった。

 ジークリンデ。
 アムリアナ。
 シャンバラの女王。
 彼女はシャンバラのために決断し、そして、失った。
 シャンバラに住まう全ての人々のために生き、死んだのだ。
 それは全て、彼女の望んだことだった。
(シャンバラを救うには、それしかなかった……それでも……でもね、ジークリンデ。なによりも、あたしは、生きることを望んで欲しかった)
 幾度と繰り返してきた、誰にも言ってはいけない想いを噛み押し込みながら、長い廊下を抜ける。
 そこには、大勢の人が居た。
 シャンバラ中から集まった人々が、宮殿の敷地の外までも溢れ、空京の街の果てへと広がっていた。
「……ジークリンデが、守りたかった人たち」
「はい」
 呟いた理子の傍らで、アイシャが頷く。
「皆、心からアムリアナ様の偉業を称え、献身に感謝し……その死を悔しく思っている」
 アイシャが、彼らの想いに触れるように胸を押さえ、静かに言う。
「アムリアナ様が愛したように、皆、アムリアナ様を愛していた……」


 やがて、アイシャは用意されていた壇上で宣言した。
「シャンバラ全盛期を築き上げ、復活した現代においても、シャンバラの民のために尽くしたアムリアナ女王の意思は……私が全て引き継ぎます」
 そして、黙祷を捧げ終えた彼女は、静かに呟いた。
(……あなたの想いを叶えられるのは、私しか、いませんから)


 式典が終わり――
「……アレだな。なんかこー、今日は……私も、頑張らなきゃなー、と思ったぞ」
 セレスティアーナが式典用のシックなドレスに似合わないガサツな格好で椅子に腰掛けながら言う。
「ジークリンデの意思かぁ」
 理子はアイシャの宣言を思い出しながら零した。
 アイシャが二人を真剣な眼差しで見つめながら問いかける。
「これからも協力してもらえますか……?」
 二人は小さく瞬いてから、笑み、頷きを返した。
 と――
「理子様」
 北条真理香に呼ばれ、理子は振り返った。
「式典を終え、お疲れのところ申し訳ありませんが……これから、東京へ向かう準備を」
「うん、分かってる」
 理子は頷き、小さく息をついた。




 或る館。
 
「――というわけさ、マヌエル。呆れただろ?」
 彼はマヌエル枢機卿へと笑いながら問いかけた。
 彼が話したのは、彼の赤裸々な半生だった。
 マヌエルは、懺悔を聞かされた神父のような気持ちで椅子に背を預けた。
 彼は決して許しなど求めてはいないだろうが。
 古い木の音が軋む。
「……まるで“カインとアベル”のようだな」
「旧約聖書に出てくる兄弟か。いいね、ぐっと高尚になった感じがする」
 彼は楽しそうだった。
 暖炉の中で薪が小さく爆ぜる。
 マヌエルは、彼を改めて見やり、問いかけた。
「なぜ、私の力を? あなたなら一人で全てを達することができるはずだ」
「あの古代ハゲがいるからさ。こっちは派手にパーティーを盛り上げたいってのに、大掛かりな事はことごとく封じられてしまう」
 暖炉の中の炎が大きく揺らぎ、長い影が部屋を舐めた。
 やがて、その揺らぎも収まり、彼は無邪気に笑った。
「……でもね、僕は、イイことを考えたんだ。それはそれは、とってもイイことをね」




 エリュシオン宮殿。

 ミツエとの契約が失敗に至ったことを知らされ、アスコルドは笑みを鳴らした。
「ミツエなら、もうよい。我が掌中に、すでに“鍵”はあった」
 彼の目の前に控えるアイリスが、薄くカカトを鳴らす。
「大帝、私にシャンバラ討伐をお命じください」
 その後ろでは、彼女の影の中で瀬蓮が小さな肩を震わせていた。
 アスコルドはアイリスを見据え、
「敗北を覚え、悪くない顔にはなったか。が……お前のように生への執着の無い者など、どれほどの力があろうとも戦いに勝つことはできん」
「しかし――」
「カンテミールだ」
 アイリスの声を切り捨てるように、アスコルドは付きの者へと言った。
「奴に、十二星華計画を再開せよ、と伝えろ」




 上野駅を出ると、大変な騒ぎだった。
 沿道に溢れた人々が日本とシャンバラの旗を振りながら理子を称えている。
 その中を、理子を乗せた御料車は、たっぷり時間を掛けながら抜け、彼女の実家へと向かっていた。
「……なんだか、すごいね」
 理子の漏らした言葉に、同乗している真理香が笑み。
「皆、シャンバラの独立を喜んでいるのです。『蒼空のフロンティア』が、ついに実現したと」
「そっか」
 真理香の言葉に微笑みを返し、理子は窓ガラスの向こうへと顔を向けた。
(……蒼空のフロンティア、か)
 小さく小さく繰り返す。
 それはいつか、ジークリンデと誓い合った言葉。
 耳に声が蘇るようだった。
 彼女と出会った場所に帰ってきたからか、なんだか彼女をとても近くに感じてしまう。
 長いため息をついて。
「……あ、イコンだ」
 窓の向こう――日本刀を装備した自衛隊の白と赤のイーグリット『ヤマトタケル』が警備に付いている姿を見つけ、呟く。


 実家に車が着くのと同時に、理子の携帯電話が鳴った。
「もしもし……?」
 携帯の向こうで声は何やら慌てている。
「うん、そりゃ、この携帯に出たんだから、あたしだけど。どうしたの? うん……うん? え―――――」
 理子は、車を飛び出していた。
 追いかける真理香の声を背後に、彼女は“あの森”に向かって、ただ走った。
 ヒールが折れて、足がもつれる。
 派手に景色がひっくり返って、強い衝撃と鈍い土の匂いを味わった。
 すぐさま地面に掌を引き摺って、強引に体を起こし、繋ぎっぱなしの携帯を拾い、靴を脱ぎ捨て、駆ける。
 何処へ向かえばいいかなんて、忘れるはずもない。
 森の中。
 あの場所に、光があって、その光に包まれて眠る彼女の姿があって――
 そして、理子は携帯電話の向こうの声に告げた。
「……うん……居た。居たよ……ちゃんと、居た」


 彼女が目覚めると、目の前に一人の少女が立っていた。
 ボロボロな格好をして、肩で息をしている。
 少女は必死に何かを言おうとしているようだった。
 だけど、次から次に出る涙をこらえ切れず溢れさせ、言葉を紡げずにいる。
 彼女は小さく首をかしげて、少女に訊ねた。
「……あなたは?」
 少女は驚いたように彼女を見つめ……
 それから、思いっきり顔を振って、ズッと鼻水を啜って、笑って、彼女に抱きついた。
「あたしは高根沢理子! あなたの、友達だよ!」

 空からは、白く柔らかな雪が降り始めていた。


担当マスターより

▼担当マスター

蒼フロ運営チーム

▼マスターコメント

『蒼空のフロンティア』運営チームです。
『グランドシナリオ 戦乱の絆 第3回』のリアクションをお送りします。

今回のリアクションは以下のマスターが担当しています。

【1】旧シャンバラ宮殿上空の戦い:森水鷲葉
【2】旧シャンバラ宮殿周囲の地上戦:九道雷
【3】旧シャンバラ宮殿内部戴冠式:大里佳保
【4】プロローグ、エピローグ、その他:村上収束
※特定の番号でかけられていても別の番号のアクションと判定され、そちらで描写される場合もございます。

また判定の結果、シナリオ全体の動きは以下のようになりました。

・シャンバラ宮殿上空の制空権は戦力差からエリュシオン側に取られた。
・鏖殺寺院のイアン・サールはイコン戦で死亡。
・その後ろ盾を失ったメニエス・レインはロイヤルガードの座を追われる。
・「マ・メール・ロア セット」での戦いでは、要塞内部が損傷した事やヘクトルへの説得などの効果もあり、最終的に要塞は撤退。制空権を取られた影響は低く抑えられた。
・地上戦においては東シャンバラは善戦したものの、西シャンバラが勝利。百合園女学院は西シャンバラに帰順することを決断した。
・戴冠式もアイリスや東シャンバラ側の抵抗を抑え無事成功。アイシャを国家神としてシャンバラは独立。エリュシオン軍も撤退した。
・また理子とセレスティアーナはアイシャのパートナーとなる。
・パラ実教頭セリヌンティウスはアンパンの頭をつけられ、教頭の座から失脚。
・十二星華エメネアは御人良雄と契約し、立川るるそっくりになる。また「ブライドオブパイク」の所有者も良雄となる。
・良雄の件を他言した如月和馬は龍騎士から除名される。
・アスコルドと横山ミツエの契約は失敗(詳しくは1月公開予定の「運命の赤い糸」のリアクションをご覧ください)。
・アムリアナ女王は死を迎えたが、多くの人の想いによって復活(詳しくは1月公開予定の「女王危篤〜シャンバラの決断〜」のリアクションをご覧ください)。

今回ご参加頂いた皆様には記念アイテムとして「シャンバラ独立記念コイン」をプレゼントします。
またLCの「シャンバラ人」パートナースキルである「女王の加護」も女王復活に伴いパワーアップします。

明日12月29日には今回の統一の流れを踏まえた猫宮烈マスターの歌合戦ペリフェラルシナリオが発表される予定です。そちらにもぜひご参加ください。

次回『戦乱の絆 第二部』は2011年1月下旬に開始予定です。
本年は『蒼空のフロンティア』でお遊び頂き、誠にありがとうございました。

来年も皆様とお会い出来る事を楽しみにしております。

それでは、よいお年を!