空京

校長室

選択の絆 第三回

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選択の絆 第三回
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リアクション


異変

 戦闘は熾烈を極めた。当然、それによる負傷者や損傷イコンの数も尋常ではない。
 イコンの整備に従事していた荒井 雅香(あらい・もとか)イワン・ドラグノーフ(いわん・どらぐのーふ)にも多少疲れが見えていた。
「死闘は予想していたけれど、ここまでとはね。……この間よりもイコンを直している気がするわ」
「がーっはっは! それだけパイロットが帰ってきてるってこった! いいことじゃねぇか! なああんちゃん!」
「は、はいっ!」
 疲れていても豪快さは忘れない。そんなイワンが大きな口を上げて笑いながら、パイロットの背中をバシバシと叩いている。
 それを困ったように笑いながら見た雅香も気を新たにするべく、両頬を叩く。
「っ! ふぅ……そうよね。まだまだやれるわよね。お姉さんなんだか、しっかりしないとね! ほら、ポムクルさんも頑張って!」
「やすみがほしいのだー」
「もうしろはたをあげるのだー」
「あらー? そんなこと言っていいのかしら〜? それじゃ飴ちゃんはあげられないわねー」
 雅香の言葉に反応したのか、ポムクルさんたちがテキパキと修理をし始める。
「「がんばるのだー」」
「一糸乱れないで的確に修理し始めるとは……ほんと、恐れ入るわね。負けてられないわ」
「まったくです。ポムクルさんたちの学習能力の高さというか、器用さには見惚れてしまいます」
 姿を現したのは長谷川 真琴(はせがわ・まこと)。パートナーであるクリスチーナ・アーヴィン(くりすちーな・あーう゛ぃん)は既にイコン修理に着手し始めていた。
「ああ、あなたはこの間も一緒だった……」
「はい。今回も手伝いに来ました。どうやら前よりも人手不足のようですし」
「心強いわ。ならそちらはお任せしてもいいかしら?」
「もちろんです。さあポムクルさん、お手伝いをお願いしますよ」
 そう言ってポムクルさんを連れようとする真琴だが、ポムクルさんは動かない。と、こう尋ねてくる。
「あめちゃんほしいのだー」
 現金である。
「……終わったらあげますよ。だから今は」
「修理するのだー」
 真琴が言い終わるよりも早くクリスチーナが修理しているイコンへと移動するポムクルさん。器用さだけでなく、その俊敏さも見習う対象になりうるかもしれない。
「まあいいでしょう。クリスチーナ、状態はどうですか?」
「動力の部分は問題ないかな。ま、左腕部は大破してるから取り替えた方が早いだろうね」
「その型のイコンなら、まだ替えがあるはずです。持ってきます」
 こうしてイコン修理に真琴という心強い人物が加わった。と、その時。

ズドンッズドンッズドンッズドンッ!!

「こ。この揺れは?」
「……まさか」
 雅香と真琴がイーダフェルトの方を見る。その眼に映ったのは……。
 エピメテウスが、イーダフェルトに向けて全速力で駆けている姿だった。