空京

校長室

終焉の絆 第二回

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終焉の絆 第二回
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【1】空京大捜索 3

「もう我慢ならん! どんだけザル警備なんだよこの国はぁぁぁぁッ!」
 そう言って叫ぶのは、クイーンの探索を任された一人であるハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)だった。
 その横でため息をつきながら、彼についていくのはソラン・ジーバルス(そらん・じーばるす)である。
「まったくよね。美人だろうがボインだろうがもう関係ないわ。世界を壊すっつーなら、それを阻止するまでよ!」
 二人は拳を振り上げ、怒りを露わにしていた。
 それも仕方ないかもしれない。重要人物に逃げられるのは一度や二度のことではないのだ。その度に契約者達が駆り出されていては、フラストレーションも溜まるというものだった。
 しかし、逆に言えばそれだけ相手が強大な力の持ち主だということでもある。決して結界や拘束具といった方法を取っていないわけではないのだ。むしろこれまで以上に厳重に警備されていた。それでも――アルティメットクイーンの脱走を止めることは出来なかったのである。
「とにかく、一発ぶん殴ってやらんと気がすまん!」
「そうだそうだー。やっちゃえ、ハイコドー!」
 二人は驚異的な身体能力でビルの上を走り、跳躍し、飛び回りながら、クイーンのもとに一直線に向かった。目指すは空京の北区である。HCから入った情報に、二人は迷いなく足を向けていた。



 水原ゆかりの指揮下にある部隊が空京の街を封鎖してくれたことで、ジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)フィリシア・バウアー(ふぃりしあ・ばうあー)は無事にアルティメットクイーンを追うことが出来ていた。
 すでにクイーンの居場所は把握してある。
 仲間となっている契約者達が彼女の逃亡を手助けしているとはいえ、これだけの追っ手の数だ。クイーンが空京の街から逃れるのは容易ではなかった。
「さて……、見つけたぞ」
 ジェイコブはクイーンの姿を見定めてそう言った。
 すでにクイーンは他の契約者達とも混戦状態に陥っていた。
「フィリシア、周りの市民の避難を頼む」
「ええ、分かりましたわ」
 ジェイコブに頼まれ、フェリシアは残されている市民の避難誘導に移った。
 ほとんどの市民は避難を終えているとはいえ、中には取り残されている者もいる。一人でも多く、そして人っ子一人いない状況にしなくては、これからの戦いで巻き込まれる可能性もあった。それだけはどうしても避けねばならない。
 フェリシアが市民を避難させている姿を見ながら、ジェイコブはクイーンのもとへ駆け抜けた。



「見つけたぞ!」
 そう叫んだのは、トマスらと共に作戦に参加していたカル・カルカー(かる・かるかー)中尉だった。
 彼はリリ達から連絡のあったローブを着た謎の人影を発見していた。
 時を操ったとしか思えない不思議な術で逃げおせたところから察するに、その者がアルティメットクイーンであるのは間違いないだろう。彼女は追いかけてくるカルカーやそのパートナーのジョン・オーク(じょん・おーく)を見ながら舌打ちし、なんとか市街地から抜けだそうとしていた。
 しかし、それをカルカー達の部下が阻む。
 カルカー達はすでに部下の教導団軍人達を各地に配置していて、アルティメットクイーンの行く先を包囲していた。
「くっ……」
 クイーンは苦渋に顔を歪める。
「もう諦めろ、クイーン! お前は逃げてるんじゃない! 追い込まれているんだ!」
 カルカーは叫び、クイーンの足を止めようとした。
 もちろん、それだけでクイーンは諦めようとはしない。何としてでも抜けだそうと、カルカーやその部下達の前から逃げ出した。
「クイーン!」
「!?」
 そこに、トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)らが現れる。
 パートナーのミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)三船 敬一(みふね・けいいち)ロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)達に囲まれ、アルティメットクイーンは逃げ場を失った。
 しかし、その時である。
「なにっ!?」
 天空から急降下してきた光の女騎士達が、トマス達の前に立ちはだかった。
「くっ! クイーンを守ろうっていうのか……!?」
 トマス達は立ち止まって叫ぶ。
「トマス大尉! ここは俺達に任せるんだ!」
 そこで前に出たのは、三船敬一だった。
 彼は自動小銃を手に銃弾の雨を叩きこんだ。もちろん、光の女騎士達はすぐにその場から離脱して銃弾を避ける。その時にはすでにクイーンの姿はなく、逃げ出してしまったようだった。
「早く! クイーンを追うんだ!」
 敬一の言葉に従って、トマス達はクイーンを追って動き出した。
 光の女騎士達はそれを追おうとする。が、敬一と、それに従う傭兵団の者達がそれをさせなかった。自動小銃の銃弾と、傭兵団の振るう剣の音が響く。
「淋! 奴らの動きを止めてくれ!」
「ええ、分かりました」
 敬一に頼まれ、白河 淋(しらかわ・りん)はグラビティコントロールを放った。
 それは空間の重力力場を歪める術だった。空を飛ぶ光の女騎士達はすさまじい重力の負荷を受け、思うように飛べなくなる。
 そこを狙って、敬一の更なる追撃が始まった。
「うおおぉぉぉぉぉッ!」
 気合いの声と共に、敬一は自動小銃を撃ち込んでゆく。
 傭兵団もそれに続いて攻撃に転じる。光の女騎士達が振るう槍と、傭兵団の剣がぶつかり合い、交錯し合い、小銃の音が辺りに響き渡る。光の女騎士の槍が味方へと届きそうな時には、淋がアブソリュート・ゼロの氷の壁を生み出した。
「させませんよ。これ以上、味方を傷つけたりはさせない!」
 刃と氷の壁がぶつかり合い、甲高い音が鳴り響く。
 彼らと光の女騎士達との戦いは、これからが正念場だった。