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エクリプスをつかまえろ!

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エクリプスをつかまえろ!

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 時枝 みこと(ときえだ・みこと)は、ふふっと不敵な笑みを浮かべると大見得を切って叫ぶ。
「設営なら俺に任せろ! テントマイスターみことの実力を!」
「みことさん、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない…冗談だ、気にするな。さ、ささ、コツコツとテント設営の仕事をしよう」
 パートナーのフレア・ミラア(ふれあ・みらあ)に軽くスルーされて、みことは居場所のない感じで笑い、誤魔化すだけだった。
 巫女服を着た御厨 縁(みくりや・えにし)サラス・エクス・マシーナ(さらす・えくす ましーな)も、一生懸命、日用品の納入を行っていた。


 八神 甲(やがみ・こう)らは料理をする場所の設営に当たる。甲はメガネをくいっとあげながら、かまどをつくるために手際良く薪を組み、周りに風よけのブロックを積み上げた。
 業者たちも次々に到着し、簡易トイレや調理機材、自家発電のクーラーボックスなどをどんどんと搬入していく。
樹月 刀真(きづき・とうま)さんすか?」
 業者に急に声をかけられ、刀真は驚いてしまう。
「そ、そうですけど」
「校長から、樹月 刀真さんにはタダで手伝ってもらえるって聞いたんで〜、これ、お願いします」
「なんですか、これ」
「校長が来るかもしれないってんで、校長用の特別なテントだそうです。ビロードで出来た特殊な高級テントですんで、設営、気をつけて下さいね」
 どっしりと重いテントを渡され、すっかり最近では御神楽 環菜のパシリにされている刀真は叫んだ。
「環菜校長のアホーーー」

「お、かわいい子があそこにも! なぁなぁ、それ大変そうだな? 手伝うぜ! あとエクリプスを見たあと、夜まで二人っきりにならねーか? そそ、人目につかない草むらとかで! え? ダメ? おっとアブネエな、殴るこたないじゃん。あーあ、何がいけなかったんだ…まぁ、いいや。次の子こそは! おっと。フラれたって声かけたからにゃ友達だ。ちゃーんと手伝うぜ! いや、手伝わせてくれよな。頼む!」
 ナンパ目的で、次々に女生徒に声をかけていくのは、鈴木 周(すずき・しゅう)。見た目は悪くないのだが、不良っぽいところと『モテ期』とやらが彼を避けていたりでもするのか、さっぱりと女性に縁がない。
「おっとおねーさま。綺麗ですねえ〜大人っぽいですねえ〜セクシーですねえ〜そんな重たいものを持ってちゃ、あんたの細い腕が折れちまう。俺がエスコートするから、一緒にエクリプス、みないかい?」
「心配ご無用です。それに私にはパートナーがいますから」
 ゆうのパートナー、カティアは頭の横で一本に束ねた美しい金髪をゆらし、にっこりほほえんで、周の手をかるく払ってしまう。
「そうですか〜残念。ああ、おれにはやっぱり、ケテルしかいないのかも…」
 周はどういう思考回路をしているのか、ケテルの「人々の愛に灯をともし…」と言う台詞を言った際、それが自分に向けて言われたものだと思い込んでいるのだ。
「ケテル、君のつっけんどんな態度も、照れているだけなんだな…守ってあげたいぜ! ケテル! 愛してる!」
 と、自分の体を抱きしめる周なのであった。

 スカーフェイスの御風 黎次(みかぜ・れいじ)と、ノエル・ミゼルドリット(のえる・みぜるどりっと)、そして眼鏡属性ドジッ子風味のアデーレ・バルフェット(あでーれ・ばるふぇっと)は料理に取りかかっていた。童顔で、さらに巨乳と言うノエルが料理をしている姿はまるで『新妻』とでも言った風情で、とても様になった。
「今晩はカレーです。たっぷりのスパイスを使って、皆さんに一日の疲れをとって貰いましょうね、黎次さん」
「明日以降、東條 カガチが作る謎肉が出るって噂だしな…負けないように頑張るぞ、ノエル」
「ええ。大草 義純さんも『エクリプス焼き』の屋台を出すと言う噂。負けられません」
「『エクリプス焼き』ってどんなのだろうね〜」
 アデーレは『エクリプス焼き』に興味津々、と言った所の様子。
「いっぱい甘いクリームが詰まってるといいなあ…」
「あの、私もお料理に参加しますわ」
 ミルフィ・ガレット(みるふぃ・がれっと)が顔を出すが、パートナーの神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)が慌てて止めに入る。
「だめ! ミルフィは見てるだけで良いのよ! …というわけで、私もお手伝いさせて下さい」
「ど、どうぞ」
「ごめんなさい、皆さん。ミルフィの料理の腕はちょっと、いえ、かなり、残念なのです。言うなれば、このカレーの釜が地獄の釜に変わってしまうような出来になるのです…」
 小声で有栖が言うと、黎次と、ノエルはごくり、と生唾を飲み込んだが、アデーレは少しだけ『どんな地獄のカレーになるのかなあ』と、興味を示していた。
 ウィングは生徒たちには知られないよう、キャンプ周辺を囲うようにして糸に防犯ブザーがついたものをめぐらせておき、糸に引っかかると大きな音が出るよう細工し、蛮族たちの不意打ちを防ぐようにしていた。夜は腕に覚えのある者が、交代で警備に当たる事になっている。
 
 ゆったりと時間を過ごすつもりだったメニエス・レイン(めにえす・れいん)や、ミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)も手伝いにかり出される。
「ああ、ミストラル、おなかがすいたわ。それにしても恋愛運が上がるだのなんだのと…なんでほとんど観測されたことがないのに、根も葉もない話が付いてくるのかしら…? これだから平和ボケしてる奴らは好かないわ…」
「メニエス様、恋愛に関して人々の期待が膨らむのはいつの世も同じこと。噂ばかりが先行してしまったのでしょう。ささ、これが終わったら、美味しい食事を作って紅茶を入れて差し上げますから、しっかり頑張って下さい」
「相変わらず優しい顔をしてドSだわ、ミストラル…」