リアクション
第6章 エンディング
エクリプス・ハンティング、最後の夜。キャンプファイヤーが開催された。もちろん、『謎肉』と『エクリプス焼き』の屋台も出ている。
「わあ〜キャンプファイヤー! あっちには屋台が出てる〜どっちにしようかな」
ふらふらとするミーナの手を、葉月は離さないようにするのだけで必死だった。
「ミーナ、落ち着いて」
満天の星空の下のキャンプファイヤーでは、みなが歌を歌ったり、フォークダンスを踊っている。
デズモンドはすでに、キャンプファイヤーが始まる時点で、すやすやと眠ってしまっていた。
「おやおや、眠ってしまいましたか。風邪、引きますよ…」
アルフレッドはそっと毛布をデズモンドにかけてやる。デズモンドを見つめるアルフレッドの眼差しは、とても優しいものだった。
人の輪から外れたところに、ぽつん、と呼雪が座っている。静かなところを好む呼雪は、ファルが楽しそうにみんなと交流しているのを、見つめているのだった。
「皆既日食か……10年前、日本でも見られたらしいが、小さかったせいか殆ど覚えてないな。あの頃は、まだ父さんも母さんも一緒にいて……いや、思い出すのはやめよう」
呼雪はふと、両親を事故で亡くして親戚中でたらい回しにされた過去を思い出し、成長して愛するパートナー、ファルとエクリプス・ハンティングに参加していることに、感慨深さを覚えた。
そこにファルが駆け寄ってくる。
「コユキ〜!」
「ファル、友達は出来たかい?」
「うん! たくさんできたよ! 友達がね、一緒にフォークダンスしようって誘ってくれてるんだ。コユキもおいでよ〜」
「俺はここで星空を眺めているよ。楽しんでおいで」
「コユキはいつもそうだよね! つまんないの…」
「俺はファルが楽しそうにしていれば、充分幸せなんだよ」
ふんわりと笑う呼雪に、ファルは「それでもコユキと一緒に遊びたいなあ」と呟く。
さらに、夜も更けた頃には有志で『肝試し』が行われた。
ウィングは愛美と組みたかったのだが、くじ引きで愛美は虚雲とコンビになってしまった。つねに『運命の人』を求める永遠なる恋の狩人、愛美は早速、虚雲にか弱い乙女っぷりをアピールしようとする。
「きゃあああああー!! こわいー!! きゃー! マナミン、こわすぎるー!! ぎゃあああ!」
「ち、近い!! 苦しい! 骨が折れる!」
愛美はいちいち激しいリアクションをとり、そのたび虚雲を折れんばかりに抱きしめる。だがこれは誰が見ても、『か弱い乙女』とはかけ離れた言動であった。
幽霊役の射月は、そんな虚雲をねっとりした眼差しで見つめている。
「虚雲くん…僕という者がありながら…」
「ひええ〜射月がまじに怖いです!」
同じ幽霊役の楓耶は嫉妬に駆られる射月の姿に本気で、引いていた。
撤収当日は仁や、みこととフレア、『てるてるキャンプ』が中心となり、ゴミの後片付けなどに追われていた。
「スターゲイザーは基本的に未踏の地である以上、その場を汚して帰るのは、マナーに反することだ。しっかりと現状回復をして帰路につこう」
そう真面目でまっとうな主張したのは、ジャージにヘルメット、フーセンガムをくっちゃくっちゃと噛んでいる、出で立ちは全く不真面目な仁だったのだ。
翔は執事らしく、スマートにテントの撤収を指示していた。
後片付けに取り組んでいたウィングに、愛美が微笑みかける。
「誘ってくれてありがとう、ウィング。とっても楽しかった!」
「そ、それは良かったです…」
愛美の笑顔にウィングは照れてしまい、なかなか彼女の顔を見ることが出来なかった。
零はエクリプス・ハンティングに参加したことに、それなりに満足感を得ていた。
「メシは上手かったし、エクリプスは思った以上にカンドー的だったし! キャンプファイヤーも盛り上がったしな、なあ、ルナ」
「ええ、とても楽しかったです。ゼロと一緒に居られただけでも、ボクは満足です」
「そいつあ良かった! お前もブシドー・ウェスタン精神が判ってきたか!」
「いえ、全然、判りません」
ルナはあくまでも、ブシドー・ウェスタンには否定的な態度をとるのだった。
エドワードは自分のパトロンであるところの環菜校長と、天文部の面々の前に歩み寄ってくる。
「あまりに神秘的なエクリプスの光景、そして思わぬ天恵の虹に声を無くし、魅入ってしまいました。このプロジェクトのことは、『空京ウォーカー』に取材記事として特集を組むことにします。楽しみにしていて下さい」
「楽しみにしているわ、エドワード」
環菜校長はにやり、と笑う。
ケテルとマルクトも一大プロジェクトを終えたせいか、ほっとした表情だった。
とはいえ、学園に帰っても、データの整理やDVD編集、細々とした作業が残っている。天文部の本番は、これからと言っても良いだろう。
「これからもよろしくね、マルクト」
「僕のほうこそ。最愛なるケテル」
ひなが声を上げる。
「『帰るまでが遠足』の法則でっす! きっちり帰りますですよっ」
「おー!」
生徒たちは腕を突き上げ、歓声を上げた。
新生した太陽は一回りたくましく成長した生徒たちと、そして、このパラミタの大地に恵みの光を惜しみなく降り注いでいる。
エクリプス・ハンティング、お疲れ様でした。ありがとうございます。楽しんでいただけましたでしょうか。
マスターの杉井 幾です。
今回は、ラブラブ系と課外授業的なムードを重視しました。また、「天文部」に入部された方には、称号としてお送りさせていただきます。
マスタリングも今作で、2作目になりました。その中で、私が感じたことをお話しさせてください。
アクションですが、記述する際、文章を整理整頓することを意識してみて下さい。
「誰が何を喋っているのか」をハッキリさせるだけでも、マスター側はアクションの判断が付きやすいものです。
また、多くの人たちが同じような行動をする中で、意外性があるものは目立ちますし採用されることが多いと思います。
しかし、皆が皆、奇抜なものだと、お話が成立しません。「シナリオを成功させる」ことを念頭に、そのあたりのバランスを意識すると、良いアクションに繋がるのではないか、それがマスター側としての『感触』です。
「どうやったら相手にスムーズに理解してもらえるか、伝えられるか」
これはゲームマスターの私が、一番に考えなければならないことです。その上で参加されるプレイヤーの方たちにも意識していただければ、そう思います。
今後は、ハデなアクション系に取り組んでみたいと思っています。
もし、よろしければ、次回作もご参加下さい。
ありがとうございました。