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リアクション
ラルクはアインと二人で岩場に座っていた。
「おおー!! アイン見てみろよ! すっげっ綺麗だなー!」
「ほぉ…これが皆既日食か…オレも初めて見る。まさかこんなに綺麗なものだとは思わなかった」
「俺もだ。地球の皆既日食は見たことねぇから分からんが、パラミタのはこんな感じなのか」
興奮しているラルクの言葉に、アインも徐々に気持ちが盛り上がってくる。
「あー…まぁ、アインと皆既日食見れて……俺は嬉しいぜ?」
「ん? ああ、オレもお前と見られて嬉しいぜ、ラルク……」
お互いに気持ちが通じ合い、ドキドキし始めてしまっているラルクとアイン。
「あ、あのよ、エクリプス、撮影しちまおうぜ!」
「お、おう。あとでお前と一緒に映りたいな、ダメかな、なんか遺影みたいになっちまったりしねえかな」
「ぜ、全然ダメじゃねえよ! アイン! 一生の記念に残るような写真になるってばよ!」
「へ、へへ、そうだよな、俺らのコンビは最強だもんな」
ラルクはぐっとアインの肩を抱いて、ポーズを決めた。
刀真は月夜の側に立っているが、月夜はむすっと黙ったままだった。
「月夜まだむくれているんですか? ほら一緒に観る為に頑張ったんですから楽しみましょう」
そういって、くしゃりと月夜の頭をなでてやる。
「刀真のバカ…だけどアリガト」
機材設置は最後までばたばたしていたが、なんとか間に合い、天文部や設置に当たったメンバーも空を見上げることが出来た。気温が落ちたことで山からの風がきつく感じられる。そして、機材を覆うシートが風にあおられ、ばさばさばさっと音を立てた。
射月はその風から虚雲の体を守るように、そっと背後から抱きしめた。
「綺麗ですね…今日来られて良かった。大好きなあなたと見れたから」
射月の甘い言葉に、いつもは素っ気ない態度の虚雲も比較的素直な態度を取った。
「お前と見たって俺は別に…でも、お前が行こうって言わなきゃ見れなかったしな。…感謝してる」
「素直なあなたとこうしていられるのも、エクリプスのおかげ、かな」
周と義純は『エクリプス焼き』をほおばりながら、サングラスを通して、ホンモノのエクリプスを見ていた。
「男同士っていうのも、まあ、いいものですね、周さん。ほら、もうすっかりと太陽が月の陰に」
義純が周をなぐさめるように口を開く。
ナンパに全敗してしまった周は少しばかり意気消沈していたが、エクリプスを見上げ
「おれは負けないぜ! 最高の恋人を作る! 見てろ! 頼んだぜ! エクリプス!」
少しばかり泣きが混じってはいたが、心機一転、誓いを立てるのだった。
ミーナは葉月の横顔を見ながら、
「ずっと一緒にいられますように…」
と、エクリプスにお願いをしていた。
仁はミラの横顔を見つめる。
「素晴らしいものだな、ミラ」
「ええ、でも仁、あなたと一緒に日食をみられたことが一番、嬉しいです」
陽太郎に貸して貰った日食用サングラスでイブは世紀の天体ショーを楽しんでいる。
「凄いわ! 陽太郎!とっても綺麗よ!」
「イブがそれだけ喜んでくれるなら、来て良かったです」
ガートナに抱きしめられながら、幸は空を見上げていた。
「素晴らしい…世紀の天体ショーです、ガートナ。この世は、まだまだ知らないことがたくさんあります。私はそれを知りたい」
「私は幸、あなたを守って行ければ幸せですぞ」
「ありがとう、ガートナ」
「すげえすげえ!真っ暗だ!エクリプスだ−!!」
「デズモンドさん、落ち着いて。周りの人たちの迷惑になってしまいます」
はしゃぐデズモンドを、なんとかなだめようとするアルフレッド。
英虎は日食観測用のサングラスを通して、必死にエクリプスを見つめている小さいユキノを肩車してやっている。
「みえるか、ユキノ?」
「見えます! どんどん、太陽が月に隠れてしまってます!」
祥子はその時、激しくレイディスに迫っていた。
「なかなか逢えないからずっと一緒に過ごしたいわ、レイ」
激しい祥子からのアプローチにも、レイディスは天体ショーに夢中になって適当に受け流していた。
「レイ、女性に弱いのはわかってるけど、私にくらいは慣れて」
「あ、充分、充分慣れてる、慣れてる」
「私だって恥ずかしいのよ、エッチな娘だと思われるんじゃないかって。だから、レイも少しは勇気を出して」
「見てみて、ほら、三日月から新月までやせちゃったぜ、太陽。どんどん細くなっちまって…」
「大好きな貴方に触れてほしいの、キスしてほしいの」
「うわあ! もう真っ暗だ!」
「もうすぐ交わる太陽と月みたいに、貴方と交わりたいわ」
「すげええ! ダイアモンド・リングだああ!」
太陽のコロナが月からあふれ出るようにして輝き、まさにエンゲージを意味する指輪さながらのように、生徒たちの目には映った。 光が空に走り、ダイヤモンド・リングが空に浮かび上がるとどこからとも無く、拍手が巻き起こる。
やがてダイアモンド・リングがいっそう激しく輝きを増し、太陽が顔を出してくると、さあっと光がパラミタに生徒たちの頭上に戻ってくる。
「太陽が戻ってきた!」
わあっと歓声が再び上がる。
沙耶と美咲は、そのダイアモンド・リングの一瞬をカメラに納めることが出来た。
「やった!」
「素敵。天文部の人たちにもあげましょう」
「そうだね!」
メニエスとミストラルは、二人きりの食事と紅茶で天体ショーを楽しんでいた。
「暗くなる空、消える太陽。素敵だったわね…吸血鬼のあたしたちには最高の天体ショーだったわ…ふう…ああ、もう、うるさいったら! わいわいと騒ぐ奴は蹴り飛ばすわよ」
「メニエス様、紅茶のおかわりはいかがですか? 気持ちが落ち着きますよ」
「お願い、ミストラル。フレーバーが強いのが、今の気分にはぴったり」
「ではミーガハテンナを淹れましょう。ミルクをたっぷり入れて…」
機材設置を泥にまみれながら手伝った、カルナスとアデーレもすっかりとエクリプスのトリコになっていた。二人は機材設置を終え『星見石の丘』から、エクリプスを観測することが出来たのだ。
「すごいね! カルナス!」
「ああ、もう、君と見られたのがなにより最高だ!」
「カルナス! ボクもだよ!」
朱華とウィスタリアも空を見上げている。
「ウィス、素晴らしいね」
「ええ、こんなものが見られるとは思いませんでした」
「ウィスと色んな土地を見て回ってさ、色んな思い出作りたいよ」
朱華の言葉に、ウィスタリアは無言でほほえんだ。
誠治は友達のシルフェとエクリプス・ハンティングを成し遂げ、はしゃいでいた。
「おお、すっげー! 日食ってすっげー! シャロとも一緒に日食見たかったなぁ」
「シャロには天文部から写真を頂いて、お土産にいたしましょう。シャロもこの場にこれたらよかったのですがね…」
「…そうだなあ」
誠治は来られなかった恋人に思いを馳せていた。
ミヒャエルもこのロマンティックなムードに押されたのか、アマーリエを口説き始める。
「アマーリエ、私はずいぶん前から君のことが…なんだねえ、あのその…」
「博士、今が一番大事な時です。集中を乱さないで下さい。それより記録映画に当てるナレーションの予定稿でも考えていて下さい」
「あ、はい、すみません」
(全く間が悪い人なんだから…)
アマーリエはふっとため息をつく。
太陽は最後に生徒たちに最高のプレゼントを贈ってくれた。太陽を取り巻くように、虹の輪が出来たのだった。先ほどまで降り注いでいた雨のおかげと言えるだろう。
「虹だ!」
「虹の輪ができたぞ」
太陽の光と七色の光線が生徒たちの頭上に降りかかる。
うわあああ! と一斉に歓声があがり、あちこちで抱き合う姿が見られた。
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