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【2019修学旅行】のぞき部どすえ。

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【2019修学旅行】のぞき部どすえ。

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第6章 走れ、エロス

「んぱーんぱーんぱー」

 感電した女子は、脳みそがトコロテン状態になっている。
 周は鼻血を垂らしながらガッツポーズ! そして天を見上げて胸に手を当てた。
「神様はいらっしゃった! ああ、アリア様! サンキューだぜッ!!!」
 この機を逃さず、飛び降りる。
 森の前の森を担当していた恭司は、その周の姿を見ていた。
「クレア! フィーナ! しっかりしろ!!!!!」
 2人は、転んで気を失っていただけで湯船に入って感電していたわけではない。
 そのため、恭司の声にすぐに目を覚ました。
「恭司! 任せといて!」
「お任せください。マスター!」
 クレアは高くジャンプして、飛び降りてきたばかりの周を“恭司特製防水ハリセン”で……

 バチコーーーーーンッ!!!

「うげえええ!!!!!」
 周は何も見ないうちに視界が☆☆☆
 そして壁に激突。
 さらに跳ね返ってきた周を、今度はフィアナが……

 バチコーーーーーンッ!!!

「ぎゃふううううん!!!」
 しかし、周にとってはなんというラッキー。
 フィアナは川に飛ばすつもりだったが、なんと! 間違えて湯船に向けて叩いてしまった!
「い、痛いけど……視界の星も消えた。神は、俺に味方した!」
 周は今、上を向いている。が、体勢があと数センチでも回転すれば、全女子を見られる! どころか、そのまま落ちれば、全女子の中に埋もれることができる。しかもみんな感電しながら恍惚としており、これはもうとんでもなくステキなことが起きそうだ!
「のぞき部のみんな! 悪いな! 一足先に天国に行ってくるぜーッ!」
 その時! ヴァレリーが呟いた。
「しまった。俺様としたことが……!」

 ドッッッッッッッッカーーン!!

 壁に穴をあけるために用意していた爆弾を誤って暴発させてしまったのだ……
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
 セシリアは凄まじい勢いで尻から飛んでいき……

 ドンッ!!!

 周の顔面に激突!!!
 周はぼよ〜〜〜〜ん! と弾き出されて川原に飛んでいった。
 尻アタックをしてしまったセシリアは、顔から火が出るどころか火を噴き出しまくって、湯船に沈んだ。

 パンダ隊じゃないけど、『セシリア・ファフレータ、戦死』

 ぴゅーーーーーーーーーーーーーーー ドサッ!
 周はテントの上に落ちた。

『鈴木周、戦死』

 そのときだった、本日最高の奇跡が起きた!
 周が落ちた反動で……

 ぼよよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!

 今度はテントで戦死していた陽太の体が撥ねた。空高く撥ねた。
「んぱー」
 脳みそがトコロテンで意識があるのかないのか分からないが、とにかくそのまま上がれば、女子風呂をのぞくことができる!
 あと3メートル。
 2メートル。
 1メートル。
 そのとき!
 陽太が迫っていることなど知らぬ伽耶は、アルラミナが投げた風呂桶フリスビーを追いかけ、混浴城のてっぺんに来ていた。
 手を伸ばし……風呂桶フリスビーを掴んだ目の前に! ほんの数センチ前に――

 陽太の姿があった!!!!!!!

 陽太が気がついているのかどうかはわからないが、伽耶は一瞬固まった。
 伽耶の柔らかそうな胸がぷるんっと揺れた。
 そして……
 さすがにマイペースの伽耶も目の前数センチののぞき行為に怒り爆発。
 手に持った風呂桶を、瞬速で振り下ろした!
 風呂桶は陽太の鼻に激突し――

 ブッッボッボッボッボッボーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッ!!!!!!!

 伽耶の身体を見たからなのか、風呂桶が当たったからなのか、陽太は大量の鼻血を噴き出しながら落下した。
「あ、赤い雨でござる……!」
 テントの下にいた薫は驚いていた。
 上にいた周は意識が朦朧としながらも涎を垂らしていた。
「お、俺も……俺も……!」
 しかし、残念。
 テントは強度の限界に達し、陽太が落ちたときにはビリッと破れた。周は上に撥ねるどころか、陽太と一緒に……ドン。ドンッ。薫の上に落ちた。
「ほんとに死ぬでござる〜」


「アルちゃん、どお? 撮れた?」
 シーラは、肩に乗ってるアレクス・カメラマンに訊いた。
「ばっちり、撮れてるにゃ」
 陽太の“奇跡”を見事にアップで撮影していた。
 スローで見れば、陽太の鼻血噴出が風呂桶激突の前か後かはっきりするだろう。もし激突前だったら、大変なことだ。のぞき部初の快挙、そしてキリン隊とパンダ隊の屈辱。すなわち……のぞき成功ということになる。
 しかし、エメがスローで見てみたが……鼻血が先か、風呂桶が先か、わからない。スーパーミラクルスローモーション機能を使えばわかりそうだが……
「困ったな」
 エメは頭を抱えた。
 この機材はある企業に頼み込んで借りてきたもので、使いこなしてなかった。説明書を置いてきてしまったため、取りに戻らなくちゃいけない。
「現場の志位君。そちらで見た人がいないか、聞いてみてください」
「了解です」
 そして、テロップを流した。

『解析には時間がかかります。しばらくライブ中継の続きをお楽しみください』

 男子風呂は静かだった。
 大地がカメラを向けると、のんびり湯に浸かっていた御凪 真人(みなぎ・まこと)は訥々と話し始める。
「はい。確かに、川原からふわっと人が現れるのを見ました。それはもう驚きましたよ」
「見ましたか! では、どうだったんです? 鼻血が先ですか! 風呂桶が先ですか!」
「すみませんね。……メガネが曇って、何も見えなかったんですよ」
「メガネですか……。わかります。仕方ないですね」
 大地は次に、やはりのんびりと湯に浸かっていた如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)にカメラを向けた。
「見てましたか?」
「え。まぁ――」
 と、そのとき。
 女子風呂から、それも脱衣所からここまで響く佑也のパートナーラグナ アイン(らぐな・あいん)の声。
「ダイナミーーック脱衣!!!」
 バサバサッ! ドーーンッ!!!
 装甲がはじけ飛び、その小柄な体がババーンと現れる。
 アインの技「ダイナミック脱衣」は、ただ豪快に服を脱ぐだけのことだった。
「アインちゃん。おバカね〜」
 アルマ・アレフ(あるま・あれふ)は軽く流しながらも闘志を燃やしたのか、露天風呂にダッシュして、
「ダイナミーーーーーック入浴!!!!!」
 バッシャーーーーン!!!
 その飛沫は男子風呂まで届いて、佑也のメガネにまでかかった。
「こらこらー。あんまり人様に迷惑かけんなよー!」
「ああ! 佑也! ねぇねぇ。おっきい胸とちっちゃい胸、どっちが好みぃ〜?」
「え。ど、どっちって……。バカ! いいから静かに入れ!」
 佑也は話しかけたことを後悔し、静かにメガネについた飛沫を拭いた。
 大地はそれを見て気がついた。
 ――佑也もメガネをしていた。
 きっと、陽太のことはよく見えなかったことだろう。
「すみません。もう結構です。おくつろぎのところ、失礼しました」
「あれ? いいの?」
 大地は別の現場に向かった。
 しかし、佑也はメガネに曇り止めを塗っていたため、実はよく見えていた。
「まぁ、どうせ後でわかるんだろうし、いっか」
 と大地を追おうとせず、風呂を楽しむことにした。

 ある意味、『志位大地、戦死』

 アインとアルマはまだ胸が大きいとか小さいとかで揉めていた。
 アインは小さい胸を張って声を張った。
「こ、こ、これは微乳じゃありません! ……美乳なんです!」
「フフン。おバカね〜。形なんてね、しょせん小細工! 圧倒的な質量に勝るものは無いんだよ!」
 ぼよーん! と大人げなくアピールするアルマ。
 2人のしょうもない会話がいつまでも男子風呂に聞こえてきて、
「はあ〜」
 佑也は恥ずかしくて、ぶくぶくと湯船に沈んだ。

 ある意味、『如月佑也、戦死』

 その頃、森の前の森。
 木の枝にひっかかっていたトライブ・ロックスターは、どこに行ったのだろうか。その姿がなかった。