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リアクション
「うわぁああ!」
生徒の悲鳴が響いた。
「大丈夫ですか?」
「ここは俺達に任せろ!」
葉月 アクア(はづき・あくあ)と共に葉月 ショウ(はづき・しょう)が駆けつけ、魔物の集団に怯える一般生徒に呼びかけた。
「逃げるのよ、早く!」
ビキニアーマー型の騎士鎧を着たカロル・ネイ(かろる・ねい)がマント型の光条兵器を構えて生徒を庇う。
「そなた達の敵はわらわ達じゃ!」
「校舎に避難して!」
魔物の注目を集め生徒を避難させるのはミア・マハ(みあ・まは)とレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)。
「大丈夫かのう?」
セシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)はしゃがみこみ、怪我をした生徒に【ヒール】をかけた。
「アク、守護は任せた」
葉月ショウが一歩前へ。幼コカトリスを前に呪文を唱え【氷術】を使用。
一般生徒を突こうと首を伸ばした幼コカトリスの足元を凍らせる。
「!」
前のめりになる幼コカトリス。そのまま固まって動かない様子に、葉月ショウはライトブレードを抜いた。
「怪我はありませんか?」
その背後では葉月アクアが一般生徒に語りかけていた。少女が苦悶の表情を浮かべている。
「逃げる時に足を挫いて……」
「治療します。そのまま動かないでください」
目を瞑り【ヒール】を唱える。暖かな光が挫いたという足を包んでいく……。
腫れた脚はみるみるうちに正常に戻って生徒は立ち上がった。
「ありがとうございます」
「いえ、当然のことをしただけですよ」
明るい笑みを向けて、葉月アクアは片手の大鎌を持ち直した。
「校舎内へ一緒に行きましょう。私が護衛します」
誘導する背中を確認して葉月ショウは幼コカトリスに向き直る。凍って動けない相手に【爆炎波】をぶつける。氷が解ける瞬間、ライトブレードで切りつけた。
「こぉおおおおおおぉお!」
鳴き叫ぶ幼コカトリスの視線を避けつつもう一方の手に持った銃剣状の光条兵器を振り上げた。
「これ以上、生徒に手出しはさせないぜ!」
叫ぶと同時に【轟雷閃】。雷をまとった銃剣型の光条兵器が幼コカトリスの胸を貫く。
「こおおおおぉおおおおおおおぉ!」
断末魔が重なる。誘導をしていたアクアが【チェインスマイト】を立て続けに繰り出し幼コカトリス一体を倒したのだ。
「アク、背後は任せた!」
再び【氷術】を使用。走り寄る途中で固まった敵にライトブレードを構えて駆け出した。
「いっけーなのじゃ!」
幼コカトリス、マンゴラドラの集団に向け、セシリア・ファフレータが【バニッシュ】を放った。
起こった爆発に、魔物は次々と倒れていく。
「ふふん、この程度ちょろいものじゃな!」
腰に手を当て口端を上げるセシリア・ファフレータに向け、人差し指を突き付ける者がいた。
「狙いが甘い。方向と角度次第ではあと二匹は巻き込めていたな」
「うぐっ……」
エルド・サイファル(えるど・さいふぁる)の指摘に言い淀みつつ再び【バニッシュ】。ばたばたと倒れていくマンゴラドラと幼コカトリス。
「それと詠唱中、ちょっとどもっただろう。あれでコンマ五秒は発動が遅れたな。練習が不十分だ」
「い、いやそれは……」
口をへの字に曲げつつも敵から視線を逸らさない。新たにやってきた大ダンゴムシへ【光術】使用。輝く光が固い体を貫く。
「やれやれ……プリーストの魔法を実戦で使うのは初めてとはいえ、及第点はあげられないな」
「む、むぐぐぐぐ……」
返す言葉が見つからず、代わりに魔物を睨む。【光術】を乱射し、大ダンゴムシを蹴散らす。
「ボケっとしてないでお主も戦えじゃ! なんのためについてきたのじゃ!」
叫ぶ。エルド・サイファルがふう、と息をついた。
「数百年はブランクがある僕に戦えとは、老人扱いが荒いな」
やれやれ、といった表情で続ける。
「あと僕がついてきたのは初めての魔法を使うお前にネチネチ……もとい心配しただけだ」
当然のことをしたまでだといった表情のエルド・サイファルにセシリア・ファフレータが頬を膨らめる。
「都合が良い時だけ老人面しおって……あと何を言いかけたのじゃ! もうおぬし帰れー!」
叫ぶ。と、飛び出してきたマンゴラドラに槍が応じた。
「まだ残っていたようだが……やはり甘いな」
「そう言いながらこっちに敵を寄こすのはやめるのじゃ! ちゃんと戦えじゃ!」
怒りの声と攻撃が同時に飛び出した。言い合いも攻撃も激しくなる。構えをとる間もなく魔物達は死骸へと姿を変えていく……。
「さあ、狩りの時間ね」
光条兵器のマントと槍を手に、集まってきた大ダンゴムシの先頭に近付く。
「ォオオオオォオン」
唸り声を上げて大ダンゴムシが丸くなり、回転して襲ってくる。カロル・ネイはにっと微笑みマントをかざした。
身を翻し、闘牛士のようにひらりと攻撃をかわす。回転を止め、向きを変えている大ダンゴムシへ槍の一撃。
「これでどう?」
得意げに微笑む。大ダンゴムシの固い背にヒビが入った。
「ゥオオオオオォオオン!」
痛みに我を忘れた大ダンゴムシが回転速度を上げ高く飛び上がる。坂道を転がるトラックのタイヤのごとく襲いかかってくる。
「無駄よ!」
頭上にマントを広げ攻撃を受け流す。ダメージは軽い。
失速して落ちていく軌道を読み取り槍を突き立てる。
「オオオオォオオオォ……」
鋭い槍が固い背から柔らかい腹を貫いた。大ダンゴムシは体液をまき散らしひっくり返ってわたわたと節足を動かし動かなくなった。
「一体目!」
振り返りざまに再びマントを広げる。もう一体の大ダンゴムシの回転が光条兵器に吸収され停止。
焦った灰色の大ダンゴムシは丸まっていた体を反射的に伸ばす。
「それっ!」
柔らかい腹が見えた瞬間、槍を繰り出した。鋭い槍は大ダンゴムシを串刺しにする。
「二体目! まだまだいくわよ!」
意気込んでカロル・ネイは大ダンゴムシの群れへと駈け出した。
火や氷、酸や雷の魔法、剣、槍……様々な攻撃から逃れた魔物が校内に散らばっている。
「マンゴラドラには火が有効のようじゃな……狙い目は覚束ない足元といったところかのう」
「足元だね」
ミア・マハの指示を受け、レキ・フォートアウフがマンゴラドラの小さな足に向け引き金を引く。
轟音と共に銃弾が放たれ狙い通りに
「大ダンゴムシは物理攻撃、マンゴラドラと小さいコカトリスは火、サハギンには雷が有効のようだってことだね。皆に知らせよう」
「連絡は、わらわに任せるのじゃ」
胸を張るミア・マハは前線で戦うメンバーに声をかける。その姿を確認してレキ・フォートアウフは近付く幼コカトリスを撃つ。
「こおおおおおおっぉ!」
当たる直前で身を引きバタバタと翼をうごめかす鳥型の魔物。
「? あれ、甘い匂い……?」
ふわりと漂う香りに気をとられた瞬間、戻ってきたミア・マハが叫んだ。
「逃げるのじゃ!」
「え……」
「こぉお!」
振り返ると幼コカトリスが目前に迫っていた。慌てて身を引くが、小さなくちばしが脇腹に当たった。
「……っ、体が!」
「コカトリスには石化能力があるのじゃ。まだ幼くてよかったのう。一時的な麻痺で済むのじゃから」
「得意げに解説しないでどうにかしてよ」
「仕方ないのう……こっちじゃ」
どこか嬉しげに幼コカトリスの気を引こうと手を打ち鳴らすミア・マハ。音と共に首を動かす幼コカトリス。
「よし、動いた!」
手足の感覚を取り戻したレキ・フォートアウフが銃を構えなおした。ミア・マハは手を叩くのをやめ携帯電話を取り出した。
「よし、こやつの相手は任せよう。わらわは調査に行った者達と連絡を取るのじゃ」
「うん、わかった」
頷いて幼コカトリスへ銃口を向ける。細い首元を狙い、打ち抜いた。
「おぉおおおこぉおお!」
鋭い鳴き声と共に、幼コカトリスが倒れた。
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