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ラスボスはメイドさん!?

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ラスボスはメイドさん!?

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ライバルよりも早く!
 親切な妖精に教えてもらった道順通り、まゆみ一行は洞窟への道を進んだ。
 途中、公園の管理人室(妖精は不気味な廃墟と表現したが)の前を通りがかった時、今回の貸し切り許可を出した公園の職員が挨拶に出てきて現実に引き戻されるトラブルがあったものの、順調に洞窟への道を進んでいた。
「洞窟は廃墟の裏手……ということは、もうすぐですね!」
 管理人室の周囲をぐるりと裏手に回り込み、道を進んでいく。
 その時。
 がしょん、がしょん、がしょん……。
 重たい、だけどもなんだか危なっかしい足音が響いてくる。
「な、何かしら……」
 がしょん。がしょん。足音はどんどん近付いてきた。そして……。
「はっはっは。久し振りだな、勇者まゆみぃ!」
 重たい鎧を無理に着込んで現れたのは、ことのはだ。
「あ、あれ。ことのはちゃんって、どんな役だっけ?」
「ほ、ほら! ライバルの剣士ですわ!」
「あ、そっか。……えっと、き、きさまは剣士ことのは!」
「こ、こんなところで出会うとはな。勇者まゆみよ、おまえもこの先にある洞窟に宝を取りに行くつもりだろう?」
 昨夜頑張って台本を読んだ甲斐もあり、すらすらと台詞を述べていくことのは。
「宝? 違いますわ。私たちはさらわれた娘さんを助けに行くのよ!」
「ふんっ。あの洞窟の奥地には、選ばれた一組のパーティしか入れないとの噂。悪いが、我々が先に行かせてもらう」
「そんな……! 人の命がかかっているのよ?」
「ふふ。知ったことかぁ! きさまと戦ってでも、我らが奥地にたどり着く! えっと……剣、剣を……」
 ことのはは剣を抜こうとするが、使い慣れないため危なっかしい。
「ああ、それはこうするんだよ」
 慌てて、ことのはのパーティにいたロッソ・ネロ(ろっそ・ねろ)が、剣の持ち方を教えた。
「武器の構え方は先が相手に向くようにする……そうするとこちらが強そうに見えるの。それを応用すればスゴ腕の戦士に見えるからね」
「な、なるほど。こうですわね。すみません、ロッソ様」
 教わったとおりに改めて、抜いた剣をかまえなおすことのは。
「ずっしりきますね……剣って意外と重い……」
 剣をかまえただけで、ことのははふらふらだ。
「お嬢様、そのように重たいものは、この執事めがお持ちします」
 高貴なスゴ腕剣士に使える執事……という役所の 道明寺 玲(どうみょうじ・れい)が、重たい剣をことのはの手からひょいと取り上げた。
「あ、あの……剣士の剣を執事がかわりに持ったらダメじゃ……」
 ロッソが突っ込むが、執事の玲は落ち着いて言った。
「この巨大な剣は、ことのはお嬢様には少々重すぎたのです。もちろん、かわりをお持ちしました」
 玲は、ことのはの手に、かわりに細くて軽い木刀を持たせた。
「さあお嬢様。準備は整いましたので、続きをどうぞ」
 軽い剣をぶんぶんと振って、にっこり笑顔になることのは。
「あ、これなら平気ですわ! よっし……勇者まゆみよ、さっそくだがここで片付けてくれようか!」
「待て、ことのははライバルだから安々と出ちゃいけねぇだろ」
 すっとことのはの前に出たのは久途 侘助(くず・わびすけ)
「ことのはが出るまでもねぇよ。ここは任せな」
「よく考えたらそれもそうですわね。……では勇者まゆみよ、わたくしの右腕を倒して、進んで来られますかね? はっはっは!」
 侘助にその場を託し、ことのはは洞窟の方へと向かっていった。
「あ……待って……!」
「へへ、行かせないぜ。まずは俺を倒してから行くんだな!」
「先に行かれてしまったわ……早く進まなくちゃ!」
 侘助とにらみ合うまゆみ。
「唸れ俺の刃よ……轟けイカズチ! 雷帝剣!」
 もちろん振り下ろしているのは木刀である。雷が出たりすることもない。
 カァン!
 まゆみが盾で木刀を防いだ!
 侘助はスローモーション程度のスピードで振り下ろしたので、赤子でも止められるような攻撃なのだが。
「もう一撃……くらえ!」
 侘助がまゆみに再び木刀を振り下ろした、その時!
「あぶなーーーいっ!」
 風祭 隼人(かざまつり・はやと)がまゆみの前に躍り出た!
「ザクッ!」
 自ら効果音を発しながら、隼人はまゆみをかばって攻撃を受け、倒れた!
「ああっ! 隼人様!」
 倒れた隼人に駆け寄るまゆみ。
「こ、これを……。持って行け……」
 隼人がまゆみに手渡したものは、一枚の地図だ。
「この先の洞窟の地図だ……。まゆみなら、役立てることができるだろう……」
「そ、そんな! 隼人様!」
 何故このタイミングで洞窟の地図が出てきたのかは、気にしないように。およそファンタジーRPGの王道的な展開である。
「行け、勇者まゆみ! 俺の屍を超えて……がく」
「隼人様ーーーー!」
 まゆみは、隼人から受け取った地図を握りしめ、立ち上がった。
「あなたは……許さないですわっ!」
 まゆみは自分の木刀をまっすぐ、侘助に突き出す!
「ぐはあっ!」
 とんっ。まゆみが突き出した木刀の先が侘助の肩に軽く当たり、侘助は大げさにふらついた。
「くっ……なかなかやるな……」
「隼人様のカタキですわ!」
「ふ。仲間の事を大事にする、真の勇者か。お前なら……洞窟の最深部まで……行けるかもしれんな……ぐふっ」
 侘助はばったりと地面に倒れた。
「……敵ながら、強い方でしたわ」
 まゆみは、剣を振り上げ、叫んだ。
「さあ、洞窟へ向かいましょう!」

『思わぬライバルの出現に、戸惑いながらも歩を進めるまゆみ一行! 彼女たちの、そして村娘の運命やいかに!』