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【十二の星の華】剣の花嫁・抹殺計画!(第1回/全3回)

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【十二の星の華】剣の花嫁・抹殺計画!(第1回/全3回)

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第一章 怪奇な現象は眼前に

 イルミンスール魔法学校の正門前、敷地内から門外を見つめるのはイルミンスール魔法学校のウィザード水橋 エリス(みずばし・えりす)である。薄い笑みを浮かべながら見つめる先にはザンスカールの森の木々、そしてパートナーでセイバーの夏候惇・元譲(かこうとん・げんじょう)が向かい合い立っていた。
 エリスは自身の足元に氷術を唱えて氷塊を作り上げると、ハーフムーンロッドで叩き砕いた。元譲は飛び来る氷弾を避けながら問いた。
「誰一人、通さない。それで良いのであろう?」
「えぇ。各学校にも連絡は届いているはずですから」
「そんな中、来校する者はそれだけで怪しい、という事か」
 エリスは笑みを浮かべて応えると、氷塊を砕いて次弾を放った。
 先程と同様に元譲は軽やかな身のこなしで氷弾を避けていく。
「元譲さん、どんな方が来ようとも、余計な事は言わないようにして下さいね」
「言いたくても、言える事の方が少ないように思えるが?」
「ふふっ、まったく、おっしゃる通りです」
 イルミンスール魔法学校内だけで起きている「剣の花嫁」の体の一部だけが「水晶化」する現象。発症者が確認されてから3日が経つというのに、未だに原因はおろか正確な状況すら把握できていないというのが現状である。誰に何を訊かれようとも、答える内容はどれも推測の範疇を超えないのである。
 氷弾を全て避けきった元譲は、片手でその身を支え立ち、再び宙を舞ってから反転して着地した。
「お体は、もう十分に?」
「あぁ、温まった。万全だ」
「そうですか、頼もしいですわ」
 水晶化の現象が奇病であれ呪いであれ、学校を封鎖する事で被害の拡大を防ぐ事が出来ると考えられる。
 話し合いによる交渉はエリスが。力を振るう者には元譲が。イルミンスールの正門は二人で封鎖する。
 エリスと元譲は涼しげな笑みを浮かべながらに視線を門先へと送っていた。


「降りますよ」
 イルミンスール魔法学校のモンクであるクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)は、空飛ぶ箒の柄を強く握り締めると、風と共に降下していった。降り立った所は学校の外壁部であるが、巨大なその壁にはまるで抉られたような穴が開けられていた。
「これはまた……」
「あぁ。さすがは世界樹イルミンスール、といったところか」
 クロセルの肩の上から同じく見つめているのは、ドラゴニュートのマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)である。倒壊した壁の足元は地面が大きく盛り上がっていた。どうやら現在も成長と拡大を続ける世界樹イルミンスールの根が外壁を破ったようであるのだが、既に幾つか同じような光景を見てきたクロセル達にとっても、この現場の倒壊が最も大きなものであった。
「マナ」
「おう」
 マナは「小人の小鞄」を取りだすと、親指大の小人を呼び出した。マナは小人を自分の腕の上に乗せると、壁に添いて警備するよう指示を出した。小人は大きく頷くと、元気いっぱいに飛び降りて壁へと走り出した。
「何かあったら、すぐに連絡するんですよ」
 クロセルは小人に声をかけると、再びに箒を舞わせて空へと昇っていった。
「まだまだ見つかりそうですね」
「イルミンスールが漲っているという事だ、悪いことではない」
「学校完全封鎖は容易ではありませんね」
 それでも警備には多くの生徒たちが名乗りを上げたため、各方角門や外壁部の警備には多くの人員を当てられている。 そこで、クロセルとマナが目をつけたのは空の警備と倒壊部の警備であった。
 「飛空艇」や「空飛ぶ箒」を使う人間だけでなく、翼を持つ他種族の侵入も考えられる。空からの警備は広い範囲をカバーできるのであった。
 クロセルはイルミンスールの森が地平線に見える高さまで上昇して、界下を見渡した。


「ねぇ、やっぱりボクも行きたいよぅ」
「駄目だ。いつ発症するか分からないんだ、じっとしてろ」
 蒼空学園のモンクである風森 巽(かぜもり・たつみ)は、上体を起こしたティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)の肩を押さえて寝かし戻した。
「タツミは? 行っちゃうの?」
「あぁ、愛沢を一人で行かせたら間違いなく迷うからな」
「なっ、失礼なっ、ここは俺たちの学校だよ、迷うなんてそんな」
「風森…… くれぐれも頼む」
「んなっ、シーちゃんまでぇぇ」
 両手をパタパタとさせているのはイルミンスール魔法学校のウィザード愛沢 ミサ(あいざわ・みさ)であり、ミサに「シーちゃん」と呼ばれるは吸血鬼の何れ 水海(いずれ・みずうみ)である。
「水海さん、ティアを頼みます」
「あぁ、了解した」
 巽は水海に視線を渡し、受けると、背筋を伸ばして駆け出した。
「行くぞ、愛沢っ」
「ちょっ、待ちなさいよぉ」
 頬を膨らませたまま、ミサは風森を追いて勢いよく部屋を飛び出した。