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闇世界の廃病棟(第3回/全3回)

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闇世界の廃病棟(第3回/全3回)

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第1章 道を閉ざす闇

 余命宣告された人々が助けを求めて入り込んだゴーストタウンは、治療を受ければ必ず助かるという噂を餌に実験材料されてしまっていた。
 病棟で作られている生物兵器の存在を知り、哀れな化け物と化した亡者を倒すべくトンネルの前に生徒たちが集合している。
「死者を使って何をやっているのかと思ったら、ろくでもない実験に使っていたのですわね。時間ですわ・・・行きますわよ陽太!」
 エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)は怯えている影野 陽太(かげの・ようた)の背をバシッと叩き、トンネルの方へ無理やり歩かせた。

-PM16:20-

 カードキーを探すために清泉 北都(いずみ・ほくと)白銀 昶(しろがね・あきら)の2人は、1階の受付カウンター内を探していた。
「なんだか結構散らかっているね・・・書類とか出しっぱなしだよ」
「あまり埃が被っていないようだな。他の生徒がその辺漁った後、そのまま放置して片付けてないんじゃないか?」
 ファイルの間にカードが挟まっていないかチェックしながら昶は顔を顰める。
「待合室にもなかったから、ここになかったらラボにあるのかな」
「引き出しの中にもないようだぜ。そろそろ他のとこも見に行ったほうがいいんじゃないか」
 カウンター内から出ると彼らは2階のラボへ探しに階段を上っていく。
「1階と違ってだいぶ薄暗いね」
「待て北都、オレが先に入る」
 ラボ2-2のドアをそっと開け、室内の匂いを嗅ぎゴーストが中に潜んでいないか警戒する。
「―・・・暗くてよく見えないな」
「入って大丈夫そう?」
「あぁ・・・一応な」
「重要な物を隠すとしたら、やっぱり人目につきにくいところとか・・・?」
 睨むように室内を見回して呟く昶の傍らで、北都は首を傾げて考えるように言う。
「そうか・・・なるほどな!」
 隠し場所に気づいた昶はニヤリを笑い、医学書が収められた本棚の裏を覗き込むと鍵穴を見つけた。
「まずはコレを退かすか」
 棚を退けようと背で押し、ズズッズズズッと右側へ移動させる。
「鍵がかかっているね。どうやって開けたらいいんだろう・・・」
「これくらいオレの手にかかれば、あっという間だぜ」
 先が曲がったドライバーのような金属をズボンの裾から取り出し、鍵穴へ差し込み馴れた手つきで開錠した。
「おっ、見ぃつけた」
 小さな扉を開けるとその中に、1枚の灰色のカードキーがあった。
「これで他のも見つけに行けそうだね!」
「あー・・・そうしたいところだが、そろそろ外に通じている道が閉じちまう頃だぜ」
「―・・・うーん・・・それじゃあ他の人に連絡とって渡そうか」
 カード探しの協力者の陽太に連絡を取ろうと、北都は無線機のスイッチをオンにする。
「つながったかな・・・?カード見つけたよ、渡したいんだけど・・・今どこの辺にいる?」
「凄いですね、もう見つけたんですか!えっと・・・分かりやすいところがいいですよね、エリシアと2人で1階の待合室へ行きます」
「じゃあそこへ行くね。―・・・さて、時間もヤバイから走っていこう!」
「ちょっ、おい!注意して進まないとゴーストどもに・・・、て・・・聞いてねぇな。まったく、しょうがないヤツだ」
 昶はヤレヤレとため息をつき、階段を駆け下りる北都の後を追っていく。



「たしか・・・待合室はこっちだったよね。なっ何!?む・・・ぅっ」
 背後から突然パートナーに抱き締められ、左手で口を塞がれた北都は逃れようともがく。
「―・・・ぷはぁっ、突然何するんだよ!」
「いやーわりぃわりぃ。こういった場所だからさ、ちょっとふざけてみただけだ」
 むぅっと頬を膨らませ、眉を吊り上げた北都はズンズンと進んでいった。
「(怒らせちまったみたいだなぁ。だが・・・あんな化け物を北都に見せるわけにはいかなかったからな・・・)」
 生きている人ではない、どす黒い肌の患者の亡霊が廊下を徘徊していた。
 気づかれてしまったらとり憑き殺そうと追いかけられてかもしれないからだ。
「あっ、来ましたね。こっちですよー」
 陽太が右手を振りながら北都たちに呼びかける。
「これだよね?カードキー」
「えぇそうです」
「それじゃあ・・・あとよろしくね」
「―・・・じゃあな、気をつけろよ」
「お気使いありがとうございます」
 灰色のカードキーを陽太に渡してやると、昶と北都は病棟の正面扉を開け外へ出て行く。
「大丈夫かな・・・?」
「後は上手くやってくれるだろうぜ」
「うん、そうだね」
 彼らがトンネルを通り抜けるとトンネル内に黒い霧が発生し、まるで生き物が這うように、コンクリートの地面から天井へと漆黒の闇が全体に充満していった。
 霧が晴れるとレンガの壁が現われ、外へつながる道を閉ざしてしまい、死者と生者の町と別離するように阻んだ。