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【十二の星の華】黒の月姫(第1回/全3回)

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【十二の星の華】黒の月姫(第1回/全3回)

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「不審な人物はいなさそうね…」
 カチェア・ニムロッド(かちぇあ・にむろっど)はスクリーンを見つめながら、ため息をつく。
 カチェアに緋山 政敏(ひやま・まさとし)リーン・リリィーシア(りーん・りりぃーしあ)らは、美術館テロを未然に防ぐために、今までの被害状況を把握する調査に出ていた。
 過去に襲撃された施設の中で、監視カメラのデータが残っているものをチェックしている。
「とにかく、監視カメラも爆発に巻き込まれて、データが残っていない場合がほとんどだしな…こいつはとにかく爆破が得意ということは良くわかったけどな」
 やる気がいまいちない、政敏はため息をつく。
「調査によると、徹底的に破壊して、その後、姿をくらます、という話を聞いているわ。『隠れ身』を使っている可能性がありそうだから、リーンに伝えておいたんだけど」
 カチェアは首を回して「あ〜」とあくびをする政敏の頭をつつく。そこにリーンが警備員を連れて飛び込んでくる。
「ちょっと、二人とも! スクープよ!」
「どうした? リーン」
「警備員さん、私に話したことを二人にも話して」
「い、いいけど。このお嬢さんに『最近、転校してきた生徒が、やってこなかったか?』って聞かれたから、あの、なんていったっけ、銀色の髪に銀色の瞳の…なんていったかな…」
『リフル』、でしょ?」
 リーンが興奮気味に警備員の肩を掴んで揺する。
「そうそう、その『リフル』という生徒が来ていたよ」
「なんのために?」
「さあ…だけど、ミルザムさんのことを知りたがっていたみたいだったような…すまん、記憶が曖昧なもんで」
「リフルが、施設を調べているって…どういうこと?」
 三人は顔を見合わせた。

 邦彦は、人気のない夕方の蒼空学園を歩いていた。
 その邦彦に盛りの影から照準を合わせる人物がいた。そして銃口が向けられ、引き金が引かれた。
「あぶない!」
 ネルがバーストダッシュで駆けつけ、邦彦を突き飛ばすと、弾は邦彦の体の側をかすめていった。
「…餌にかかったか、テロリスト!」
 アーミーショットガンを手にして、邦彦は弾が向かってきた方向へ警戒しながら走っていったが、そこには誰もいなかった。
「どうやら、シャープシューターをつかったようね」
 ネルが言う。
「…藤野姉妹は? 何をしている?」
「さきほどみたけれど、友達と下校していったわ」
「なるほど、姉妹のアリバイはあり、か…」
「こうなってくると、テロリスト、クィーン・ヴァンガードの襲撃、この学園には恐ろしい輩が徘徊している、というわけね」
 ネルはつぶやく。


第4章 【パジャマパーティとテロリスト】


 いよいよ、週末、土曜日当日。宇都宮 祥子は、パジャマパーティの準備に余念がない。もともと、赫夜に近づくためにこのパーティを企画したのだ。男子禁制のパジャマパーティ、集まった女子生徒たちは、それぞれ個性的なパジャマを着ている。
「ようこそ! パジャマパーティへ! こ、個性的なパジャマね、赫夜」
 赫夜は何故か作務衣だった。
「これが一番、楽なものでな」
「…あれ、赫夜、真珠は?」
 祥子は赫夜が一人きりなのを見とがめる。
「すまない。せっかく誘ってくれたんだが、真珠は熱を出してしまって…転校して1週間目だから、疲れが出たらしい」
「あら、赫夜がついていなくて大丈夫なの?」
「うちにはばあやと執事がいるから、大丈夫だ。それに、せっかくお誘い頂いたのに、断るのは失礼だろう?」
「うれしい。真珠も早く良くなればいいわね…赫夜、もしよかったらまた今度剣のお相手願えないかしら? それに、メルアドも交換して欲しいなあ。OK? ありがとう! そうそう、今度の休みとか、空いてる?」
「そうだな、真珠の具合次第かな」
「色々、お話ししたいの。…そうね、剣術のこととかー。あとはその綺麗な黒髪。どうやってお手入れしてるのかとか教えて欲しい!」
「判った」


☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



-----蒼空学園特別会館

 影野 陽太(かげの・ようた)は、蒼空学園特別会館屋上に張り込んでテロへの警戒にあたっていた。環菜に認められたい、そう思い、頑張っていたのだ。
 蒼空学園特別会館、ツァンダ美術館の警戒に当たっているものには、さけたちが収集した情報も伝わっている。
「爆破となると、すぐにわかるでしょう…」
 陽太がつぶやく。


 セシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)も、特別会館の警備のため、見張りに立っていた。ディテクトエビルで、害意を抱いた者がいないか探る。パートナーのファルチェ・レクレラージュ(ふぁるちぇ・れくれらーじゅ)がセシリアの近くで隠れ身を使って潜伏している。
「セシリア様、…しかし寒いですね。コートを着ておいて良かったです」
「むむ、しかし、色々聞いて回ったが、テロリストは夕方から夜にかけて、襲撃を行っているらしいではないか。…このまま、テロリストが来なくて、一晩明かすようなら、風邪を引いてしまうわ」

 アレクセイ・ヴァングライドと六本木 優希も、特別会館の警護にあたっていた。
 徐々に日が暮れていく。
 霧雨 透乃(きりさめ・とうの)霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)は上空からの見回りを飛行艇でしている。
「今日はテロはねえのか? 学園に被害がないならそれに越したことはないが」
 泰宏がつぶやいた瞬間だった。
 いきなり、特別会館の裏手から激しい爆発音と煙があがったのだ。
「な、なに?」
 透乃の殺気看破には何の反応もなく、突然の出来事だった。
「みんな、テロよ!」
 透乃が警戒に当たっていた生徒達に、一斉に通報する。
 そんな中、双眼鏡で必死にテロリストの姿を探していた陽太が、人影を見つける。
「黒いマントにフード…間違いない、テロリストだ! テロリストが特別会館の裏手から玄関方面へ走っている!」