First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
翌日。諸葛涼 天華(しょかつりょう・てんか)が藤野姉妹の歓迎会を放課後に開く、と言うメールが生徒達に回ってきた。
「へえ、楽しみ」
「私も参加しようっと」
昼休みの時間、六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)は、パートナーのアレクセイ・ヴァングライド(あれくせい・う゛ぁんぐらいど)を伴って真珠に話かけてきた。
「あの、こんにちわ…」
「おや、お前はこの間、『リフル』とやらについて聞いてきた…」
優希とアレクセイの姿に気がついた赫夜が声をかけてくる。
「はい、あの時は失礼しました。六本木 優希と言います」
「何か用かな?」
「真珠さんは手芸が得意とお聞きしましたので、お時間があれば編み物の仕方などを教えていただけないか、と思って…」
ドギマギしながら、答える優希の背を押しながら、
「真珠、ユーキに手芸を教えてやってくれないだろうか? それに赫夜姫、俺様に剣術指南をお願いしたいのだ。俺様は魔法は得意だが剣術は苦手なものでな……機会があれば赫夜姫に教授を願いたい」
アレクセイが赫夜に申し出る。
「それは勿論、構わないが、『赫夜姫』というのはなんだ?」
赫夜が困ったように首をかしげると、さらり、と黒髪が流れた。
「すみません、アレクはあだ名を付けるクセがあって」
「そうか、いつでも相手になるぞ。真珠、優希さんに手芸を教えてあげなさい。一人でも大丈夫だな? 真珠」
「は、はい、姉様」
「アレクセイ殿、それでは早速だが剣道場へ私たちは行こう」
赫夜とアレクセイは二人で剣道場へと向かった。
「わあ、私にも教えて欲しい!」
久世 沙幸(くぜ・さゆき)が身を乗り出してくる。
そのため、真珠の銀細工・手芸プチ教室が行われることとなった。
真珠が持ってきていたフェルトの布の小物入れと、ワイヤーを使ったビーズのネックレス作りを始めた。
優希は余り手先が器用ではないのか、なかなか苦戦しているようだった。
「む、難しいものですね」
「優希さん、ゆっくりで大丈夫ですよ」
「真珠、赫夜が紙に結わえている組紐の赤いリボン、あなたがつくったの?」
沙幸が質問してくる。
「え、ええ。姉様には色々つくってあげるんですけれど、なかなか身に付けてくれなくて。剣術をするとき、『壊れてしまうから』って…」
「わあ、素敵〜ストイックー。真珠のことがすきなのね。まるで美海ねーさまと私みたい!」
「『美海ねーさま』?」
「この人! 藍玉 美海(あいだま・みうみ)っていうの」
沙幸が妖艶な美少女を連れてくる。
「こんにちわ、はじめまして、真珠さん。わたくしも見学させて貰っていいかしら?」
「は、はい、喜んで」
乳白色の髪の色が美しい美海に、真珠も見とれてしまう。
「綺麗なビーズね、まるで真珠さんの瞳のよう」
「美海ねーさまったら!」
「うふふ、嫉妬してくれるの? 沙幸さん」
独特の世界を繰り広げる二人にあてられたのか、真珠と優希は少し、顔をそらしてしまう。
「僕も混ぜてもらっていいかな? と言っても、目が見えないのだけれど…こちらにいるのは、僕のパートナー天 黒龍(てぃえん・へいろん)。愛想が悪いと思うけれど、多めに見てやってくれないかな」
目が見えない高 漸麗(がお・じえんり)が無愛想な黒龍に手を引かれて、やってくる。
「も、勿論です」
真珠は無愛想な黒龍に圧倒された様子だったが、漸麗の優しげな雰囲気に心を許したようだった。
「真珠ちゃんの造った銀細工、触らせてくれる?」
「今、持っているのはこれだけしかないんですが…」
「ああ、ストップ。触って当てさせて?」
「いいですよ。ではこれはわかりますか?」
「ああ、これは指輪だね、簡単すぎるよ、真珠ちゃん」
「ではこちらは? わかりにくいと思いますよ」
妙に雰囲気の良い二人に、本来、情報収集を目的としていた黒龍が少し焦り出す。
(すっかり真珠と楽しげに打ち解けている『だけ』の気がするが…)
「…ううん、ブレスレットかな。しかも細かい彫刻がしてあるね」
「すごいです。よく分かりましたね」
「…真珠ちゃんさ、こんなに綺麗ですごいの作れるんならさ、もっと自分に自信持っても誰も怒らないよ? …それとも。自信持っちゃいけない理由とか、あるのかな」
真珠が心を開いたと感じた漸麗は、優しく声をかける。
「…自信がないわけではないんです…ただ私は病気がちで、学校も行っていませんし…そのせいで人見知りも激しくて…ただ、私、姉様なしではいられないのです。…姉様も、きっと私なしではいられないのです」
真珠の言葉に一瞬、空気が静かになってしまう。
「ねえ、真珠さん、最近、この学園で起こっていることはご存じ?」
「学園で、起こっていること…? ですか?」
美海がうまく水を差し向けると、沙幸がそれを察したのか、上手く話を続けた。
「クィーン・ヴァンガードが次々に襲撃されていたり、ツァンダ家の施設が壊されたりしているの。物騒だから、真珠も夜遅くまで、出歩いちゃ駄目よ!」
「そ、そうなんですか。でも、大丈夫です。私には姉様が居ますから」
真珠は不安げな顔を一瞬したが、笑顔を取り戻した。
優希は小物入れを完成させ、ビーズのネックレスを作り上げた沙幸は美海にプレゼントしたのだ。
「なにかわかったか?」
真珠たちと別れた、黒龍は漸麗に問いただしてみる。
「そうだね…触ったかぎりだけれど、真珠ちゃんのつくるものはとても綺麗だった。そうだろう?」
「まあな」
「あんな綺麗なものを作る子なのに、なんだろう、あの銀細工からはとても心の空虚さを感じたんだ。そして、あの言葉の意味…」
「『ただ、私、姉様なしではいられないのです。…姉様も、きっと私なしではいられないのです』だったかな。真珠が赫夜がいないと生きてはいけないのはわかるが、その逆の意図が掴みきれないな…そのうち見えてくるのかもしれないが」
黒龍の美しい髪が、風になびく。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last