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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その2

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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その2

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第8章


 ティセラは石化ホイップのある場所へと到着した。
 ホイップを一瞥、それからロープでぐるぐる巻きになっているおやじを見た。
 ティセラが来た事で皆、ホイップの周りを囲み防御の態勢を取った。
「こんな状態で、やっかいな人達が……」
 上空から警戒していたレイナが飛んできたマッシュとシャノン、ベルナデットを発見した。
「気に入ったからってこんな奴にまで肩入れしてんじゃねぇ!」
 バイクで来ていたトライブを陣が見つけたのだ。
 陣はそのままこっちに突っ込んでくるトライブにアルティマ・トゥーレを使った処刑人の剣で切り付けた。
 が、寸前のところでかわされる。
 トライブはティセラの側へと寄って行った。
「速やかにお引き取りを。場違いです」
 陣の横にいた真奈は上空のマッシュ達にそう言うと轟雷を纏ったハウンドドックの一発を撃った。
 それをマッシュは高周波ブレードで弾いたが、肩をかすめ血をにじませた。
「へぇ〜、やってくれるね。今度、俺の部屋に招待してあげようか? 苦悶に満ちた表情の素敵な石像に変えてあげるよ」
 マッシュは自分に攻撃を加えた真奈に不気味な笑みを向けるとティセラの元へと向かった。
「すまない、星杖の奪還は失敗しちまったんだ」
 トライブはティセラに告げる。
「次の機会がありますわ」
 ティセラは言うと、エルが持っている星杖を見た。
「ところで、台風とかホイップの石化とかはどうにかならないのか?」
 ティセラの味方をしているとはいえ、お人よしな部分はそのままで、少し心配しているようだ。
「どうにかする気はさらさらありませんわ」
 ティセラに一蹴されると気落ちしている。
(お人よしじゃからのぅ……あまり気に病まないと良いんじゃが)
 ベルナデットは自分のパートナーを心配した表情で見つめた。
「君がティセラか。今の私の願望は君を支援することだ。私、シャノンと配下のマッシュは今後ティセラの協力をしよう」
「それは有り難い申し出ですわ」
 シャノンの言葉を素直に喜ぶ。
「とりあえず、今回はこの……シャガを回収して帰りますわ」
 本当に嫌そうにおやじを見ると星剣ビックディッパーでロープを切った。
「ティセラ様ーーっ!」
 抱きつこうとするおやじを、ティセラは近寄るんじゃないオーラだけでとどめた。
 おやじは勿論、身をよじって歓喜している。
「このままだと、ホイップの石化解いちゃうんでしょ? もったいないよ! 是非家に飾りたいな〜! そしたらずっと愛でてあげるよ! ……な〜んてね」
 マッシュがそう言うと、ティセラは少し考えてから言葉を発した。
「良いですわよ」
「良いの? 言ってみるもんだね〜」
 楽しそうにホイップを見るマッシュ。
「ちょっと待って下さいー」
 なんだか眠そうな声が聞こえてきた。
 レロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)が眠そうな表情でやってきた。
「この像が欲しいんですよね? ホイップさんの熱烈なファンなんですねー、部屋に飾りたい気持ちはわからなくはないです。正直私も部屋に飾りたいけど無理矢理奪うのは間違ってます」
 ぐっと拳を握る。
「皆さんまずは座って、冷静に話し合いましょう。欲しいなら今の所有者にちゃんとお金を払って交渉しないと。暴力は絶対にいけませんよー。ホイップさんも悲しみますよー」
「その像はホイップ殿本人だ!」
 レロシャンのボケボケな言葉に思わず黎が突っ込んだ。
「またまたー、そんなわけないじゃないですか〜。いくら私でもそんな冗談わかりますよー」
 レロシャンにはまるで通じなかった。
「そうだ私が仲介に入って、交渉のテーブルにつけるように手伝ってあげようかな。そーですねー、これくらい立派なものだと、だいたい500万Gは用意しないといけませんねー」
 なんともいい加減な数字を言いだした。
「ふぅ〜ん……面白いけどさ、この茶番はいつまで続けるのかな。そろそろ攻撃しても良いよね?」
「へっ?」
 マッシュはそう言うと、高周波ブレードで切り付けてきた。
「ひゃっ! 危ないですよー!」
 なんとか避けた。
 やっと危険を感じたのかそのまま下がって行った。
 こうして、ホイップの周りはまたも戦場となってしまったのだった。


「……俺は、敵ではない十二星華は護ると決めている……クイーン・ヴァンガードとしても、俺個人としても……行くぞユニ……」
「はい、クルードさん!」
 たまたま通りかかったクルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)ユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)が最初にティセラとマッシュに突っ込んでいった。
 始めはホイップの盾になろうとしていたらしいが、盾となっている人達がいるのを見て変更したらしい。
「ホイップさんは必ず守ります!」
 ユニはサンダーブラストを唱えると、それによって発生した行く筋もの雷を雷術で操り、マッシュとシャノン、ティセラの3人を雷で出来た檻の中に閉じ込めてしまった。
 身動きがとりづらくなっているところへ、クルードが高周波ブレードに光を纏わせた。
 破邪の刃を使用したのだ。
 それにより、切りつけようと動く。
 メイコはユニの側で氷術と雷術をティセラ達に向かって放った。
 クルードとメイコの攻撃が同時に届く瞬間、ユニは雷の檻を解き、攻撃を当たる様に仕向けた。
 クルードとメイコの攻撃は当たる寸前、ティセラが薙いだだけで弾かれてしまった。
 剣を振るった時に生じた風で側に来ていたクルードは飛ばされてしまう。
 クルードはそのまま、木に体をぶつけてしまう。
 一瞬息が出来なくなる。
「クルードさん!」
 ユニは慌てて駆けよって行った。
 メイコは雷術を拳に纏わせ、向かっていったがそれも一撃で撥ね退けられる。
 攻撃が届かない。
「くっそ……!」
 メイコは心底悔しそうな表情で前のめりに倒れて行った。
「沙幸さんがいつも話してくれているホイップさん、わたくしも色々とお話してみたいですから連れていかれては困りますわ」
 藍玉 美海(あいだま・みうみ)は3人が攻撃を仕掛けてくる前に辺りを光で包ませる。
 光術での目くらましだ。
 沙幸は目がくらんでいるうちに、背後から忍び寄りブラインドナイブスで攻撃を仕掛けた。
「殺気がダダ漏れですわ」
 目が見えてはいないのだが、気配だけで沙幸の攻撃をかわし、剣の柄を鳩尾に入れた。
「はうっ!」
 沙幸を助ける為に、美海は氷術で3人の足元を凍らせると急いで、蹲っている沙幸の元へと駆けて行った。
 そのまま沙幸を抱え、ダッシュで離れた。
「ねーさま……ありがとう」
 そう言うと、沙幸は意識を手放した。
「頑張りましたわ」
 美海はそっと沙幸の頭を撫でた。
「さあ、ホイップをこちらに渡して下さい。そうすればこれ以上は攻撃しないでも良いですわ」
 ティセラの言葉に誰一人として防御の態勢を崩そうとしない。
「では行きますわよ」
 足元の氷術を外したティセラが動く。
 マッシュやシャノンはその様子を楽しそうに眺めていた。
「どうしてホイップちゃんにこんな事するの!?」
 ファルは叫んだが、無視されそのまま一撃を加えられてしまった。
 リリとララは2人でティセラの攻撃を止めようとしたが、やはり叶わずそのまま倒れた。
「どうして……『シャンバラの』女王候補であるあなたが、何故シャンバラを害するようなことを?」
 綺人は自分が攻撃される前にティセラに言葉を投げかけた。
「わたくしは1人で街の一つや二つ壊滅できるのですわ。その実力を知らしめているだけですわ。わたくしこそ女王にふさわしい、と」
 ティセラはそう答えると綺人の後頭部を打ち、気絶させた。
「力で蹴散らし殺す。ああ、怖い。対象年齢に満たない子供がその玩具で遊んで人に怪我させるのと同じ位怖いですわね」
 ティセラの言葉を聞いたルディが言葉で攻撃を仕掛けた。
「力なき者に女王は出来ないのですわ」
 攻撃は効かなかったらしく、ルディは剣の柄で腹部を殴り、動けない位の衝撃を与えた。
「悪いが、この女はお前が手を出して良い様な女じゃない。最高の女には最高のパートナーが必要だ。お前じゃ無理だ」
 レンは適者生存と威圧でティセラにプレッシャーを掛ける。
「威勢がいいですわね」
 それにも怯まず、ティセラは剣を斜めに振り下ろした。
「ぐっ」
 女王の加護のおかげで致命傷は避けられたが、顔の前でクロスさせていた腕からは大量の出血。
「俺はまだ倒れてないぜ?」
 出血のせいで顔が青い。
 ティセラはその様子を嬉しそうにし、再び剣を振るった。
 今度は先ほどよりも力を入れて、同じ場所へ。
「ふっぐ……まだまだ……」
 切り裂かれた腕から流れた血はレンの赤いジャケットをさらに赤く染めていく。
 さっきよりも力を入れティセラは剣を閃かせた。
 攻撃が当たる瞬間。
 限界だったのだろう。
 レンは仁王立ちしたまま気絶していた。
「お見事ですわ」
 ティセラはそれ以上、攻撃を加えず、次に行った。
 ホイップの横に居たクリュティはあえなく、その剣の前に倒れてしまった。
 だが、その瞬間、ホイップが消え、少し横にホイップが出現した。
「へぇ〜、面白い事してるね」
 マッシュは口笛を吹きそうな勢いで言う。
 クリュティはメモリープロジェクターでホイップの映像をずらして投影していたのだ。
 ロザリンドはラウンドシールドを使って防御をしている。
 もうホイップを守護しようと立っていられている人は少ない。
「私の誇りにかけて守ります!」
 決意の表情をみなぎらせていたが、ロザリンドは盾ごと切られてしまった。
 すると、ホイップを簡単には持っていけないようにしていたロザリンドの光条兵器が消えた。
「効くかどうかわかりまへんが……」
「オレも!」
 ホイップの側に居たフィルラントが子守唄を、エディラントが眠りの竪琴で眠らせようとしたが、その前に2人とも一緒に切られる。
 横に閃く剣を見ながら2人は倒れた。
「我はホイップ殿の守護者だ!」
 最後にホイップの前に残っていたのは黎だ。
「邪魔くさいですわ」
 ティセラは全力で剣を何度も振り下ろす。
 それでも気力だけで立っている黎。
「しつこいですわね」
 そう言うと、ティセラは思いっきり力を込めた一撃を黎に食らわせた。
 黎は剣の一撃とそれによって起こった風に巻き込まれ、とうとう後ろへ吹っ飛んでしまった。
 ホイップの周りには、気絶した人々が倒れている。
 血が流れ、地面を赤く染めてしまった。
「これでもう持っていけるよね」
 マッシュは置いてきていた巨大甲虫を連れてきて、ホイップをその足に持たせた。
「今です!」
 姿を見せずに、じゃわはマッシュへと銃で一撃を加えた。
 脇腹の辺りから血を流している。
 シャノンは氷術でホイップの頭の上にいたじゃわを凍らせようとしたが、アイスプロテクトの為か効きづらい。
 3回目にやっと全身が凍りついた。
 ホイップの石像と共に。
「あ〜あ。ま、いっか」
 マッシュはそのままじゃわをホイップごと運んで行ってしまった。
 ティセラは最後にエルの持つ星杖を奪おうと試みたが気絶させても離そうとしなかったので、今回は諦めたようだ。
 シャノン、トライブ、ベルナデットもそれぞれの手段でこの場を去って行ったのだった。