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恋は吹雪のように!?

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恋は吹雪のように!?

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第三章 辿り着いた僕らは立ち止まる
 猛吹雪で目も開けづらいが、それでもハッキリと確認できる校庭の巨大なカマクラ。
 その前では、今まさにイデオロギーの対決が行われていた。
 ウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)フリードリヒ・デア・グレーセ(ふりーどりひ・であぐれーせ)の二人が、全校生徒イチの軽いノリでフブキにアタックを仕掛けに行ったのである。
「おい! 待て、コラァ!」
 叫び声の主はブリッツである。
 ブリッツに半泣きの顔でティエリーティア・シュルツ(てぃえりーてぃあ・しゅるつ)が纏わり付いている。
「とにかく何でもいいから話をしてこいって、フリードに言われたんですー!…え? なんで僕が?って言ったのですけど」
「お前、女かと思ったら男か……やい、お前ら、こいつがどうなってもいいのか?」
 走っていくフリード、振り向いて笑う。
「この作戦の成否はオマエの働きにかかっている!任せたぞ、ティエリーティア・シュルツ!行くぜ、突撃だ!ついて来い俺の部下ども!」
「無理ですよぉー……助けて大地さんー!!」」
 ウィルネストと共に走るヨヤ・エレイソン(よや・えれいそん) はガタガタと震えながら呟く。
「何で俺がこんな羽目に……早く帰って、コタツに当たりたい」
「なんだよヨヤ様、少しくらい協力したって減るモンでもねーだろー? ほら蒼空学園の人も困ってるんだし、人助け人助け」
 ウィルネストはあっけらかんとそう言い放つと、手に精神を集中させる。
「まずは、そのフブキってヤツの顔を見とかないとな、作戦名「頭数を揃えれば一人位はヒットするんじゃね作戦」の第一弾、いくぜェ!!」
 ウィルネストが火術をカマクラに向けて放ち、炎が少しだけカマクラの雪を溶かす。
 カマクラの様子をボーッとした様子で眺めていた赤羽 美央(あかばね・みお) が、火術を放ったウィルネストを睨む。
「今の攻撃は、我ら雪だるま王国に対しての宣戦布告と見なします。総員!!迎撃態勢に移りなさい!!」
 赤羽の命令に、お茶の用意をしていたルイ・フリード(るい・ふりーど) が恭しくお辞儀をした後、満面の笑顔で言う。
「かしこまりました。美央様、彼らを排除決定として行動致します」
 革手袋をギュっと握り締め、ルイがウィルネスト達に向かって突撃していく。
 ルイの傍にはいつの間にかクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)が並走している。
「クロセル様?」
「一応俺は雪だるま王国騎士団長ですからね、ご一緒しますよ?」
「しかし、クロセル様には、極秘任務が……」
「ええ、だけどアレが偽物とバレちゃあ意味ないですし?」
 クロセルはチラリと攻撃を受けたカマクラの反対側に目をやる。
 猛吹雪でうっすらとだが、そこにはもう一つのカマクラがあり、今まさに、巨大雪だるまの胴体となる補強工事のまっ最中であった。

 マナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)のソリに、シャーミアン・ロウ(しゃーみあん・ろう)がスコップで雪を必死に載せている。建造作業を続ける二人はクロセルを見ながら、頭に?マークを浮かべていた。
「エンデュアで防寒対策などと、単なる痩せ我慢ではないのか?」
「この猛吹雪の中でもクロセルは何故そうも元気でいられるのだ?まさか阿呆になれば寒さも感じないとでもいうのではないだろうな?」
 二人の横で、スカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)は、満足げに頷いていた。
「メモリープロジェクター使って偽カマクラを投影して罠として使って、大成功であります」
 そう言ってカマクラを見上げるスカサハ。
「カマクラを雪だるまにする作業も頑張るのであります!!」
 カマクラの上部にもう一つ出来た雪の塊が、着実に大きくなっていた。
 
 カマクラ内では、レイナ・ミルトリア(れいな・みるとりあ)が氷術を使い、内側からカマクラをより強固にしようとしていた。
 その傍らでは、ウルフィオナ・ガルム(うるふぃおな・がるむ)がコタツにフブキ・ネイヤを誘い、ミカンや雑煮を勧めながら雑談をしていた。
「なぁ、あんた、雪だるま王国に入国しないか?」
 コタツにちゃっかり同席していた椎堂 紗月(しどう・さつき)も、外の様子を伺いながら言う。
「ったく、あのガキども。フブキは雪だるま王国でなんとかすっから攻撃とかしないでおいてくんねーかな?」
 フブキ・ネイヤは、周囲の人間を見渡しながら、
「あのー、ところで、皆さん、どうやってあのバカを突破されえたのですか?」
 レイナが振り返り言う。
「後でデートをするという口約束をちらつかせたの」
「あたしは、そんなレイナに便乗したぜ? ね、ところでネコネコ大隊に所属してくれない?」
「俺もどうやら女と間違えられたみたいだな」
 真顔で話す椎堂を見て、笑い出すレイナ達。
 この瞬間、ゆっくりではあるが、フブキの表情もほんわりと溶けかかっているようにレイナには見えていた。

 カマクラの中から聞こえてくる笑い声を聞いたブラッドクロス・カリン(ぶらっどくろす・かりん)は、寒そうに両手に息を吐いていた。
「……うう…何でこんな寒い中、外でカマクラを雪だるまにする作業をしなくちゃいけないのよ。朔ッチがやってるから手伝ってるけど……ボクもカマクラの中でぬくぬくしたいのに…」
 文句を言うカリンの横に立つ尼崎 里也(あまがさき・りや)は、猛吹雪から、自前のカメラを大切に守りながら、周囲を見渡していた。
「そなたは寒いと思うから寒いのです。ホラ、こんな猛吹雪ですよ?どこかに雪だるまの刑にされた者でもいれば誠に雅なものではないですかな?」

――ドッガガアアァァーーンッ!!
 爆音と蒸気が上がる校庭。
「何?何の騒ぎです?」
ブリッツに雪だるま王国への勧誘をしていた鬼崎 朔(きざき・さく)が慌てて見ると、迷彩塗装を施し雪原に潜んでいた四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)エラノール・シュレイク(えらのーる・しゅれいく)が、カマクラ目指して全力疾走する神代 正義(かみしろ・まさよし)に攻撃を加えている。
 足を止め、舌打ちする唯乃。
「ドジッた!まさか光学迷彩とブラックコートで来るなんて、気配も読めなかったじゃない……エル!」
「うん、星輝銃ならまだ射程に入ってますわ!エイッ!!」
しかし、神代はまた光学迷彩を使い、猛吹雪の中に姿を消す。
「足跡よ!足跡を目印に狙いなさい!!」
 エルが、ライトニングブラストで発生させた電力を雷術で誘導して、ライトニングウェポンで星輝銃に付与して放とうとするが、素早く移動したブリッツがその銃を取り上げる。
「やめな、外したらカマクラを破壊しちまうだろう?そっちの姉ちゃんもだ!!」
 ブリッツに言われ、鬼崎がアルティマ・トゥーレの構えを止めて唸る。
「おのれ!カマクラに近づく愚か者には雪だるま王国処刑人候補の自分が、必ず雪だるまの刑を執行してやるぞ」
「おい、その雪だるまの刑って何だよ?」
「知らないのか?罪人をスコップで滅多打ち後、雪だるまにする至高の刑罰だ。その後、私のパートナーの尼崎に、写真を撮られまくるというオマケもついてくる」
「ヤな刑罰だな……」

 カマクラ前のカリンと尼崎を光学迷彩で難なく突破した神代が突然フブキの傍に姿を見せる。
「あなたは……?」
「失恋はさぁ……悲しいよなぁ、どうしてわかってくれねぇんだって思う時あるよなぁ……わかるぜぇ、俺にはわかる!実はな……お前が失恋したのも…こんなに妬ましい想いに駆られるのも……全部バレンタインデーって祭日のせいなんだ!」
「おい!そこの覆面野郎、何言ってるんだ!?」
 権堂とレイナがすぐさま立ち上がり威圧するも、神代は奇怪な動きでカマクラ内を移動しながら話し続ける。
「だからバレンタインデーに付き合ったカップルども……いや、この世に存在するリア充共を、俺と一緒に絶滅させようぜ!ふははははー!」
「カップル?」
「そうだ、例えばあんなのとかな」
 神代が指差す窓を見るフブキ、驚愕の表情を浮かべ、すぐに俯いてしまう。
「男の人同士でも、あんなに愛し合えるっていうのに……」

 権堂が窓を覗くと、皆川 陽(みなかわ・よう)テディ・アルタヴィスタ(てでぃ・あるたう゛ぃすた)が生徒達と雪合戦をしている。
 テディが皆川に雪玉をぶつけた生徒にマジ切れしている。
「おい、そこの空気A、オレの嫁に何をする!?」
「え、嫁?お前ら男同士……」
「性別がどうしたぁ!?」
 叫ぶテディに皆川の必殺技「テメェの冗談は笑えねぇんだよアタック」で大量の雪玉を乱射する。
 応えないテディ。爽やかに笑う。
「そんなに俺とキャッキャッウウフしたいんだ」
「違うっ!!」

 俯くフブキの顔を心配そうに覗き込むウルフィオナ。
「フブキ、あんた……気にしちゃダメだぜ、あんなヤツ?」
 笑う神代を追いかけ回す権堂とレイナをバックにしたフブキが、不気味な笑いを漏らす。
「そっか……そうよね……絶滅しちゃえば、みんな苦しまなくて済むものね」
「そうだ、俺と一緒に……」
 ジロリと神代を睨むフブキ。
「冗談でしょ?」
 スッと目を閉じるフブキ。
 皆の制止も間に合わず、本日最強の猛吹雪がカマクラを中心に蒼空学園全土に発生したのであった。