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リアクション
【第一章 赫夜の葛藤】
星双頭剣Due spade(デュエ・スパデ)をかざし、仮面に黒いフード、そしてスーツを着た藤野 赫夜(ふじの・かぐや)はミルザム・ツァンダ(みるざむ・つぁんだ)に向かって一直線に駆け出してくる。
しかし、レールガンとミサイルポッドが赫夜の足元の地面に打ち込まれる。
ソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)がレールガンを構えた状態で叫ぶ。
「赫夜さん、止まって下さい!」
だが、赫夜はソニアの攻撃を右に左にと避ける。
李 ナタはソニアが煙幕ファンデーションを使って煙幕を張っている間に、赫夜に向かって『野性の蹂躙』で魔獣達を走り抜けさせた。赫夜は一瞬、それにダメージを受けたようだが、怯むことなく、ミルザムの眼前にまで近づいてくる。
「ミルザム・ツァンダ! お命頂戴つかまつる!」
赫夜が叫んだ瞬間、ピキピキっとその腕が氷術で固まると、グレン・アディール(ぐれん・あでぃーる)が赫夜を羽交い締めにしてしまう。
ナタが『野性の蹂躙』を使い、赫夜の気をそらしている間に、光学迷彩で身を隠したグレンが赫夜の背後に回り込んでいたのだ。
(赫夜を早く止めないとクイーン・ヴァンガードの連中がミルザムを護る事を口実に赫夜を殺しかねない…それだけは絶対に阻止させてもらう…!)
グレンはそう危惧し、赫夜の動きを封じたのだ。
そして、ナタやソニアは赫夜が攻撃を受けないよう、赫夜に背を向け、三方に向かって警戒態勢を敷く。
「ッ…やめろ赫夜…こんな事をしたところで何の意味も成さない事ぐらい…お前にも分かっている筈だろ…」
グレンの脳裏には、リフルのことが脳裏によぎった。
(そういえば、リフルの時と似ているな)
しかし、それも一瞬のこと。
「離してくれ、グレン!」
赫夜がグレンに肘鉄を食らわせると、グレンの横頬に肘がダイレクトに入ったが、グレンはそれを歯を食いしばって無言で耐えた。
「やめて、赫夜さん! 赫夜さんは私達に星剣を向けた時、確かに言いましたよね、『ごめんなさい』と…だから助けてみせます! 絶対に!」
ソニアは赫夜を制止しようとし、ナタもグレンと同じく、正面から両腕で赫夜の胴回りを抱き込んで動きを止める。
「赫夜…テメェ、何一人で抱え込んでんだ! 少しは頼れよ! 俺達を!」
しかし、赫夜が着衣しているスーツは強化されたタイプのものなのか、男子二人を力ずくでふりほどいてしまうと、荒々しく赫夜はグレンに蹴りをいれ、そしてナタに首刀を入れる。
「ぐぅ…」
グレンは吹き飛び、あまりの力の強さに、さすがのナタにも脳天に激痛が走る。ソニアは傷付いた二人に駆け寄る。
「…頼む、もう、私には関わらないでくれ…!! …あなたたちを傷つけたくないんだ… 私が奪わねばならないのはミルザム殿の命ひとつ!」
赫夜の震える声がマスクを通してグレンたちに届く。
「やめろ、かぐやぁ!」
グレンは蹴りを入れられた腹を押さえながら、それでも赫夜に手を伸ばす。
「バカヤロウ! 赫夜!」
ナタの叫びがミルザムに突進していく赫夜の背中に虚しく響く。
水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)と鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)は、ミルザムを囲むようにして、赫夜の攻撃に備えた。九頭切丸が赫夜の正面に立ち、睡蓮はサポートに回る。
「赫夜さんには赫夜さんの理由があるのでしょう……でも、譲れないのは私も一緒なんです。クイーンヴァンガードとして、ミルザム様を守る。それが私の役目!」
睡蓮はそうつぶやくと、九頭切丸の場所を把握した。九頭切丸は赫夜と正面から対峙していた。『身体検査』で赫夜の武装や手口を読む。赫夜の強化スーツは特殊なもので出来ているらしく、一太刀くらい浴びても、赫夜の体に傷をつけられないようなものらしい。九頭切丸は、あくまでも護衛と防御を中心にした立ち回りをし、赫夜に危害を加えないよう、『キマク鋼の楯』を前面に押し出し、戦う。『キマク鋼の楯』を星双頭剣でたたき付ける赫夜。その隙に九頭切丸の横を駆け抜けようとする。
「九頭切丸! 右よ!」
睡蓮は、ライトニングブラストで赫夜をミルザムから引き剥がすため、牽制をかけ、赫夜の足元を凍結させるべく、氷術を繰り出すが、赫夜はそれを踊るかのように跳ね、逆に氷を踏み台にして、飛び退る。
「…これ以上はミルザム様に近づかせないわ! 九頭切丸、シャープシューターの射手に警戒して!」
そう、赫夜の他にも爺やの吉備津 彦助を狙撃したシャープシューターの持ち主が潜んでいるのだ。赫夜を深追いするわけにはいかない。
そこにどこからか、シャープシューターがミルザムへ向かって次々、打ち込まれる。
「危ない! ミルザム様!」
九頭切丸と睡蓮がミルザムをかばう。
その間隙を突いて、赫夜がミルザムにより、接近し、星双頭剣を振り上げた。それを『白兵武器』のグレートソード、『女王の楯』を使い、葛葉 翔(くずのは・しょう)が受け止める。
「悪いがここを通すわけには行かないな」
翔は『要人警護』、『殺気看破』、『庇護者』を使い、赫夜からミルザムを守る為に動いていたのだ。すると、再度、赫夜が星双頭剣を振りまわし、逆側の剣で翔と剣をガチリと火花を散らす。
「まさか再戦がこんな形で叶うとは予想もしなかったぜ」
剣を交えている最終でも、翔は赫夜相手に話しかける。
「できればもっと別の場所でまた剣を交えたかったぜ、赫夜」
「…」
「だが、お前にミルザム様を殺させるわけにはいかない…クィーン・ヴァンガードとして、そしてお前と剣を交えたものとして…!」
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