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【十二の星の華】悪夢の住む館

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第10章 出口と前進(後編)

「ほら、彼方さんはやっぱりテティスさんのために動いてくれてますよ――なにやら、困ったことが起こっているみたいですけれど……」
 彼方に同行していた【魔法使いのお仕事】メンバー、ケイからも連絡受け。
 ニッコリ微笑んだソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)だったが、言葉の後半では表情を陰らせた。

「わ、わたし……どうしようっ!?」
 誰かに問うようなテティスの声。
 誰に?
 たぶん一番は自分に。

「良いか悪いかは置いておいても……彼方さんはテティスさんのことが大切だからこそ、危険から遠ざけようとしたんですよね、きっと。例えばテティスさんが駆け付けても……『来るな』って、言われてしまうかも知れませんね」
 困ったように眉を下げ、考え込むように口許に手を添えたソアは、チラっチラっとテティスに視線を投げる。
「じゃあ、彼への言葉だけでも、何か伝える?」
 固まったまま、目の表情だけを忙しく動かすテティスの顔を、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)がそっと覗き込んだ。
「ルカは鳴動館に向かうつもり。ルカはね、教導団とクイーン・ヴァンガードの溝を埋めたいの。なんだか人手が欲しそうだし、共闘できるいいチャンスだもんねっ! だから――伝言があるなら、代理で伝えるよ。そっと教えて?」
 テティスは、顔を上げてルカルカの顔を見返した。
「本当に大切なことを見失っちゃダメだよ。自分に素直になるの。怖がっちゃダメだよ」

 ダッ!

 テティスは勢いけってその場に立ち上がった。

「これ貸してくださいっ! あ、こっちもっ!」
 
 壁際に置かれていた、お茶会メンバー達のそれぞれの装備。
 ほとんど丸腰だったテティスは自分に合いそうな物を次から次へと手に取り、持ち主に許可をもらっていく。
 問いかけられた面々は、ほとんど呆然としたまま立てに首を振った。
「行くんだね?」
「はい」
 テティスの手を、ルカルカは強く握る。
「じゃあいってらっしゃい。しっかり解決してきてね――って、ルカも後で行くけど。大丈夫、このくらいさっくり解決して――次は、シャンバラの為に共闘だよ」
 
 その言葉に、テティスはひとつ頷いておいて、

「皆さんっ!」

 今度は、くるりと店内を回した。

「私なんかのために、本当にありがとうございました。お借りした物は必ずお返しします。お礼も、後で改めて必ずっ!」

「テティスさんっ!」
 ダッと飛び出して行こうとするテティスを、ソアの声が呼び止めた。
「急ぐんですよね、使ってください」
 ソアが、自分の空飛ぶ箒を差し出す。
「あと……これは私のお願いなんですが……彼方さんと再会できたら、もう少しだけ素直に自分の気持ちを言ってみてほしいんです。やっぱり、言葉にしないと伝わらない想いもあると思いますから」

 ペコリ。

 ソアの視線に応えるように、テティスは今度は無言で頭を下げた。