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リアクション
その夜。
装甲突撃軍の野戦司令部。
ハツネはテントの外を護衛もつけずに、物憂げな顔でひとり散歩していた。
「閣下」
「ん?」
ハツネが振り返ると、そこに立っていたのは教導団少尉のルース・メルヴィン(るーす・めるう゛ぃん)だった。
「散歩ですか?」
「まあな」
「……」
「何か用ザマスか?」
「いや、閣下がひとりで何をされているのかと」
「考え事だ。気にするでない」
「閣下、差し出がましいようですが、あまり過去のことにとらわれても」
「何が言いたいザマス?」
メルヴィンは言葉を飲んだ。どうやら閣下の機嫌を損ねてしまったらしい。
「いや、気のせいでありました」
「嘘をつくな。確かにこうしていると、ルーシェのことを思い出す。昔はよく夜歩きをしたものザマス」
「閣下には未来がおありです」
「ほう。それをおまえが保証するのか? ルーシェのいない復讐の為だけの未来を」
「いえ……」
「もういい。わたしもしゃべりすぎたザマス。さっさと……ごほっ、げほっげほっ」
ハツネは激しく咳き込んだ。メルヴィンが駆け寄ってのぞき込む。
口を押さえるハツネの白い手袋が赤く染まっている。吐血していたのだ。
「行け……命令ザマス」
メルヴィンはその場を立ち去った。とりあえず軍医を呼ばなければとも思ったし、自分にはどうしようも無い闇がハツネにあると悟ったからだった」
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