校長室
氷室で涼みませんか?
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第十二章 エピローグ 「そう、それで、どうなったんですか?」 微笑みながらミルザム・ツァンダ(みるざむ・つぁんだ)が続きを促す。その時の様子を思い返しながら風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)は苦笑した。 「大変でした」 あれから、周を重ねるごとに脱落者が増えていった。 日常生活で口にするものを引いた人はよかったのだが、はっきり言ってそれ以外の食材なのかわからないものが圧倒的に多かったのだ。胃薬はとうの昔に尽き、ココアなどを提供してくれていた介護班でケンカが発生し、レティーシアが泣き茸を食べてさめざめと泣き出し、熱さに耐えかねたスノーマンが氷を鍋に投入しようとして溶けきったり。 最後まで残ったのは、大食いの提案者である闇咲 阿童(やみさき・あどう)と一旦は具材として投入されていたニアール・リッケンバッカー(にあーる・りっけんばっかー)だった。 「やるじゃねぇか……」 「ふふ、伊達に大食い呼ばわりされてないよ……」 しかしその二人もそれまでの食い合わせが最悪なのには変わりなく、立っているのがやっとという状態だった。 そして、具材も残すところ最後ひとつ。 それは…… 「さぁ、残ったのはこの私のみか……。ばおいしく最後のひとかけらまで食べてくれることを願うよ。私は君たち若者の血となり、肉となり、共に生きていこうじゃないかふふふふふふ……」 とてもいいハスキーヴォイスで、ささやくように優しく語り掛けてくるそいつは、一本のキノコだった。 ダンディにひげを生やし、キラキラと輝く瞳でやたらと話しかけてくる。見た目は一言で言うと、 「きもい」 ニアールはげっそりとして言った。阿童も深く同意する。 「最後ひとつなので、先に食べたものの勝ちとします!」 クロセルが宣言するものの、どうにも食べたくない。 じりじりとにらみ合うこと数分間。その間も話しかけ続けられて、阿童はヤケになってそのキノコを掴んだ。 「あ!」 「くそっ、ここまで食ったんだ。最後まで食ってやるさ!!」 ニアールが慌てて手を伸ばす前に、 ガブッ …………ごっくん。 こうして、闇鍋大食い王が決定した。 「やったぜ」 闇咲 阿童はそれからしばらく、声が妙にダンディになって困ったらしい。 「何が大変だったって、帰り道ですよ」 優斗の言葉にミルザムはおかしそうに笑うと、その口にみんなが持ち帰ってくれたカキ氷を含んだ。 「ミルザム、こちらにいらっしゃるの?」 と、その場にレティーシアが飛び込んできた。また学園に遊びにきたらしい。今回の依頼中、臨時の執事として仕えてくれた本郷 翔(ほんごう・かける)がすっかり気に入ったのか、今日も学園を案内させていたらしい。いきなり飛び込んで、申し訳なさそうに翔が頭を下げる。 「今日はどうしたのです?」 そう促すミルザムにも、何となくもうレティーシアの用件はわかっていた。レティーシアは金髪のポニーテールをかき上げると、不敵に微笑んだ。
▼担当マスター
はまもさき
▼マスターコメント
どうも!はまもさきです。 『氷室で涼みませんか?』楽しんでいただけたでしょうか。予想外のアクションや面白い提案をいただいて、パソコンに向かいながらニヤニヤしながら書かせていただきました。通りすがりの妹には心配されました。めげません。 少しでも納涼気分をお届けできたなら幸いです。 それではまた次のシナリオでお会いできるのを楽しみにしております。