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リアクション
●豊美ちゃんの歴史チェック! そのに
「はーい、安土桃山時代まで見てきましたー。ここでまた、歴史を振り返ってみたいと思いますー」
「はい、よろしくお願いします、豊美様」
【魔法少女ラジカルザイン】を名乗った燦式鎮護機 ザイエンデ(さんしきちんごき・ざいえんで)が、豊美ちゃんに丁寧に挨拶をする。
「おお、魔法少女の共演、これはなかなか様になりますね」
二人の魔法少女を前にして、神野 永太(じんの・えいた)がこっそり持ち込んだカメラで撮影会を始める。
「わ、永太さんダメですー、魔法少女の撮影には許可がいるんですよー?」
口ではそう言いながらしっかりポーズを決めている豊美ちゃんの代わりに、ザイエンデが永太へ『お仕置き』を食らわせる。
「永太、豊美様が困っていることをするのはよくありません」
「ご、ごめんなさい……しかし、魔法少女になってからというもの、何かこう、Sっぽくなったような気が……」
「え、えっと、では行きますよー! ……うーん、でも私、この本の内容をそのまましゃべっても大丈夫なのか気になってきましたー。どこかから訴えられたりしないですよね?」
時代が進むにつれて講義の進行が怪しくなってきたのを実感しつつ、豊美ちゃんが本にあった語呂合わせの一部を口にしていく。
『いい国(1192)いい風鎌倉爆風』
……1192年、鎌倉幕府が成立
『カマクラ壊れて冬眠散々(1333)』
……1333年、鎌倉幕府が滅亡
『人民騒(1338)ぐ アシカが性対象?」
……1338年、足利尊氏が征夷大将軍に就任(室町幕府の成立)
『いじるな(1467)鬼のランジェリー』
……1467年、応仁の乱
『フラスコでいこうよキュ〜(1549)っと 切支丹』
……1549年、キリスト教が伝来
『桶挟まればイチコロの(1560)麻呂』
……1560年、桶狭間の戦い
『村町爆風一行涙(1573)目』
……1573年、室町幕府が滅亡(足利義昭は1588年まで征夷大将軍)
『いちごパンツ(1582)の煩悩児』
……1582年、本能寺の変
『ヒール延々(1600)関ヶ原』
……1600年、関ヶ原の戦い
「一度話したのもここでは振り返ってますー。ちょ、ちょっとえっちなのも混じってますね……」
「どうなされましたか、豊美様?」
「ふぇ? あっ、な、何でもないですよー。では、復習はこのくらいにして、次の時代に行ってみましょうかー。ザインさん、お手伝いただきありがとうございますー」
「いえ、わたくしもいい経験になりました。こちらこそありがとうございます」
お互いに頭を下げあい、そして豊美ちゃんが『ヒノ』を光らせ次の時代に一行を案内する――。
●江戸時代編
「絶景かな、絶景かな。春の宵は値千両とは、小せえ、小せえ。この五右衛門の目からは、値万両、万々両……ってか!」
荘厳な造りの山門、その瓦の上に立ち、トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)=石川五右衛門が見得を切る。手には紫色のひらひらした布地、何と豊美ちゃんの穿いていたぱんつが握られていた。
「か、返してくださいー!!」
門を破壊しない角度から、魔力の奔流が五右衛門を狙い撃つが、五右衛門は軽い身のこなしでそれを避ける。
「はっはっは! 豊美ちゃんのぱんつの有無を確かめるのが目的だったが、穿いていたとなればそれを盗むのが天下の大泥棒よ!」
なおも飛び交う魔力の奔流を、屋根から屋根へと伝いながら五右衛門が逃走を図る。伊賀流忍術を学んだとされただけあって身のこなしは常人のそれを遥かに上回り、運動が苦手な豊美ちゃんとの距離はどんどんと広まっていく。
「今回の仕事も余裕だな! 後は根城に戻ってお宝の吟味を……おわっ!?」
屋根を駆けていたところ、足元を穿つ攻撃に五右衛門がバランスを崩す。宙に投げ出される五右衛門の身体、しかし空中でバランスを回復し足から着地を成功させる。
「誰だ、この五右衛門に楯突く奴は!」
五右衛門の言葉に姿を現したのは東雲 秋日子(しののめ・あきひこ)、手にした銃が月明かりを受けて煌く。
「天下の大泥棒、石川五右衛門。江戸の町を騒がす悪人は、私が撃ち抜いてあげる。……大丈夫、峰打ちだから」
「お、おい! 銃に峰打ちなんてあるかっての! 普通に死んじまうぜ!?」
五右衛門のある意味まともなツッコミに、要・ハーヴェンス(かなめ・はーべんす)が同意といった様子で頷きながら現れる。
「秋日子くん、悪人にまで突っ込まれてしまいましたよ。やはり銃で峰打ちという表現はおかしいということです」
「でも、成敗が目的だから。不殺の心、ってサムライって感じがしない?」
「殺さずの心自体はよいことかもしれませんが……」
そのままボケツッコミを交わし合う秋日子と要に、五右衛門は抜き足差し足でその場を離れようとしたところで、足元を弾丸が穿ち、背後で剣を構える気配が伝わってくる。
「私たちから逃げよう、なんて甘い考えはしない方がいいよ?」
「大人しくすれば、危害は加えない。まだ逃げようとするなら……その保証はありませんよ」
秋日子と要の言葉に、五右衛門は拳を握ったままの両手を上げる。
「へっ、どうせ最後には釜茹でなんだろ? それだけはゴメン、だぜ!」
観念した振りを装って、五右衛門が上げた両手を振り下ろす。直後、激しい音と煙が生まれ、秋日子と要を怯ませると同時に五右衛門の姿を隠す。
「要、下がって!」
要を誤射しないように下げさせ、秋日子が照準を定めず煙の中に弾丸を見舞う。やがて煙が晴れた先には、五右衛門の姿はその痕迹さえも消え失せていた。
「逃がしてしまいましたが。このまま放ってはおけません、追いましょう」
「そうだね。今度は必ず仕留めてあげる。……峰打ちで」
「まだ言いますか……」
そんな軽口を叩きつつ、夜の町に二人の姿が消える。
「この五右衛門を捕まえようなんざ、百年早いぜ! ……ここまで来ればもう追手は来ないだろう――」
五右衛門が町の外れまで来たところで、今度は炎の壁が五右衛門の進路を塞ぐ。
「うおっと! 今度は誰だ、場合によっては容赦しないぜ!」
豊美ちゃんから奪ったぱんつを懐にしまい、得物を抜いた五右衛門が声を荒げると、消えた炎の先に三つの人影があった。
「釘付けなのはみんなの視線☆ ハートをずぎゅんと打ち抜いちゃうぞ☆
【魅惑のセンシュアリティ・キューティー・ピーチ】見参!」
「おなかすいたのでー、食べてもいいです? 敵も味方も関係なく。
【愛嬌のアペタイザー・キューティー・パセリ】来ましたぁー」
両脇のシルヴィット・ソレスター(しるう゛ぃっと・それすたー)とミーツェ・ヴァイトリング(みーつぇ・う゛ぁいとりんぐ)がそれぞれ魔法少女な名乗りをあげ、最後にウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)――『ちぎのたくらみ』効果で『ウィロー』と名乗るようじょに変化――が続いて魔法少女な名乗りをあげる。
「誰がこう呼ぶ、皆が呼ぶ。赤の焔があたいを呼ぶ!
【紅蓮のインセンディアリィ・キューティー・ストロベリー】参上!」
決めポーズを取った三人の背後に、それぞれオレンジ、緑、赤の爆煙が上がる。
「話は豊美ちゃんから聞かせてもらったわよ!」
「悪い事する人にはおしおきなのですー」
「【キューティーセブン】初舞台ですよ! 頑張っていくです!」
びしっ、と指を差す【キューティーセブン】の三人、視線を一斉に浴びた五右衛門は不敵に微笑む。
「町奉行の下っ端の次は、魔法少女だぁ!? へっ、誰だろうが、俺を捕まえることは出来ないぜ!」
五右衛門が先程と同じように、両手に握った物を地面に叩き付け、音と煙で混乱を誘う。
「それで撹乱したつもりなんて、甘いわね!! ファイアストーム!」
しかし、ウィローの生み出した炎の風が、それらを全て吹き飛ばしてしまう。
「うあっちちちー!! ケツが、ケツが燃えてるぜー!」
炎は、屋根に飛び移ろうとした五右衛門の尻を燃やし、逃走に失敗した五右衛門は尻に炎を迸らせながら駆け回る。
「悪への成敗は正義の務め! ですよね、豊美ちゃん!?」
飛び出したシルヴィットが、踏み込みからの厚底キックを五右衛門の尻に見舞う。吹き飛ばされた五右衛門は放物線を描いて地面に激突……する前にいつの間にか用意された、人が一人すっぽり入りそうな釜に飛び込んだ。
「そうですねー、悪いことした人にはお仕置きをしないといけませんねー」
全身びしょ濡れになった五右衛門が釜から顔を出したところで、声と共に先端へ魔力の炎を浮かばせた『ヒノ』を手にした豊美ちゃんが現れる。
「……お仕置きです!!」
吹き出した魔力の炎が、五右衛門を包み込む。
「石川や 浜の真砂は 尽きるとも 世に盗人の 種は尽きまじ……」
炎が途絶え、後にはぷすぷす、と煙を立てて釜の中で行動不能になった五右衛門の姿があった。
「これ食べれるです? え、だって材料はたんぱく質です」
すっかりお腹を空かせたミーツェが結構本気で五右衛門を食そうとして、「そ、それは流石にマズいですー」と豊美ちゃんが慌てて五右衛門=トライブを回収し、ミーツェには二八蕎麦を振舞っておく。
「豊美ちゃん……あたい、これで魔法少女協会の一員になれたかしら?」
「ありがとうございますー。シルヴィットさんとミーツェさん、それにウィローさん、皆さんもう立派な魔法少女さんですー」
取り返したぱんつを大事そうに握り締めながら、豊美ちゃんが三人を魔法少女として認める。
結局最後まで、豊美ちゃんはウィローがウィルネストだとは気付かなかったようである。
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