薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

【2020授業風景】萌え萌え語呂合わせ日本の歴史

リアクション公開中!

【2020授業風景】萌え萌え語呂合わせ日本の歴史

リアクション





 1904年に始まった大日本帝国とロシア帝国との戦争、『日露戦争』において、旅順攻囲戦は両軍ともに数万の死傷者を生む激戦となった。これは、ロシア帝国の構築した近代的要塞に対する大日本帝国の浅慮が一因ともされている。
 ではもし、大日本帝国の軍部に要塞戦の知識を有する者がいたとしたら――。
 
 二十八糎砲が前線に届けられたことを報告で受けた戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)=伊地知幸介少将は、乃木希典大将にそれらの一部を先に観測所を設置した大弧山に運び込むことを提案する。当時ならば鉄道路線から離れたそのような場所に運び込むなど不可能に思われただろうが、彼の下にはアンジェラ・クリューガー(あんじぇら・くりゅーがー)がいる。たとえ一日に一基ずつだとしても、二週間もあれば準備を完了することが出来る。どうせそれまでは他の保塁に迫るための塹壕造りに時間を割かれるのだからとの幸介の意見に、希典を始めとした軍部は訝しみながらも賛同する。幸介の他、要塞戦に対する知識をさほど有していないことが、幸介の意見を全面的に取り入れる一因となっていた。
 次に幸介は、司令部を鉄道路線沿いに前線近くへ配置する策を取る。これには、敵戦力が健在な中狙い撃ちされることを恐れた軍部からの反発があったが、逐次要塞の情報を手に入れるためという理由、それまでの幸介の功績から結局は認可され、司令部は南下を続けていった。

 大弧山に配置された二十八糎砲が、空からの偵察によって得られた情報の下、旅順港に停泊しているロシア旅順艦隊を砲撃する。地上からでは不十分だった着弾観測が、アンジェラの観測によって確実なものとなり、さらには二十八糎砲の長射程、高威力である。瞬く間に戦果は上がり、砲弾の補給が続きさえすれば、要塞を落とすことなく艦隊を殲滅、もしくは旅順港から出港させることが出来るのではないか、そう思われるようになっていった。
(史実では、日本軍は6万の死傷者を出したと聞きます。しかし今なら、それほどの被害を被ることはないはずです)
 そもそも旅順攻囲戦における戦略目標は、ロシア旅順艦隊の殲滅であるはず。要塞を攻め落として手に入るのは、周辺に植える作物の肥料くらいなものである。艦隊を砲撃しつつ要塞にも擾乱砲撃を加えておけば、ロシア帝国軍は痺れを切らして無謀な作戦に手を付ける、そこが大日本帝国軍の付け入る隙……となるはずであった。

「報告! 司令部が……陥落しました!」

 もたらされた報告に、アンジェラの表情が変わる。
 確かにロシア帝国軍は、無謀な作戦に着手した。全軍を以て大日本帝国軍司令部に奇襲をかけるという策を。それは幸介が、情報を手に入れるためと司令部を前線近くへ移動させ、ロシア帝国軍がそのことを察知したということも一因となっていた。
 指令系統が瓦解したことで、統制を失った大日本帝国軍は多数の捕虜を出すことになった。その後は、ロシア帝国軍の艦隊がこの戦いで損害を受けていたこと、大日本帝国軍連合艦隊の奮闘により勝利を収め、史実通り大日本帝国の有利な条件で講和条約締結へと続いていくのであった。

 1941年12月に始まった『大東亜戦争』は、翌1942年6月のミッドウェー海戦での敗戦以降、大日本帝国軍の『戦術的勝利・戦略的敗北』が見られるようになっていた。
 ソロモン海戦もその一つで、第一次ソロモン海戦における主目的はアメリカ軍のガダルカナル島への上陸船団攻撃だったにも関わらず、多くの艦船を沈没させはしたが結局目的を果たすことが出来なかった。基地と飛行場を造られてしまった大日本帝国軍はその後執拗にそれらへの攻撃を行うが、全壊に至らしめることは出来なかった。
 そして、再度艦隊を向かわせたところへ、アメリカ艦隊の迎撃を受ける――。

 霧島が迎撃に現れたアメリカ軍戦艦ワシントンを発見した時には、既にワシントンの40.6センチ砲は霧島を射程内に収めていた。レーダーによる砲撃が霧島を沈めんと放たれようとしているその時、ワシントンは後方より迫る新たな艦影を察知する。
「前方に敵影! 戦艦級と思われます」
 『四条』製のレンズを通してもたらされた情報を見張員が伝え、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)=戦艦『扶桑』の艦長が頷く。
「弾種徹甲、主砲射撃準備!」
 艦内に命令が伝播し、砲撃手が準備の完了を報告する。
「探照灯照射による砲撃を行う! 目標米戦艦! 撃ち方始め!」
 やがて、35.6センチ連装砲が火を吹き、前方のワシントンに砲弾を浴びせる。ワシントンは突然の攻撃に霧島への攻撃を止め、後退にかかる。速力差2ノットは大きく、結果扶桑はワシントンを撤退させはするが、有効打を与えることは出来なかった。
「報告! 右舷より駆逐艦、数4!」
 見張員が次なる敵影を捉える。アメリカ軍駆逐艦4隻、それぞれローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)上杉 菊(うえすぎ・きく)今川 仮名目録(いまがわ・かなもくろく)が艦長を務めるそれらが、扶桑を沈めるべく魚雷攻撃の射程に潜り込もうとする。
「迎撃せよ!」
 15センチ単装砲も加わり、4隻の駆逐艦を相手に大立ち回りを演じる扶桑。1隻に主砲の直撃を浴びせて轟沈させ、もう1隻も副砲の直撃を数発与え航行不能に陥らせる。しかし残りの2隻は速力36.5ノットで砲撃を掻い潜り、ついに魚雷攻撃の射程に扶桑を捉える。5連装魚雷発射管から次々と魚雷が発射され、扶桑に迫る。
「回避! 回避!」
 なおも砲撃を続けつつ、艦長は回避を指示する。だが、10発の魚雷に狙われた扶桑はその全てを回避することは叶わず、うち4発が命中し、直後弾薬庫に引火、大爆発を引き起こす。全長の5割にも達する被弾危険箇所の修正がなされなかったことが、これほど多大な被害を生んでしまったのであった。
 やがて艦体は真っ二つに割れ、炎上の後沈没した、とされているが、詳しいことは艦長以下全員が戦死扱いとされているので判明しない。艦長の姿が直前になって消えたという噂が流れたが、それも今になっては不明である。一方扶桑を撃沈した駆逐艦も、扶桑の最期の砲撃を受けてそれぞれ小破、大破となった。それらの艦長もまた行方不明という扱いになっている。
 
●豊美ちゃんの歴史チェック! そのさん&ミーミルのなぜなに講座 そのよん

「……あの、豊美様。どうして私がここにお呼ばれしたのでしょう? ああいえ、別に豊美様と行動を共にするのが嫌と言うのではなくて、何か作為のようなものを感じたので……」
「わ、翡翠さん鋭いですねー。匿名希望なので名前は明かせませんが、「パパに魔法少女の何たるかを教えてください!」とありましたので」
 豊美ちゃんの手伝いに呼ばれた浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)が、豊美ちゃんからの回答を聞いて頭を抱える。豊美ちゃんは豊美ちゃんで、匿名希望と言いながら誰か分かってしまう発言をしたことに気付いていない様で、? と頭に疑問符を浮かべていた。
「とりあえず、江戸時代から昭和初期までを振り返ってみますねー。たくさんあるのでほんの一部だけですー」
 豊美ちゃんが本を取り出し、主要な事柄の語呂合わせを言っていく。

『おいでやす 昼のマミ(1603)ーは性対象』
 ……1603年、徳川家康が征夷大将軍に

『暴れん坊 院内露(1716)店で巨峰売り』
 ……1716年、享保の改革

『一閃パンチ(1787) 完成の快感』
 ……1787年、寛政の改革

『店舗改革 癒し一(1841)番』
 ……1841年、天保の改革

『違反のムチ(1867)ムチ たいてい傍観』
 ……1867年、大政奉還

『ビッグマシ(1904)ンで日露戦』
 ……1904年、日露戦争

『真珠湾 行く用意(1941)はバッチリです』
 ……1941年、真珠湾攻撃

「この他にもたくさんありますよー。詳しくは皆さんで実際に買って読んでみてくださいねー」
「……これって普通に買えるものなんですか?」
 翡翠が本を手に首をかしげる。
「では、私の歴史チェックはこれでおしまいですー。あっ、翡翠さん、ミーミルさんを呼んできてください。私も一緒に『なぜなに講座』やっちゃいますー」
「あ、はい、分かりました」
 頷いて翡翠がミーミルを呼びに行く。
「豊美さん、呼びましたか?」
「ミーミルさん、『なぜなに講座』用の質問が届いているんですよー。せっかくですからここでやってしまおうと思うんですー」
「あっ、はい、分かりました。では、私と、豊美さんと、翡翠さんも一緒で」
「……えっ? 私もなんですか?」
「これも魔法少女の何たるかを学ぶためですよー」
「私は別にそんなつもりはないと――」
 抵抗する翡翠だが、二人の魔法少女に両脇を抑えられては何が出来るというわけでもない。

『みんなー!
 ミーミルちゃんのなぜなに講座、はじまるよー!』


「あぁ、何ということ……」
 結局言わせられてしまった翡翠がうな垂れる中、豊美ちゃんが届けられた質問を読み上げる。

『ミーミルは、どうやって飛んでいるんですか?』

「魔法少女ですからねー」
「……豊美さん、それは回答になっているんでしょうか? ……えっと、私は守護天使に決まったので、守護天使の飛び方と同じだと思います。ただ、じゃあ守護天使の飛び方がどうだと決めてしまうと、じゃあ飛ばせない様にするためにこうするとか、飛べる時間を延長するためにこうするだとかのアクションが生まれ、決めたことによるメリットがないような気がするので特に定めないそうです。」
「魔法少女ですから、という理由と大差ないような気がしますよー?」
 首をかしげながら、豊美ちゃんが次の質問を読み上げる。

『ヴィオラとネラも飛べるんですか?』

「姉さまとネラちゃんも飛べますよ」
「やっぱり魔法少女だからですか?」
「……えっ? 姉さまとネラちゃん、魔法少女だったんですか?」
「……ああぁ、ごめんなさい何でもないですー。では最後の質問行きますねー」
 豊美ちゃんが反省の念に駆られながら、最後の質問を読み上げる。

『以前意味ありげに出てきた魔法少女の出番はいつ?』

「『いつか出ます』……だそうです。『忘れてないよ!』……とも言ってますね」
「ミーミルさん、誰と話をしているのでしょうか?」
「あ、天の声さんです。今回は出演を辞退したんですけど、どうしてでしょう?」
「忙しかったんじゃないでしょうかねー。……はい、以上で質問はおしまいですー。ミーミルさん、どうもありがとうございましたー」
「豊美さんもお疲れさまでした。……勝手に付き合わせてしまってごめんなさい、翡翠さん」
「……いえ、大丈夫です。葱には後できつく言っておきます」
 ミーミルと翡翠が揃って立ち去り、さて、と気を取り直した豊美ちゃんが向き直る。
「皆さん、今まで私の講義に付き合っていただき、ありがとうございましたー。最後はある方の希望に沿いまして、ほんわかとしたお話風味にしてみましたー。それでは、どうぞー」
 豊美ちゃんが『ヒノ』を光らせ、一行を最後の講義へと案内する――。