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【2020授業風景】萌え萌え語呂合わせ日本の歴史

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【2020授業風景】萌え萌え語呂合わせ日本の歴史

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 一行の前には、建設中の古墳が広がっていた。
 無数の人々が汗や泥にまみれながら石や土を運び、彼らを指揮する者たちの叱責する声が飛び交う。
「一つの古墳を作るために、たくさんの方々が作業に関わりました。きつい仕事を強いられることも多く、犠牲も少なくなかったそうです」
 そう話す豊美ちゃんの表情には、どこか無理をした部分が垣間見えていた。
「あっ……」
 豊美ちゃんの講義をソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)と一緒に受けていたミーミルは、視界の先で一人の男性が崩れ落ちるのを目の当たりにする。思わず助けに飛び出そうとしたミーミルを、ソアが制する。講義のために豊美ちゃんが用意した世界とはいえ、無暗に手を出せば面倒事になってしまう。
 幸い、男性は他の作業仲間に抱えられ、手当てを受けられたようであった。
「豊美さん、どうして古墳というものが作られたのでしょうか?」
「理由はいくつかあります。ですが、その殆どは、国を治め人々に貢献した方の功績を讃え、後世まで遺すために作られたのだと思います。人々のために尽力し、また人々の感謝の心あってこそのものだと、私は思いますね」
 豊美ちゃんが振り向くのに合わせてミーミルとソアが振り向くと、休憩を告げられた者たちは肩を叩き合い、時折笑顔を浮かべて話に興じている。これが強制労働の類であれば、そのような光景は見られないだろう。
「みんなのために頑張った人は、みんなを頑張らせてあげられるんです。この前のイナテミスの時も、ミーミルが頑張ったから、街の人達も頑張ろうって思ってくれたんです。あの時はドタバタしてて言えなかったけど……お疲れさま、ミーミル」
「……うん、ソアお姉ちゃんも、お疲れさまでした」
 ミーミルが微笑んで、ソアと並んで手を繋ぎ合い、少しずつ出来上がっていく古墳を眺めていた。
「しろくま(469)遺した、雪達磨古墳。うんうん、俺様の古墳もこうして作られていったのか」
 背後から雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が、感慨深げに呟く。
「えっ? これ、ベアお兄ちゃんのなんですか?」
 首をかしげるミーミルに対し、訝しげな視線を向けてくるソアを無視してベアが口を開く。
「そうだぜ。雪達磨古墳は当時日本最大の古墳で、大小2つの丸がくっついた形をしているんだ。白熊のような姿をしていたと伝えられる、邊安(べあ)天皇の墓なんだぜ!」
「そうだったんですか。……あれ? ベア天皇って、もしかしてベアお兄ちゃん――」
 そこまでミーミルが呟いた所で、ベアの背後に豊美ちゃんが立ち、手にした『ヒノ』の先端をベアの背中へ押し当てる。
「ベアさん、嘘を教えるのはよくないですよー。ミーミルさん、ベアさんの言ってることは嘘ですので、信じちゃダメですよー」
「もう、ベアったら! その嘘は不謹慎ですよっ」
「ベアお兄ちゃん、ひどいです……」
 三人に責められ、ベアの頬筋を冷や汗が流れる。
「……こ、これはあれか? いわゆる地雷を踏んだってヤツか?」
「ベアさんには、古墳の出来る様をた〜っぷりと見てもらわないといけませんねー」
 豊美ちゃんが『ヒノ』に魔力を込め、応えるように『ヒノ』が光を放つ――。

「おーい、ご主人、豊美先生、もう十分見たから許してくれー」
 首から下を地面に埋められた格好で、ベアが許しを乞う。
「皆さんも気をつけてくださいねー。では次行きましょうー」
 ベアを掘り起こして、豊美ちゃんが次の場面へと一行を案内する。

「次は、私と馬宿が天皇と摂政をしていた時ですねー。他の英霊の皆さんはどうか知りませんけど、私は覚えちゃってるのでそのまま再現しちゃいますねー」
 豊美ちゃんの声が聞こえ、そして一行の前には立派な作りの宮殿が広がる。奥、たおやかな女性が傍らの男性が発言しているのに頷き、一言二言何かを男性に告げ、頷いた男性が正面に向き直り、座していた者たちへ言葉を発する。
「今話してるのが馬宿君よね。摂政ってどんな仕事をしているのかしら?」
「話せば長くなるが……簡単に言えば君主に代わって政を摂る、だな。俺の場合はおば上の補佐という側面もある。あれでいておば上は頭脳明晰な方なのだ。……今のおば上を見たらとてもそうは思えないだろうが」
 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)の呟きに答えたのは、確か講義に出発する時には姿を見なかったような気がする飛鳥 馬宿、つまり『当の本人』であった。
「そうなの……って馬宿君!? 過去の自分に会っちゃって大丈夫なの?」
 リカインの問いに、馬宿が苦笑しつつ答える。
「本当なら大事だが、これはおば……豊美ちゃんの想像で作った世界だからな。どのみち俺たちは……お前たちもだが、過去には行けん。本物に限りなく近い偽物を見せられていると思えばいいだけのことだ。……普段はぞんざいな扱いをするくせに、こういう所はちゃんとするのだな
「そっか。ねえ、そういえば馬宿君って、複数の人の声が聞き分けられるって言ってたよね?」
 節分の時に、馬宿がレーダーの如く人の気配を察知していたのを思い出しながら、リカインが問いかける。
「そうだな。十人くらいなら、同時に話されたことでも覚えていられた」
「じゃあ、せっかくだから試してみようかな。キュー、行くわよ。……あら、二人はどうしたの?」
 背後のキュー・ディスティン(きゅー・でぃすてぃん)に声をかけたところで、リカインは童子 華花(どうじ・はな)中原 鞆絵(なかはら・ともえ)の姿がないことに気付く。
「む、しまった、我が目を離している隙に……すまない、リカ」
「まあいいわ、そう遠くには行ってないでしょ。じゃあね、馬宿君」
「まったく、粗相のないようにしろよ。それと馬宿ではなく厩戸だからな」
 呆れる馬宿に手を振って別れたリカインは、キューを連れて宮殿へと入っていく。華花と鞆絵を捜して……と思っていた矢先、何やら賑やかな声が聞こえてきた。
「なあ、オラと友達にならねぇか?」
「な、なぜここに幼子が!? ……いや、豊美様を慕って来たのやもしれぬか。あの方は子供に好かれるからな……」
 見回りの兵士に声をかけていた華花を、追いついた鞆絵が抱きすくめる。
「いけません華花さん、勝手に出歩いてはリカさんに迷惑がかかりますわ」
「え〜、やだやだ、もっと友達増やすんだ〜」
 ジタバタと暴れる華花に鞆絵が困ったような表情を見せたところで、リカインとキューが合流する。
「こんな所にいたのね。もう、心配したわよ」
「ここでは何が起きるか分からん、勝手な行動は慎め」
 リカインとキューに窘められ、華花と鞆絵が申し訳なさそうに頭を下げる。
「何事か、騒々しいぞ」
 そこへ、騒ぎを聞きつけたか、厩戸が姿を現した。
「なあ、友達はどのくらいいるんだ? オラも友達になっていいか?」
 その姿を見るや否や華花が質問をしてしまうので、慌ててリカインたちも後に続く。
「馬……厩戸君の好きな食べ物は何?」
「リカ、厩戸ではなく聖徳太子ではないのか? まぁいい、貴公の目指す社会はどのようなものか?」
「気分転換の方法は何でしょう?」
「……何故一斉に質問をする。そもそも友達とは何か。好きな食べ物など聞いて何になる。民が安心して暮らせる社会をおば上は望んでおられる。気を休める暇などないな」
 馬宿を十倍辛口にしたような態度で答えて、厩戸がそそくさとその場を後にしてしまう。
「おば上、今日の政務はこれで終了です。お疲れ様です」
 先程よりは大分柔らかな態度で厩戸が推古天皇に答え、簾を引いて自室へと戻っていく。
(はー、トヨミちゃんせんせー、こんなこともしてたんですかー。ボクぜんぜんわからなかったですー。トヨミちゃんせんせーはぜんぶわかったんですよね! やっぱりせんせーはすごいです!)
 簾の内側でヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)が感心したように頷いていると、目の前の床がぱかっ、と開いて中から豊美ちゃんの持っている杖の先端部分と思しき物が光を放ちながらヴァーナーの目の前に浮かび上がる。
「あっ、これでまほう少女にへんしんするんですね! どんなじけんもひっさつスマイルでかいけつ、なんですよね?」
『いいえ違います。立ち塞がる敵は『全力全開、陽乃光一貫!』で吹き飛ばして解決です』
 ヴァーナーの言葉に、光るそれは言葉を発して答えた。そのことにもヴァーナーは驚くが、何より言葉の内容にヴァーナーは衝撃を受けた。
「……ち、ちがいます! そんなのトヨミちゃんせんせーじゃないです! せんせーはやさしいえがおのまほう少女なんです!」
 懸命に反論するが、光るそれは今度は何も答えない。その内ヴァーナーの目には涙が浮かび、しくしく、と嗚咽を漏らし始める。
「わわ、泣かないでくださいですー」
 声が聞こえ、杖の部分とそして豊美ちゃんが姿を現した。最初からそこにいて、杖の魔力で姿を消していたようである。
「トヨミちゃんせんせー!」
 がばっ、とヴァーナーが豊美ちゃんに抱きつく。
「ごめんなさい、悪ふざけのつもりはなかったんですー。……でも、言ったことは嘘じゃないですよー」
「……ふぇ?」
 顔を上げたヴァーナーへ、豊美ちゃんが少しだけ笑顔を曇らせて告げる。
「笑って済ませられればそれが一番です。だけど、この頃は毎日が戦いでした。いつ誰に襲われるか分かりませんでしたし、あちこちで戦も起こりました。笑顔も言葉も通じない相手には……先程言ったようにするしかなかったんです」
 ヴァーナーの頭に豊美ちゃんの手がぽん、と触れる。
「本当の魔法少女がどうであるかは私には分かりませんけど、ヴァーナーさんの思われるような魔法少女はとても素敵だと思います。私は魔法少女失格かもしれないですね」
 豊美ちゃんの言葉に、ぶんぶんと首を振ったヴァーナーがちゅっ、と唇を豊美ちゃんの頬に触れさせる。
「ボクも、トヨミちゃんせんせーのことかんちがいしててごめんなさいです。あらそいごとになっちゃっても、さいごにみんながえがおなら、えがおにしてあげられるなら、トヨミちゃんせんせーはえがおのまほう少女なんだとおもいます」
「……ありがとう、ございます。そこまで思われているのでしたら、私も頑張って応えないとですねー」
 身体を離した二人には、元の笑顔が浮かんでいた。
「……あっ、トヨミちゃんせんせー、これをうけとってくださいです」
 ヴァーナーから何かの入った袋を渡された豊美ちゃんが中を覗くと、可愛らしい紫のボーダーブラキャミとパンツのセットが入っていた。
「ぱんつをはかないとスースーして、おなかひやしちゃいます。ボク、ハグでサイズが分かっちゃうんです。よういしてたのがピッタリでよかったです」
「わー、ありがとうございますっ。……そうですね、色々と問題の種になってるみたいですし、慣れた方がいいですよねー」
 苦笑するように呟いた豊美ちゃんが、袋の中へ手を伸ばす――。