リアクション
第4章 ジャレイラ(2) 決戦前のジャレイラ・シェルタン(じゃれいら・しぇるたん)のもとを、訪れている男がいた。 「超獣武装、ケンリュウガー・ザ・グレート!」 「何なのだ。おまえは」 「まぁ、聞いてほしい。真面目な話し合いに来たんだ」 第四師団シナリオにとっては懐かしいあのケンリューガー……今はケンリューガー・ザ・グレートこと武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)であった。(※この話は、彼が仮面を脱ぎ捨てる(後の自由設定より)前の話になります。) 「ああ。何ならこの武装も全て解除する。捕えて牢屋に入れてくれたっていいぜ? とにかく、話がしたい」 武神は、教導団本営にも寄っており、もし「捕まった場合。死んだ者として扱うように」とまで申請し出向いてきた。 「戦争は知らん。戦争には参加しない」 「ふぅん。変わったやつだな、また。色んなのがいる。世界というのも面白いものかも知れないな……」 「おっ。そうか」 武神は話す前の感触にちょっと嬉々とするものを感じた。 「……嬉しいか。そんなことを言われたところで」 「そうだな。面白い話というのも、してみたい。ただ、話を……」 「わかった。聞こう、聞こう」 周囲には、綺羅瑠璃はじめ、黒羊の兵が固めている。単身で乗り込んできているようだし……この者一人が暴れたところでどうにもならないだろうと、武装についても咎められなかった。言葉からすると、偽りもないようであった。ジャレイラは、瑠璃や琳ら身近な者を残し、席を外させた。メニエスの姿は、陣に戻ったときから見えなくなっている。 「アルマゲスト?」 「ああ、コミュニティ【アルマゲスト】の管理者として、十二星華のジャレイラにどうしても会う必要があった」 アルマゲストは、十二星華を助けるため、彼女らに最終的に大団円となってもらうために活動を行った団体として記録が残っている。 「ふぅん」 「具体的な話に移らせてもらう。十二星華について検証した見解を伝えたいのだ。 まず、女王に仕えながら戦場に出たはずなのに、古王国の軍事関連の記憶も消失中であること。その軍事関連事については、黒幕が現在に使われるのを警戒してのことだと……推測している。 ティセラには、行動の矛盾がある。女王に忠誠を尽していたのに自らが女王になろうしている…… ティセラの行動で得をするのは、本人でもなくエリュシオンであるということになる」 ティセラは、エリュシオンに洗脳されている可能性があることを、武神は示唆した。ならば、その裏で暗躍している奴を許すわけにはいかない、というのが彼らの信念にある。そのために、戦争が起きているのなら。そのために、十二星華が利用されているのなら。 「エリュシオン……その名か。 我が故郷と関係しなくもない。我は……ティセラたちとは違う。もともと我は、……。 とにかく、我等を裏で操っているような者がいるとしても、そのために利用されていると言いきってしまうにしても、我は我が信念に基づいて彼ら(教導団)と戦う。我には我の、生まれ、育ってきた中で培われてきた信念や……理念がある。利用されているとすればそれが利用されているのだろうし、我にとってこの行動が我が信念に基づいてもものであれば、そうであってもかまわぬ。 何かのボタンを一つ押せば洗脳が解ける、世界はそのように簡単にはできていない。 ティセラたちのことは……今となってはもう、どうでもいいこと。ティセラと我は違う。我は、我だ」 「そうか。……深く聞き込めない部分はあるようだが、そこは立ち入ってはいけないところだな。 ジャレイラ。ありがとう。話してくれたことに、心より感謝する」 戦闘準備が整うまで、まだ些かの時間がある。 「面白い話? と言っていたな」 「いや……ただ、時間があれば、少し世間話でもと思っていたくらいで。…… デパートで普通の女の子らしい服を買うとか、……平和になったら結婚するとか。そういうことは思わないのか?」 ジャレイラは一瞬、何を言っているのかという表情で、武神を見つめたが、その後、ただ静かに笑って見せるだけであった。 「あ、あの、ジャレイラさん。さっきの話……」 琳が言う。 「どうかしたのか?」 「こんなこと聞いていいのかわからないけど、いえ、いつか……話せるときが来れば。 ここに来た当事のこととか、その前のこととか……共に暮らした人たちのこととか。そういうことを、話してみたく思って。 話せるときが来れば。……」 ジャレイラは、静かに頷いたように、見えた。 |
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