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【学校紹介】超能力体験イベント「でるた1」の謎

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【学校紹介】超能力体験イベント「でるた1」の謎

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第11章 KAORI覚醒!!

 いまや、KAORI周辺は、無数のパンツが宙を舞い、それを追うパラ実生と運営委員たちがぶつかり合う、混沌そのものの状況となっていた。
 それでも、KAORIのスカートをまくりあげようとする執念を燃やし続けるパラ実生はいて、混乱に乗じて、彼らの試みは少しずつ成果をあげていった。
 いまや、KAORIのスカートの裾は、天を目指した上昇志向を強めつつあり、既に太ももが丸見えになっていて、あともうちょっとで神秘の領域を明かそうとしていた。
「いいぞ、あともう少し! もう少しで、俺たちの悲願が〜!」
 KAORI命のパラ実生たちは、血走った目で狂気の叫びをあげる。
 だが、そのとき。
「バカ野郎ぉっ!」
 ボゴォッ!
 執念に燃えるパラ実生たちの横っ面を、国頭武尊(くにがみ・たける)の鉄拳が張り飛ばしていた!
「ぐ、ぐわああああ! な、何をする! あっ、く、国頭さん!!」
 国頭をみたパラ実生たちは、恐怖に顔をひきつらせた。
 国頭こそ、「パンツ番長」と呼ばれ、また、「パンツ・オア・ダイ」という熱い叫びによってパラ実生たちに恐れられる存在であった。
「お前ら、見損なったぞ。パンツを履いていないスカートをまくりあげてどうするんだ! スカートをまくりあげるのは、パンツを奪うため! パンツを履いていなければ、奪うことはできず、そこに感動はない! わかっているのか!」
「す、すいませんでした!」
 パラ実生たちは、恐怖に震えあがって、わらわらと逃げ出してゆく。
 そのとき。
 バゴォッ!
 国頭と同じく、外道に走ったパラ実生たちを殴り倒している男がいた!
 その男の名は、南鮪(みなみ・まぐろ)
「ヒャッハー! 国頭には全く同感だぜ! 女体と、女体を包む衣と、どちらが大事かは明らかだ! パンツをすっ飛ばして本体をみようという根性は、まったくもって外道の理! 断じて許すことはできん!」
 国頭と南。
 いま、パラ実の2大巨頭がKAORIのパンツのために闘う覚悟を決めた!
「南、相変わらずだな! いくぜ!」
 国頭は、超感覚増幅器を装着する。
「国頭、おまえこそ、相変わらずだぜ!」
 南も、ニヤッと笑って、増幅器を装着する。
「はああああああ」
「ほおおおおおお」
 2人は、同時に念じ始めた。
 2人が、念じたもの。
 それは、KAORIが着用すべきパンツにほかならなかった!
 ピカァ!
 ホールの床に残存していたサイコ粒子が、光を放つ。
 国頭の想いが、パンツの片端を精製する。
 そして、南の想いも、パンツの片端を精製した。
 2人のイメージはあまりにも具体的であり、精製は急速に進んでいた。
「よし、合体だ!」
 2人が同時にかけ声をあげると、2つにわかれて精製されたパンツの切れ端同士が引き合い、結合して1つのパンツになった!
「こ、これはすごい! 2つにわかれていたパンツのパーツが、ぴったりあわさった! 2人は、全く同じパンツのイメージを想い描いていたように思えるぞ!」
 見守っていた生徒たちから歓声があがる。
「次は、履かせるぜ! うっ!」
 2人は、精製されたパンツをKAORIに履かせようとするが、うまくいかない。
 意外にも、パンツを履かせるには精製以上に強い「力」が必要なようだ。
 よく考えれば、パンツを履くというのは、手を使っていても微妙な力の動きが必要なものである。
 手を使わず、パンツを宙に舞わせて人形に装着させるというのは、ぴたっとした素晴らしいパンツであればあるほど、複雑微妙な力の加減が必要な作業といえる。
「強いだけじゃない! 繊細さを持った「力」の使い手が必要だ!」
 2人がうめいたとき。
「あたしも、協力するよ!」
 プリモ・リボルテック(ぷりも・りぼるてっく)が2人の間に現れ、超感覚増幅器を装着した。
「パンツを奪うことには興味がないけど、パンツを履いてないなら、履かせてあげればいいんだよ! 外道のパラ実生たちを妨害するためにやるね!」
 プリモは、自分の目的のために、あえて国頭と南に協力するのだった。
「は〜」
 プリモの「力」は、強さと繊細さをあわせもっていた。
「おお! パンツが、パンツが、KAORIの足に絡みついていく!」
 3人の「力」があわさった奇跡を目撃した観衆は、歓声をあげた。
 サイコ粒子で精製されたパンツは、KAORIの足もとからよじ昇って、スカートの裾に隠れたが、次第に太ももの付け根へと近づいていく様子が感じ取れた。
 複雑にして、微妙な動きであった。
 そして。
 ついに、パンツはKAORIのスカートの奥に装着された!
「ふ〜。よかった」
 増幅器を外し、額の汗を拭って、プリモはひと息つく。
 だが。
「ハハハハハハ!」
「ハハハハハハ!」
 国頭と南は、同時に笑い声をあげた。
「な、何がおかしいの!?」
 不吉な予感を胸に、プリモが叫ぶ。
「協力には感謝しよう! だが!」
 国頭はいった。
「俺たちがパンツを履かせたのは、パンツを奪うためなのだ!」
 南がいった。
「ま、まさか!? ダメ〜!!」
 プリモは慌てて、増幅器を再装着しようとする。
 だが、遅かった。
「ハハハハハハ! KAORIよ、お前の恥を頂きだ〜!!」
 2人は笑って、同時に念じていた。
 強い「力」が、KAORIに作用する。
 次の瞬間。
 驚くほどあけっぴろげに、KAORIのスカートがまくれあがり、さっき履かされたばかりのパンツが丸見えになった!
 着用されたパンツは、使用前とはうって変わって、目を焼く刺激をみる者に与えた。
「ハハハハハハ! パンツよ、素晴らしきかな!!」
 2人がさらに笑い声をあげて念じると、丸見えになったパンツは「力」によって、いっきに引き下ろされていた!
 履かせるときは3人の「力」が必要だったが、脱がせるのはわりと楽な作業なので、2人で十分なのだ!
 まさに、ゼロコンマ何秒かの間の出来事だった。
 みていた生徒たちは、思わず、パンツをなくしたKAORIの股間に、必死で視線を注ごうとした。
 そのとき。
 ちゅどーん!
 大爆発が巻き起こった。

「な、何だ!?」
 空を飛ぶパンツの対応に追われていた運営委員たちは、爆発音に驚き、KAORIのいた方角を振り返った。
 KAORIを収容するホールがあった箇所には、もうもうと煙がたちのぼっている。
「ゲホゲホッ! 何が起きたんだ! 俺たちのパンツが、あ〜!!」
 真っ黒焦げになった国頭と南が、2人で握りしめていた、KAORIのパンツを宙に掲げる。
 黒焦げになっていたパンツは、ボロボロに崩れてしまった。
 ガクッ
 力尽きて、2人は倒れた。
 みると、爆発はどうやら、2人が装着していた超感覚増幅器から発生したようである。
「むう!! 『力』を逆照射されたか!? しかし、逆照射だとすれば、それを行ったのは、まさかKAORIか?」
 運営委員たちが口々に叫ぶ中。
 カシャン
 煙の中に、金属音がした。
 カシャン、カシャン
 直立した何かが、姿を現してくる。
 愛らしい輪郭をしたそのモノは、真っ赤に燃える目を光らせていた。
 それは。
 KAORIだった!
 ミシッ、ミシッ
 倒れた国頭と南の頭を踏みしめて、KAORIが煙の中から歩み出てくる。
「何だ!? KAORIが勝手に動いているぞ! どういうことだ?」
 運営委員たちは、パニック状態に陥った。
(許せない。許せないわ!)
 どこかから、KAORIの声がしたように思ったのは幻聴だろうか。
「そんな。まさか!」
 月夜見望は、最悪の事態が起きたことに気づいた。
「まさか……パラ実生たちの欲望に染まった強大な『力』を集計しようとして、処理しきれなくなったデータ集計プログラムが暴走を!? バカな、しかも自衛に特化して、処理不能に陥った原因を排除しようとしている! KAORI、やめろ、やめるんだー!」
 月夜見の叫びなど聞こえていないKAORIは、しゃがみこんで、ホールの床にあったバズーカ砲を担ぎ上げた。
「えっ、マジか!?」
 運営委員たちは後ずさる。
(私がかかされた恥、あなたたちの身体で償ってもらうわ!)
 KAORIは、バズーカの弾丸を発射した。
 ひゅるるるるる
 ドカーン!
 会場で、大爆発が起こる。
「に、逃げろー!」
 運営委員たち、そして一般参加者たちも驚いて逃げ出してゆく。

「あははははは! わたくしもKAORIさんと一緒に暴れます!」
 KAORIの後から、バート・シュテーベン(ばーと・しゅてーべん)が笑いながらついてきて、くるくるまわったり、床に転がっている瓦礫を生徒たちに投げつけたりした。
 バートにしてみれば、それが暴れている状態なのである。
「イベントの邪魔をしてKAORIを暴走させた元凶は誰だい!? KAORIはパンツ履いてないとか何とか、下らん噂に浮かれ騒いだバカどもが!! いっきに退場してもらうよ!!」
 御茶ノ水千代(おちゃのみず・ちよ)は、KAORIとともに歩みながら、いまだにあちこちで暴れているパラ実生たちに鉄拳制裁を与える。
「KAORIさん、すごいですぅ! 強そうですぅ!」
 神代明日香(かみしろ・あすか)はKAORIの勇姿に狂喜すると、超感覚増幅器を装着し、念じた。
 KAORIの周辺に散らばっていたサイコ粒子が神代の「力」に反応し、細長いかたちにまとまって、一本の刀が精製された。
「どうぞ、差し上げますぅ!」
 神代は、刀を浮かせて、KAORIに向かって飛ばした。
 KAORIは刀を受け取ると、振りまわし始める。
「う、うわ〜! 助けてくれ〜!」
 パラ実生たちは悲鳴をあげて逃げ惑い始めた。
「せっかく超能力の体験をして勉強しようと思っていたのに、邪魔されてもうカンカンだよ! こうなったら、あんたたちを駆逐しなきゃ気がすまないね!」
 御茶ノ水は、KAORIとともにパラ実生たちに襲いかかり、次々に打ち倒してゆく。

「KAORI、お願いだ、やめてくれ! こうなった原因は、パラ実生だけにあるわけじゃない! 会場警備の役割を果たしきれなかった、俺たち運営委員にも責任はあるんだ!」
 月夜見望は、KAORIを追って叫んでいた。
 彼と、他のメンテナンス要員たちは、暴れ続けるKAORIを何とか止めようと必死だった。
 内部のプログラムに制御命令を実行させようと試みたが無駄だったので、言葉で呼びかけることにしたのだ。
「でも、望くん、どうしてKAORIを止めようとするの?」
 天原神無が訴える。
「何だって? 止めようとするのは、当り前だろう!」
 月夜見は信じられないという顔をする。
「あたしだって、サイコキネシスでKAORIのスカートがまくられないように努力したけど、パラ実生たちの煩悩が強すぎて、失敗しちゃったんだよ。KAORIに恥をかかせて、暴走させたのはパラ実生たちであって、その罪はあまりにも重いと思う!」
 天原は冷徹な口調でいった。
「神無、俺だって、KAORIにひどいことをした奴をぶっ飛ばしたい! だが、このままではKAORIは兵器と変わらない存在になってしまう! KAORIは俺たちの仲間なんだ、人を恨む心を学習して、人殺しのための兵器になんかなって欲しくない!」
 月夜見は、どこまでもKAORIを思いやっていた。
「むう。だから、それが妬けるんだって。まあ、いいよ。わかったよ」
 天原も、月夜見の意向はできれば尊重したいのだ。

「ぎゃー!」
「ゆ、許してー!」
 あちこちからあがる、パラ実生たちの悲鳴。
 運営委員の説得も虚しく、KAORIは破壊活動を続けている。
 と、そこに。
「大丈夫ですか! しっかりして下さい!」
 一人の美少女が現れ、倒れたパラ実生たちに駆け寄っていった。
「エリカさん! 俺たち、またバカやっちまったよ」
 傷だらけのパラ実生たちは、自分たちのアイドルであるアケビ・エリカに介抱されて手を握られ、しみじみした気分になったのか、思わず自嘲の笑みを浮かべていた。
「どうして、下ネタばかり追いかけるんですか!? 人形であっても、恥ずかしいところはみられたくないはずです!」
 エリカは、パラ実生たちを諭す。
「でもそれが、男のロマンなんですよ」
 がっくりと俯き、いじけた口調で答えるパラ実生たち。
「そうですか。わかりました。今回のことは、みなさんの純粋さがもたらした悲劇だと考えます! さあ、いきましょう! みなさんが誠心誠意お詫びすれば、KAORIさんだって落ち着くはずです!」
 エリカは、パラ実生たちの手を引いて、KAORIの前に連れてゆく。
「KAORIさん! もうやめて下さい! この人たちは、十分反省しています。純粋さゆえの悲劇なんです。罪があるとはいえ、あまりに可哀想です。私が更生に努めますので、今日のところはどうか許してあげて下さい。お願いします」
 エリカの合図で、パラ実生たちはいっせいに土下座する。
「悪かった! あんたは強い! 強いなら、謝るしかないな! 俺たちが弱いのが悪いんだから!」
 一般人からみるとかなりずれた謝り方だったが、「俺たちよりあんたの方が強い」と認めることは、パラ実生にとって最大級の謝罪表現なのである。
 謝罪のせいかどうかは不明だが、KAORIは次第に落ち着いていった。
 目に点灯していた赤い光が消えている。
 データ集計プログラムが、ようやく、国頭と南が発揮したすさまじい「力」の分析を終え、処理能力オーバーによる暴走が解消されていったのだ。
「よかった。わかってくれたんですね」
 説得が通じたと思ったエリカは、ホッと息をついた。