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リアクション
3
一方、ついにカリペロニア島に降り立った、岩造たち。
岩造は、さっとレンタル飛空艇を飛び降りて、皆の方に向き直る。
「よし、では再度作戦を確認し、ここからは私の指示通りに……」
と、岩造が全員を仕切ろうとするのに気付かないのか、
「やれやれ、飛空艇の操縦は腰をいわしそうじゃわい」
「ご無理をなさらないように、ご老体。ここはクロセル・ラインツァートに任せなさい!」
「やかましいわい! 若いもんには本当に負けんわい」
「今度こそちゃんと、悪役っぽくやってくれるかなぁ、ダークサイズ」
「大丈夫であります。悪の館らしく、ぴかぴかにしてみせるであります」
「さあて、ネネちゃんはどこかな。彼女の美味そうな血を頂くとするか」
「あ、ちょと待て! エロい感じにやるんじゃねえぞ。そういうの俺が許さねえからな」
遠足にでも来てるような雰囲気で、私語をしながら島に降り立つ。
「ま、待ちたまえ! 待ちなさい! ちゃんと私の指示に従って……」
上陸した途端に何やら自由になってしまった面々を、岩造は叱りはじめる。
しかし、グランが平気な顔をして、
「なに、大丈夫じゃ。相手はなんせあのダークサイズじゃ。まともにやりあったら、こっちが損をするからのう」
と、スコップを抱えて言う。
「あたしも場合によってはダイソウを説教してやるつもりだもん。こっちばっかり気合い入れても、大体向こうの準備ができてないからね」
という茜の意見に、クロセルも続いて同意する。
「それは否めませんね。きちっとした悪に成長してもらわなければ、俺自身お茶の間ヒーローとしての沽券にかかわります」
「いや、待ちなさい! 貴様らはダークサイズを助長させるつもりなのですか!」
ダークサイズとの対決経験のある面々の意外と冷めた見解に、岩造はいらだちを隠せない。
茜は少し考えて、
「うーん、どうだろ? いや、最終的にはコテンパンにやっつけるよ? でもあたしたちも全力で戦いたいから、やっつけがいのある組織になってもらわないと……」
と、敵か味方か分からない発言。
「しかしこのように島を一つ所有していたのは意外でしたねぇ。うらやま、いや、恐ろしい連中です! 後は中身がしっかりすれば、私のヒーロー稼業に大きな栄光の歴史を刻むことができる!」
と、クロセルは拳を握る。
呆れるのは岩造である。
(な、何なのだこいつら? ダークサイズを倒す気はあるのか? いや、あることはありそうだが……)
岩造が考え込む間に、他のメンバーはまた私語を始める。
と、そこにグランが明日香のブースを指さし、
「おい、おぬしら。向こうに受付があるぞい」
「う、受付だとー!」
岩造はさらに驚くが、
「ほほう、ダークサイズめ、侮れません。俺たちの戦いを正々堂々受けて立つというのですね」
クロセルはさらに気合いが入った様子で、サングラスとマスクを装着する。
「でなんで、おぬしはこそこそ変装しとるんじゃ……」
グランがぽつりとつっこむ。
「いらっしゃいまーせぇー」
島への入場者も一段落して、退屈そうにしていた明日香は、嬉しそうにクロセル達を受け入れる。
「えっとぉ、みんなダークサイズの人じゃないですねぇ」
「あ、やば、早速ばれてる」
明日香の指摘に茜は頭をかく。
グランも腕を組み、
「うーむ、まあそうじゃのう。何人かは面も割れとるようじゃから、隠しても仕方あるまいて。お嬢ちゃん、わしらはダークサイズの要塞を阻止しに来たんじゃ」
グランは自分たちの目的を、臆面もなく宣言する。
「え、ちょ、おい、そんなこと言っちまって大丈夫か?」
エヴァルトがさすがに警戒してグランの裾を引っ張る。
「ふぇ〜、そうすると、みなさん正義の味方さんですかぁ?」
「そう! 私はお茶の間のヒーロー、クロセル・ラインツ……」
「じゃあ入場料10000Gいただきますぅ」
「ァート、え、お金取るんですか!? しかも高い!」
クロセルは自己紹介しながら驚く。
「いちおー、ルールですよぉ」
「そ、それはさすがにカッコ悪い……しかも高い」
「当り前だ! 誰が金など払うものですか!」
考え込むみんなに、岩造は業を煮やして前に進み出る。
「いいですか! 私たちはダークサイズの敵です。いやむしろダークサイズが敵なわけですが! 誰が敵に金など払うものか」
岩造は我慢できなくなったのか、明日香にまくしたてる。
しかし明日香も明日香で、
「そうですかぁ。じゃあ帰ってくださいねー」
小さな体で一歩も引かない。
岩造は明日香の言葉にむかっとしつつ、
「ではかまいません。脇から強行突破させていただきましょう」
脅し半分で明日香に言う。さらに明日香は、
「そーゆー人を全力で叩き潰す用意がありますよぉ」
かわいらしい見た目に似合わない反論。目が笑ってないあたり、彼女の本気が垣間見える。
(き、強行突破は意外にやばそうですね……ここで体力を削るわけには)
岩造は明日香のプレッシャーに少したじろぎながら、考える。
クロセルは明日香に、お願いモードで話しかける。
「そこを何とかなりませんかねぇ」
「うーん、ダイソウさんは、キャンペーンで見学ならタダで入れていいって」
「あ、じゃあ見学で!」
「はーい、どうぞー」
「な、なにー!」
明日香の妥協に、これまた驚く岩造。
明日香はゲストカードを人数分こしらえる。
「は、入れちまった……」
結局無事に受付を通過し、肩すかしな感じに少し戸惑っているエヴァルト。
「なるほど、門戸は広く、何者も受けて立つってことか」
ジークフリートはつぶやき、岩造に向かって、
「じゃあ作戦上、ここから散開で各自ゲリラ活動ってことでいいんだよな?」
「今まで作戦無視してたくせに、ここからは従うんですね……」
岩造は恨み事を言うが、反論はできない。
「よし、じゃあこれからが打倒ダークサイズの本番です! それぞれがんばりましょうー!」
早速クロセルは森へと走り去る。それを追って皆森へと消えていく。
それを見送りながら、
「くれぐれも! くれぐれも総攻撃の合図だけは忘れないようにー!」
岩造は敵の拠点で、大声で指示を出す羽目になってしまった。
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