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魂の器・第3章~3Girls end roll~

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魂の器・第3章~3Girls end roll~
魂の器・第3章~3Girls end roll~ 魂の器・第3章~3Girls end roll~

リアクション

 
    エピローグ 挿話【3】 〜冒涜の果てに〜
 
 山田太郎の墓前にて。
「何だか綺麗に纏まった感がありますが……。本当にやるんですか? 皐月」
「全てを踏み躙る行為である事は、元から承知の上だったろ? だから、希望を、願いを、努力を……条理を、覆す」
「……わかりました」
 そして死霊術士、雨宮 七日(あめみや・なのか)は行動を開始する。

 山田太郎を――死霊化させる為に。
 骨は今――此処にある。

「人を構築する『器』と『心』と『魂』と。……『器』と『魂』とは操った事がありますけれど、『心』までは、流石に。
 遺骨を『器』に、『心』と『魂』を喚起する……。出来た試しは有りませんが、やってみますよ。死霊術の目指す所は“生と死の否定”では無く、大切な人と末永く在る為の――“生と死の同居”に有るんですから」
 地に刻まれていくもの。
 死/負に位置する『器』『心』『魂』。
 生/正に位置する『夢』『祈り』『希望』を六芒で現し、反魂を。

 皐月はただ、その光景を眺めていた。
 山田太郎は悪人だった。多分、それは間違いない。聞いた限りじゃ良い所なんて無かったしな。
 それでも、救う理由は有る。
 ――救いと呼べるかは甚だ疑問で、否定されて然るべきだとオレも思うけど。
 でも、悪と不条理を為すのは、オレの役目だろ?

 代償は既に支払われている。
 風に吹かれる左の袖。その中身は空っぽで。
 左腕はギター奏者の夢と希望。歌によって人を癒す、込められた日比谷皐月の祈り。
 それは、もう、無い。

 かり、と七日が六芒を描き終わる。
 遺骨を捧げ。
「では――夢と祈りと希望を糧に、地獄の門を押し開き。死者の帰還の言祝ぎで、世界の条理を嘲りましょう」

 そして。
『……………………』
 ゆらり、と彼等の前に現れたのは。
 虚ろな目で、そのまま闇に溶け込んでいきそうな程に不確かな、存在とも呼べない存在は。
『……お前達……なんだな……?』
 極平凡な、何の特徴も無いような中年の男。胸には3箇所の刺し傷。服は血で染まっていて。
 不服そうな声。それだけに、皐月は問われた意味が判らなかった。
 ――俺を引き起こしたのはお前達なのか。
 ――お前達は誰なのか。つまり、語尾はただの口癖なのか。
 その、どちらの意味なのか。判らなければ、両方に応えればいい。
「……ああ、そうだよ。オレは日比谷 皐月(ひびや・さつき)、こっちは雨宮 七日だ」
『…………』
 軽い口調で言う彼に、男は冷たいとも取れる感情を示した――ような気がした。
 心は、有る。
『……余計なことを……何故……』
「チェリーが、必要な存在だったって言ったから、さ。それに……欲張りなんだよ、オレは」
『……チェリー……声、聴こえたんだな……他の連中の声も……聴こえたんだな……』
 おぞましい、と本能が感じるような声で、男のゴースト――山田太郎はぼそぼそと話す。
『……このまま……ナラカで眠ろうと思っていたんだな……あれは……悪くなかった、久しぶりに……。アクアが来たのには哂ったんだな……』
 それを最後に、山田は口を閉ざした。暫くして出た言葉は。
『必要な存在、か……。俺のことを知りたい、と言っていた……。だが――』
 今のチェリーには、自分が必要なのだろうか。確かに、生きていた頃は必要だったのだろう。しかし、死を受け入れて新たな生活をしようとしている彼女には、癌になるだけなのではないか。
『これが、チェリーにとって良い事だと……? お前のやったことは……俺だけじゃない……チェリーへの冒涜やもしれないんだな……自己満足だ……』
「それは、承知の上だ」
『…………』
 山田は考える。このまま消えるべきなのか、チェリーに会いに行くべきなのか。……ゴーストでも夢枕ぐらいには立てるだろう。1度話しかけて様子を見てみるか。
 敬虔になりかけていた自分を起こした皐月達に怒りを感じていた。それが、少しだけやわらぐ。なってしまったものは仕方ない、という気持ちもある。
 建てられた自らの墓を見る。
 ――何れにせよ、自分の存在を、多くの者に知らせるべきではない。
 そしてこの墓は、誰かの心の拠り所として、彼女の拠り所としても必要だろう。
“山田太郎”の役割は――
『アクアの枕元に立って、墓の存在を教えてやるんだな……』
 山田はふよふよと、墓地から離れていく。もう、皐月達には目もくれない。
『この姿ではコーンポタージュが飲めないんだな……。どうせ起きるなら魔鎧とかが良かったんだな……』

 消え行くように遠ざかっていく山田を暫し見送り――
「成功、ですよね。これは」
「ああ……何はともあれ、祝福だ」
 皐月は、適当な場所に胡坐をかいて光条兵器を取り出す。
 山田を含む全ての人に対して、『兵器』の可能性を示唆する光条兵器を用いて幸せの歌を。
 空っぽの腕で、演奏を。
 誰にも聞かれる事は無いかもしれない、としても。
 そっと、隣に七日が座る。彼女はギターの弦に触れ、静かに言った。
「ほら、私が弦を鳴らしますから、皐月はコードを……2人で音を、奏でましょう」

 夜闇の中――沢山の墓標が並ぶ中に歌が響く。ギターの和音が、響く。
 さあ、悪徳を成して条理を嘲り、高笑いで締めくくろう。

「――ハッピーエンドだ、ざまあみろ――」

 万人にとってのハッピーエンドなど、無いのだから。



<<魂の器・第3章 END = ALL END。


担当マスターより

▼担当マスター

沢樹一海

▼マスターコメント

沢樹一海です。この度も大変お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。しかも、提出しますと言明しておいて更に遅れるという……。スケジュール管理、というよりは精神管理の問題なのかな、とも思います。今後はもっと自分精進して、公開日、内容共に皆様にご満足いただけるものを提供させていただければ、と思っております。

最終回ということで、ここからは、各種判定・裏話等について説明させていただきます。(少々文体がくだけたりもしますが、ご了承下さい。はげしくネタバレしていますので、本文未読の方はご注意ください。

機晶姫の出産について、沢山のご参加、ご質問、ありがとうございます。
機晶姫が子供を産める……! 驚かれたと思います。私も驚きました。初めて話を聞いたのは去年の夏で、その時にこれはやらないと……! と、思い、ろくりんやってる頃からこのテーマをやろうと決めていました。
出産を扱う! ということだけを考えていて、ファーシーにも可能性があることをすっかり失念しておりました。現在の展開には結構びっくりしています(笑)
ライナスさん及びモーナの回答は、公式回答を元にしたものです。少しでも今後のお役に立てれば幸いです。


<3Girls end roll> 〜3人の少女について〜

☆ファーシー・ラドレクト
このシリーズでやりたかったことは3つあって、1つが序章で扱った剣の花嫁関連、1つが出産関連、もう1つがこの子の脚をなおす! というものでした。何とか直って、良かったです。
彼女の今後については、マスター的な結論は出ています。作中でぼかしたのは、花見シナリオが関係しているからですね、はい。親心的なもので……。
ここでそれ以上書くとネタバレになるので、その辺は花見シナリオのあとがきで書ければと思います。

☆アクア・ベリル
生き残りました。所属学校については、私としても考え中です。決めないとキャラ登録できん……!!
アクションを頂く前は、蒼学かパラ実(無所属)にと思っていたのですが、現在は、

・蒼空学園(他NPCと同様)
・イルミンスール魔法学校
・シャンバラ教導団(登録名義上。実際はモーナの弟子的位置)

のどれかで考えています。花見時点で数ヶ月経ってるのに所属校決まってないのはひとえに中の人のせいなので、アクアさんごめんよ、という感じです。ご意見募集中です。

また、ガイドで示した『ヒント』『問題点』ですが、こちらは、
・何をどうあがいても、アクアは人を殺している。しかも、1番大切にしてくれた人を。その中で、彼女は幸せになる道に進んでもいいのかということ。その、計り知れない罪悪感をどうするかということ。
・実は寺院抜けてない。

でした。1個目のヒントで大きいのはあのノート、ですね。彼に執着していることで、それを示した感じです。超分かりづらいです。
2個目は……これ、謝らせてください。プライベで、ヒントが分からなかったというご意見をもらったのですがそりゃそうだ、で。あれから自分で前回のリアクション確認したら……。書いたはずの台詞が……! ……推敲の段階で削除したみたいです。
もともとは、チェリーが課長に交渉して寺院を抜けたシーンに「イチヌケですか……」という台詞を入れていたのです。
なぜ消したし、過去の私……。
で、でも、アクアさんが寺院抜けてないことはあのシーンで分かると思います……! ただ、ガイドに「台詞」と書いてしまったのでこちらは申し訳ありませんでした。
ちなみに、抜け方は全く考えていなかったので、今回のあのシーンはほぼその場で作りました(笑)

☆チェリー・メーヴィス
こちらは、まず……。
彼女に関わってくださった皆様に心よりのお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。登場させた時は、まさかヒロイン化するとは思っていませんでした。シリーズの中で、1番成長した子だと思います。私にとっても、大切なキャラクターです。
そして、この度、彼女を如月 正悟様にNPC譲渡することにいたしました。
第1章のサンプルアクションにて、少しばかり、誰かこの子お願いします的な意味合いのものを混ぜまして。その時は、譲渡するかしないかということはストーリー次第、全くの未知な状態でした。ただ、当時から「それもアリ」と考えていたのは事実です。

NPCはNPCのままでいてほしい。受け取ったら全ての関係を引き継ぐので大変、等の意見も複数の方から頂きまして正直悩んだのですが、如月様には全ての関係を引き継いでいただければな、と思います(ちょ。
家族と呼んでいただいたことが大きかったでしょうか。それと、旅……ということにも関係してきますが、私自身、チェリーが他のシナリオで自由に行動し、経験する所を見たくなった、というのもあります。私の手を離れてどんな子になっていくのかな、と。

1度譲渡してしまいますと、基本的に私がマスターシナリオのNPCとして描くことは出来なくなります。故に、花見マスコメNPC一覧に名前を載せませんでした。この辺、若干ネタバレになってしまい、申し訳ありません。
ただ、過去に例が無いわけじゃない……ないし……! とか頭の片隅で考えていたり。こればっかりは私の一存では決められませんが。

改めまして、チェリーの仲間になってくださった皆様、敵として認識してくださった皆様、ありがとうございました。

――――――――――
・山田太郎について(この物語の結末について)
実際に最後のシーンを書くまで、成仏(?)させるか山田太郎としての意思を残すか、悩みました。
というか、最初は成仏(?)させる気満々で。1度は復活するけど自らの意志で消えていく、みたいな。
ただ、書いているうちに、これはゴースト化させるのもいいかな、と、むしろそれが山田的に自然な感じがして、ああしました。
こちらに関しても、花見ガイドで微ネタバレしています。……納期さえ守れれば……。

・ラス&ピノ・リージュンについて
こちらは、ガイドのマスコメにちょっと仕掛けをいたしまして。
『ファーシー、ピノ達、チェリーは空京へ移動』――ですね。ピノ達、というあたりが。まあ、この辺は若干劇場化してますが、これも1キャラの結論、という形で見ていただければと思います。

ちなみに、今回の文字数は序章>第3章>第1章 という感じです。ページ数は少なめですが、文字数は……………………
私の永遠の課題の1つですね……。

それでは。本文、マスターコメント共に長文に付き合ってくださった全ての皆様に、感謝を。
ありがとうございました。

(沢樹一海)