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ロック鳥の卵を奪還せよ!!

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ロック鳥の卵を奪還せよ!!

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第三章 奪還へ!

 そして、そのドジな盗賊たちは――
「ぼ、ボス! 増援です!」
「なに!?」
 先発部隊の生徒達と戦い激しく消耗していた盗賊団は、遅れてやってきた奪還組の姿を確認して動揺していた。
「どうやら、すでに何人かが足止めしてくれてるみたいだね。それじゃ、みんな。校長から聞いたとおりのことに注意してく、卵を取り返そう!」
 奪還にきた生徒たちの先頭をきるのは――薔薇の学舎の佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)だった。
 諜報活動などによってキマク方面に知り合いの多い弥十郎は、いち早く盗賊の目撃情報などを得て、イルミンスールからやって来る生徒達に情報を伝え、彼らを補給所まで案内してきたのだった。
「そんんじゃ、さっそく行かせてもらうぜ!」
 弥十郎の合図で真っ先に飛び出したのは、蒼空学園から駆けつけたニコ・トラウベル(にこ・とらうべる)だった。
 そして、それに続いて――
「よしっ! じゃあ、オレも泥棒モヒモヒ君たちを一発なぐってくるー」
 弥十郎のパートナーであるフィン・マックミラン(ふぃん・まっくみらん)も飛び出した。
 ――が。
「はいはい。元気なのは良いけど、危なくないように【隠れ身】を使って前線は避けて戦おうかぁ?」
 まだ九歳であるフィンは、弥十郎に首根っこを掴まれてしまい前線での戦いを止められてしまったのだった。
 しかし――
「でも……折角助けた新たな命を、金銭目的で誘拐するのは許せないかなぁ」
 フィンを止めたはずの弥十郎も、今回の件に関しては滾った様子だった。
「それじゃ、危なく程度に行こうかぁ!」
 弥十郎のフワラシ【ザッピングスター】が、盗賊たちに次々と襲い掛かっていった。

「みんな、雛が孵るの楽しみにしてたんだから……盗ったら、めっ!!」
 そう言って上空から『神の目』によって強烈な光を放ったのは、箒に跨るミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)だった。
「「「ぐぅあっ!?」」」
 彼女の放った閃光に、盗賊たちは次々に視界を奪われる。
 そして――
「ロック鳥の卵を怖がらせる人は、お仕置きなんだぞ!」
 盗賊が怯んだ隙をついて、その背後へと回り込んだパートナーのロレッタ・グラフトン(ろれった・ぐらふとん)は、サラマンダーの炎を盗賊たちの臀部へと放っていった。
「「「うわっちぃ!?」」」
 突然、自分たちの尻が発火しだして、思わず跳びあがる盗賊たち。
「フンッ。悪いことをするからそうなるんだぞ!」
 転げまわる盗賊たちを見て得意気になるロレッタ。
 だが……彼女の視線は何故かソワソワと周囲を探っていた。
「どうしたの、ロレッタ? 誰か探してるの?」
「な……なんでもないんだぞ!」
 ロレッタの不審な様子に首を傾げるミレイユ。
 しかし――ふと、彼女は気づいてしまった。
「あ! もしかして、真都里くんを探してるの? たしかに、こいう場所には必ずと言っていいほど来るからねぇ♪」
「ななななな、何をいってるんだぞ! あんな恥ずかしい事を公衆の面前で叫ぶヤツなんか知らないんだぞ……!!」
「も〜う。素直じゃないんだからぁ」
「なっ……素直じゃないって何言ってるんだ! 会いたいのにロレッタが我慢してるみたいな言い方されても困るんだぞ!!」
 傍から見れば全く緊張感のない会話を繰り広げる二人。
 しかし、何だかんだ言いつつもきっちりと盗賊は撃破していくのだった。

「し、しまった……ここは、どこだろう?」
 イルミンスール魔法学校生物部のフリードリッヒ・常磐(ふりーどりっひ・ときわ)は、不安げに周囲を見回した。
 彼は現在、光る箒に跨ったまま闇夜の中を絶賛迷子中だった。
 と、そこへ――
「フリッツ〜まってよー! そっちじゃないよ、あっちだよぉ!」
 フリードリッヒのパートナーであるゴルゴルマイアル 雪霞(ごるごるまいある・ゆきか)が、後ろから箒に跨ってやってきた。
「もう、先にいきすぎだって〜! 私が乗ってるのは普通の箒なんだからぁ」
「いや、その……卵のことを考えると、いても立ってもいられなくて」
 フリードリッヒは、盗賊団に部室が襲撃された際も卵を守ろうと必死に迎撃したのだが……彼一人では、どうすることも出来なかったのだ。
 その後、急いで光る箒に跨り盗賊を追いかけてみたのは良いが……逸る気持ちを抑えきれずに案内役の雪霞を追い越し、方向音痴が炸裂して全に迷子になっていた。
 しかし――
「あ、見てぇフリッツ。ほら、あの光……戦闘が起きてる! あそこが、盗賊のいる補給所だよぉ」
 山間の中に瞬く、魔法の光や炎たち。
「となると、あそこに卵が……急ごう!」
 フリードリッヒは、戦火を見つけるなり最高速度で補給所へと飛び出した。
 
「フォイエル!」
 上空からフリードリッヒが放った火炎たちが、補給所で戦っていた盗賊たちをの周りを囲み、動きを封じる。
「チッ……! まだ嫌がるのか!!」
 火炎を煩わしそうに避けたボスは、思わず舌を打つ。
 しかし――
「ま、全て予定通りだがな。ガハハハッ!!」
 ボスは、何故か余裕だと言わんばかりに笑っていた。
 そして、次の瞬間――
「おら! お前ら、出てこい!」
 ボスが合図を送る。
 すると――
「「「ヒャッハー!!」」」
「「「このときを待ってたぜぇ!!」」」
 突如、補給所の周囲から大量の盗賊たちが飛び出してきた。
「ガハハハハッ!! オラァッ、イルミンスールの餓鬼ども!! 何のために俺が『補給所に寄る』なんていう情報を残したと思ってたんだ? あ? ただのドジだとでも思ったか? ガハハッ、残念だったな! 俺たちは百人集団だ! 全ては、お前達の戦力をココに集めて、一網打尽にする策だったんだよ!! ガハハハッ!!」
 まさかの伏兵と、ボスの意外な策によって、形成は一気に逆転してしまった。
 そして、補給所には狂喜乱舞した盗賊たちの歓声とボスの下卑た笑い声が響くのだった、

「あ!? 伏兵? フンッ……ザコが何人きたって同じだ! どんどん行くぜ!!」
 盗賊団追跡の依頼を聞きつけたニコ・トラウベルは、弥十郎や他の生徒とたまたま合流することができて、盗賊団を見つけるなり真っ先にとびだして戦っていた。
 そして、その勢いは伏兵が現れたにも関わらず衰えることはなかった。
「オラオラッ! そんなもんか!?」
 ニコの派手な乱射によて、盗賊たちは次々と撃ち倒されていく。
 彼の活躍には、他の生徒達も自然と鼓舞されるのだった。
 しかし――
「もう、ニコさん! 暴れすぎて卵を壊さないでくださいよ!?」
 彼のパートナーであるシャロン・ウォルコット(しゃろん・うぉるこっと)は、彼の暴れ方を見て少々不安になったようだ。
「あ? 卵? 生憎、卵になんか興味はねぇよ! 『助けてくれっ』てのを断る理由がないだけだ。それに……卵なんかより、盗賊団が持ってそうな金ピカなモノの方が俺には大事だぜ!」
 悪巧みの色を浮かべ、ニヤリと口角を上げるニコ。
 しかし――
「ま、そんなに卵が心配だったら……ここは俺に任せて、お前は飛空艇にある卵を守ってこい」
 何だかんだ言いつつ、卵の奪還については頭の片隅にはあるようだ。
「オラァ! てめぇら、蜂の巣だ!!」
 ニコは再び乱射して弾幕を張ると、シャロンの飛空艇侵入を援護するのだった。