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ロック鳥の卵を奪還せよ!!

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ロック鳥の卵を奪還せよ!!

リアクション

 ――飛空艇内部。
「なんとか侵入は成功しましたが……卵はどこにあるのでしょうか?」
 ニコの援護によって上手く飛空艇へ侵入したシャロンだったが、卵の保管場所に関しては情報をつかめていなかった。
 と、そこへ――
「あの……もしかしてアナタ、ロック鳥の卵を奪還に来た生徒?」
 飛空艇内の物陰から、一人の女生徒が現れた。
「だったらこっちよ。実は、卵にもしもの事が無いとも限らないから、危惧して発信機を付けておいたの」
 女生徒は、イルミンスール魔法学校生物部のフレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛い)だった。
 彼女は、シャロンを飛空艇内の奥へと導いていく。
「それにしても……あの子、大丈夫かしら? 最近、やっと卵の中から殻をコツコツ突いて反応してくれるようになったのに」
 約一年前。ロック鳥の卵を保護したフレデリカは、生物部に入ってまで面倒を見るほど、雛の誕生を楽しみにしていた。それだけに……今回の事件はかなりショックだったようだ。
「雑に扱われて苦しんだりしていたらと思うと心配だわ……こんな大事な時期に誘拐だなんて許せない」
 彼女は、卵が盗まれたと聞いたときから常にその安否が気になり、いても立ってもいられなかったのだ。
 しかし、ここで――
「おい! お前ら、そこで何やってる!?」
 飛空艇の奥へと慎重に進んで行たフレデリカとシャロンだったが、とうとう数人の盗賊たちに発見されてしまった。
 二人はすぐさま戦闘態勢へ移ろうと構えたが……盗賊たちの方が一瞬早かった。
「動くなっ!」
 二人に向かって襲い掛かってくる盗賊たち。
 だが――
「そこの生徒さん達!」
「伏せてくれ!」
 突如、飛空艇内に響く声。
 フレデリカたちは、その声を聞いて反射的に床へと伏せた。
 すると――
「「ぐぁっ!?」」
 盗賊たちの眼前で、光条兵器のまばゆい閃光が炸裂し、彼らの視界を一瞬で奪った。
 さらに――
「「ふぁ? なんだか急に眠くなって……き、た……」」
 盗賊たちは、急に眠気を覚えてそのまま突っ伏して眠り始めてしまった。
「二人とも、大丈夫だった?」
「怪我はないか?」
 伏せていたフレデリカとシャロンは、背後から掛けられた声に振り返ってみると――そこには琳 鳳明(りん・ほうめい)七尾 蒼也(ななお・そうや)の二人が立っていた。
「ごめんね、二人とも。ロック鳥狩りに参加したのも縁だし、その卵を盗賊から取り戻すのも縁だと思って教導団から来たんだけど……伏兵のせいで突入する遅くなっちゃった」
「俺もキマクの知り合いと連絡を取り合ってここまできたんだがな……姿をか隠して侵入の機械を窺っていたら、盗賊団の増援で少し遅くなってしまった」
 実は、鳳明と蒼也は別々のルートでやってきて盗賊から姿を隠していたのだが、伏兵の登場よって突入するタイミングがたまたま一緒になったのだ。
 だが――
「遅くなっただなんて、とんでもないわ!」
「二人のおかげで助かりました。ありがとうございます」
 タイミングがずれたおかげで、フレデリカたちを救えたのは事実だった。
「ありがとう。親鳥を食べちゃった私が言うのはおかしいかも知れないけど、雛の誕生を心待ちにしてる友人達のために頑張るよっ!」
「ロック鳥の卵は生物部員として楽しみにしてたが、なかなか孵らないので最近は栗部長に任せっぱなしで、このままじゃ本当に面目ないからな。必ず無事に取り返す!」
 鳳明と蒼也の協力を得た一同は、更に飛空艇の奥へと進んでいく。
 そして――
「みんな……どうやら卵は、あの扉の向こうにあるみたい。早く、助け出してあげよう!」
 ついに、卵の保管場所へとたどり着いた生徒達は、その鉄扉をゆっくりと開いた。
 すると――
「な、なんだテメェら!! もしかして、奪還しに来た生徒か!?」
「これは、俺達の物だぞっ!!」
 鉄扉を開くと、そこには数人の盗賊たちが待機していた。
 彼らは、生徒達の姿を見るなり慌てて武器を構える。
 しかし――
「「あがっ!?」」
 突然、盗賊たちの脳天に走る鈍い衝撃。そして、彼らはそのまま気絶していった。
「ふん。何が、あんたらの卵よ!」
 盗賊たちが倒れた原因――それは、彼らの背後から襲い掛かった菫のおかげだった。
「あんた達大丈夫? 卵は盗賊たちには指一本触れさせてないから、見ての通り無事よ」
 菫が指差す先には――
「よかった……本当に無事みたいだな」
 菫が藁やタオルに包んで保温しておいた、ロック鳥の卵が鎮座していた。
「まぁ、何度かドサクサに紛れて卵を持ち出そうとした盗賊もいたけど、その度に適当なロック鳥に関する知識をでっち上げて追い払っておいたから安心して良いわ」
 ロック鳥の卵が無傷でいられたのは、まさに菫のおかげと言えた。
 そんな菫の尽力に――
「あの……ありがとうございます! 生物部を代表してお礼を言わせてください!!」
 深々と頭を下げるフレデリカ。
「ふん。別に、あんたたち生物部のためにやったんじゃないわっ。純粋に卵が心配だからやっただけよ。たしかに、卵の世話をしてるのはあんた達かもしれないけど、卵を心配してるのは生物部だけじゃないんだから」
 そして菫は……口では強く言いつつも、内心では卵を助け出せる態勢が整ったことに安心していたのだった。
「さ、そこの二人。とりあえず、無事を喜ぶのは外に運んでからにしない? また敵が戻って来ないとも限らないし!」
 鳳明の言うとおり、ここは敵陣の真っ只中。
 まだまだ安心している場合ではなかった。