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リアクション
「先輩、運営で忙しいだろうと思ってミーナがお弁当つくってきました!」
「ミーナ殿、これはかたじけないでござる!」
「移動しながらでも食べやすいよぅにおにぎりですよ」
「おぉ、気づかい痛み入るでござるよ!」
「あ!
温かいお味噌汁もあります」
「なんと、至れり尽くせりでござるな」
「佐保だけ羨ましいぜ!」
「うむ……」
「拙者のためにここまで……ありがとう、ミーナ殿」
「か……勘違いしないでください!
ミーナと胡桃ちゃんのお弁当を作るついでです……ついでなのですよ」
朝、ミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)は城下町へ繰り出そうとする真田佐保(さなだ・さほ)を呼び止める。
目的は、お弁当と、お味噌汁の入った保温機能つきの水筒を渡すこと。
しかし……ミーナもツンデレとは、恋する乙女はみな可愛い。
ゲイル・フォード(げいる・ふぉーど)と丹羽匡壱(にわ・きょういち)にもあおられ、恥ずかしさが募る。
「さて、じゃあミーナ達も遠足に行こうかなぁ……あれ?」
恥ずかしさもあり、急いでパートナーのところへ戻るミーナ。
「胡桃ちゃんがいない……もしやっ!?」
だが辺りを探しても、見当たらない。
いやな予感がして、佐保のもとへと駆け出した。
「ん」
「おや、なんでござろうか?」
ミーナが去ったあと、こそこそとやってきた立木 胡桃(たつき・くるみ)。
ちょっと迷ったが、やっぱり、佐保へ伝えることにした。
コミュニケーション用のホワイトボードにペンを走らせ、すっと佐保へ差し出す。
『ミーナ殿はああいってましたが、1週間前から「どんなお弁当渡したら先輩喜ぶかなぁ?」って悩んでたんですよ』
「ほうほう……」
さらに、書き加えて。
『最近「女の子らしさを身につけて先輩をどきどきさせるんだ!」って百合学に短期留学もしてるんですよ』
「なんと、そうでござったか!」
「あ!
胡桃ちゃん言っちゃだめー」
「おや、ミーナ殿、さきほどは……」
「くっ、胡桃ちゃんが失礼をっ、ごめんなさいっ!」
ものすごい勢いで胡桃の首根っこをつかみ、そのまま走り去ってしまった。
あとに残された佐保の手が、ひらひらと優しく揺れる。
ミーナは気づいておらず……うしろ向きにひっぱられる胡桃だけは、佐保に手を振り返した。
「先輩にばれちゃった……これから、先輩とどんな顔して会えばいいのよぉ」
「む〜」
校舎の影で、ミーナが胡桃におしおきをっ!
胡桃のもふもふ尻尾を、めっちゃもふもふしながら心を落ちつかせた。
されている胡桃はというと、まったくの無抵抗である。
(けど……知られてよかった、ような気もする。
帰ってから、胡桃に木の実でもあげようかな)
思う存分もふもふしたあと、ふと、そんなことを考えるミーナであった。
「ふむふむ、ちょっと変わったスタンプラリーって感じかぁ。
相手の方も自由に動いてるんだねぇ……」
説明を受けてからしばらく、七刀 切(しちとう・きり)は考え込んでいた。
校庭のすみに、独りぽつんと座って。
「食券はほしいけど、広い城下町で3人探すのは面倒だねぇ……あ!」
首から下げたスタンプカードと、城下町の地図を交互に見ているうちに。
切は、1つの策戦を思いついた。
「そんなら、相手からスタンプを持ってきてもらえば楽勝だなぁ」
これが名案となるか否かは、微妙なラインだが。。。
「よっしゃ!
そうと決まれば放送室へダッシュだねぇ」
ゆったり立ち上がると切は、校舎のなかへと姿を消した。
「やー兄!
虹が出てるよ♪」
「おっ、ほんまやな〜!
俺とちーを応援してくれてんねやな!」
「うんっ!」
「そういえば遠足なんて久しぶりや〜せっかく参加することやし、スタンプ全部集めような〜♪
ちーもスタンプ係の3人をしっかり探すんやで♪」
「うんっ、ちーちゃんもがんばるっ!」
兄妹仲よくの参加は、日下部 社(くさかべ・やしろ)と日下部 千尋(くさかべ・ちひろ)。
千尋の首にスタンプカードをかけてやると、社はそれだけでも満足そうだ。
「そうだ!」
「あれ、ちー?」
「お姉ちゃん、見て見てー!
このあいだお姉ちゃん達に選んでもらった服ができたから着てきたんだよー♪」
「おぉ、可愛いではないか!」
「ほんに、よくお似合いですわ」
「ありがとうございましたっ☆」
「どういたしまして」
「うむ、よかったでありんす」
たたたっと駆けていった先には、ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)と葦原房姫(あしはらの・ふさひめ)の姿が。
呼び止めると、千尋はばっと両腕を開いてみせた。
そのままくるっと一回転して、元気にお礼を伝える。
「じゃあ行ってきま〜す!」
「商品の準備、よろしゅう!」
ハイナと房姫に見送られて、千尋は社とともに校門をくぐった。
「さてと、じゃあどこから行こうかねぇ。
ちーはまず誰に会いたい?」
「ん〜じゃあね〜もう1人のお姉ちゃんがいいかな。
服のお礼、言わないと!」
「よっしゃ、なら佐保から探そうな!
城下町の茶屋、適当に覗いてみよか」
(行きそうな場所からあたっていくのが定石やろ。
匡壱なら鍛冶屋で、ゲイルなら静かなところとか行きそうかな?)
「うん、おちゃやさ〜んっ!」
ということで、一路、佐保を探す旅に出る。
「遠足……だと……?
あのレリウスが、あの情緒知らずのレリウスが、ことあるごとに傭兵モードに入るレリウスが、遠!足!だとおおおおおおう!」
「いけませんか?」
「そんなことないっ、オレは嬉しいんだ!
スタンプラリーなんて行事に参加するなんて!
ようやく学校生活のなんたるかを理解してくれたんだな」
「はぁ……」
「あ……なんか涙が」
独り盛り上がる、ハイラル・ヘイル(はいらる・へいる)。
なんと、リアルに泣いているではないか。
レリウス・アイゼンヴォルフ(れりうす・あいぜんう゛ぉるふ)は、乾いた返事しかしていないというのに。
(俺は、葦原の地理を把握し、城下町での活動に慣れたいだけなのですが。
最近では、学園や街中で戦うこともあったことですし)
それもそのはず、レリウスには遠足をそれどおり楽しむ気などなかったのだ。
万が一、葦原島での戦闘が起きた場合に備えるため……それに。
(街を動きまわり標的を索敵するスタンプラリーは、いい訓練になりそうです)
「よし、オレに任せろ!
見事3つ集めて、食堂のタダ券ゲットしてやるからな!」
「えぇ」
(ハイラル、今日はテンションが妙に高いですね……気になります。
団長も時折あんなふうにテンション高く振る舞って、私たち団員を笑わせてくれていましたね……)
「あ、でもせっかくなんだから、記念になんか土産でもどうだ?
おまえ地球人だけど、日本なんて行ったことないんだろ?」
「……そうですね」
「ここは葦原だが日本文化をとり入れてるわけだし、なんかそれっぽいもの買って帰ろうぜ」
「俺は、食べ物がいいです」
(スタンプラリーが終わったら、ハイラルと一緒に葦原を歩くのもいいかも知れません。
もちろん戦闘のことは忘れて、ゆっくりと)
ハイラルの温かさに、触れたような気がして。
少しだけ譲歩してもいいかな……と、こっそり微笑むレリウスであった。
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