校長室
葦原明倫館・春の遠足in2021年6月
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「葦原の街並みや食文化は、地球の日本文化と似ているんだよな?」 「えぇ、そのようですね」 「以前日本の菓子の写真を見たが、とてもきれいなものだった。 あれはどんな味なのか、実際に食べてみたいと思っていたのだ。 葦原にも、同じものがあればよいのだが……」 焦がれている菓子を求めて、グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)は甘味処を覗き込んだ。 エルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)も、グラキエスの望みを叶えたいとあとを追う。 「グラキエス……」 「なんだ?」 「お前と葦原でこうしてのんびり過ごすのはいい。 菓子もなかなか美味いし、珍しい街並みも悪くない。 だがなぜあ奴までいるのだ?」 (また始まったか……) 「あ奴は悪魔だ。 必要以上にそばへ寄せるなと、いつも言っているだろう?」 「グラキエスさまはこのたび、私とも葦原の地を楽しみたいと仰せです。 主人の望みは、仕える私の望みでもあります」 「ちっ……お前の狂った魔力を一時的とはいえ安定させられるのはあ奴だけ……仕方ないことではあるが……」 (この2人、いつでも険悪だからな……この機会にちょっとはマシに……と思っていたが……無理か) つっかかってきたのは、ベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)だ。 グラキエスの心中を知ってか知らずか、猛攻をあびせる。 しかし、エルデネストも負けてはいない。 双方とも主人を想ってのこととはわかっているのだが、本当は仲よくして欲しかった。 「まぁまぁ、とりあえずこの店で昼食でもどうだ? 少し遅くなってしまったが……」 「そうですね、行きましょう」 「てめっ、まだ話は終わっておらぬ!」 事態を収拾しようと、グラキエスが提案する。 すぐそれに従うエルデネストと、話の腰を折られたことにご不満なベルテハイト。 なにがどうあれば、ここまで険悪になるのだろうか。 「慣れぬ給仕では、貴方も勝手が違って困るでしょう。 私が給仕をさせていただきます」 「ありがとう、エルデネスト」 「いえ、ごゆっくりお楽しみを」 エルデネストは、グラキエスのことを第一に考えて行動を考える。 店員とも話をつけて、できあがった料理を運ぶところからさせてもらうことに。 「「「いただきます」」」 だが案の定、食事中も険悪なムードはつづいていた。 「ん? 口についているぞ。 とってやるからじっとしていろ」 「おや、台ふきんを……」 「貴様は近よるな!」 2人とも、互いをい認め合うにはまだまだ時間がかかりそうである。 「ふむ……茶屋に来たが財布を忘れた」 空が茜色に染まる、夕刻。 武神 雅(たけがみ・みやび)は、城下町の茶屋にいた。 スタンプラリーの終了を受けて、ハイナや房姫を連れ出したのである。 「優しく、愛しい弟が財布を届けてくれないだろうか?」 雅、見事な棒読みだ。 そのとき、1台のバイクが店の前に止まった。 「そこのお嬢さん達、記念写真いかがですか? って、財布を届けに来たぞ、みやねぇ!」 「よく届けてくれたな愚弟」 「こんなメモ残しやがって! みやねぇ……財布わざと忘れただろう? どこの裸足で駈けていく愉快な人だよ!?」 颯爽とバイクから下りてくる武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)こそが、雅の弟。 ついっとつきつけてきたのは、雅の書いたメモである。 「なんじゃ……」 「どれどれ」 ハイナと房姫も興味津々に、そのメモを手に読み始めた。 『ハイナ・ウィルソン奉行達と遠足に行ってくる。 茶屋で団子食べているのだが、財布を忘れたので届けるように。 あと、記念写真も欲しいからデジカメ持参してくれ。 by少年の心を永遠に旅する女』 「てか『少年の心を永遠に旅する女』って誰のことだよ!」 「『少年の心を旅する女』は私だ。 弟の初恋の相手は姉と相場が決まっておるだろ?」 「はぁ!?」 「もう、帰ってもいいぞ……と、冷たくするのも悪くないが折角の遠足だ。 ここにいる美女3人を撮影する権利をやろう」 「美女が2人いるのは確認できるが……」 さんざんコケにされた牙竜は、なんとか反撃を試みる。 ハイナ、房姫と順番に見て、雅まで視線を動かしたところで。。。 「美女?」 と、雅を指してみたのだ。 「不服か……無理もない。 愚弟のツンデレの好みは『ちぃぱい』であることだったな……『でっぱい』のツンデレには、興味がないそうな」 そこまで言って、雅は牙竜に【ジャーマンツープレックス】を発動。 「さっさと写真を撮らんか。 女性を待たせるものではない」 「はい、美女が3人です。 ぜひとも撮らせていただきます」 「それと被写体の3名はもともと美しいが、さらに美しく撮るように……失敗すれば命がないと思え」 なにごともなかったかのように、パシャリと、カメラのシャッターが切られた。 「どうです? 2人での記念写真もお撮りしましょうか?」 「では、お願いするでありんす」 「ありがとうございます」 さらに、ハイナと房姫のツーショットも撮影完了。 そうしてしばらく、撮影会をおこなったのち……牙竜が正気に戻った。 「愚弟よ、団子を食べて行かぬか?」 「そんな暇ないよ! 今日も夜勤だよ、俺は!」 「そうか、それは残念」 「いまから、ここを出発して夜勤に間に合うか?」 団子の載った皿を差し出すが、あっさりと断られてしまう。 時計を確認して、慌ただしくバイクにまたがった。 「よし、行くぞ! みやねぇ、お土産頼むぞ!」 「夜勤、がんばるがよい」 牙竜の滞在時間、実に5分。 いい弟をもったものだ……と周りはおもっていたのだが、雅の心情はわからずじまいだった。
▼担当マスター
浅倉紀音
▼マスターコメント
お待たせいたしました、リアクションを公開させていただきます。 まったりゆっくりしたい方が意外と多くて、びっくりしました。 今後も、みなさまの癒しになるようなシナリオが書ければと思います。 楽しんでいただけていれば幸いです、本当にありがとうございました。