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至高のカキ氷が食べたい!

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至高のカキ氷が食べたい!
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 熱気がヘリフォルテ内に立ち込める。
 額に浮かぶ汗をレリウス・アイゼンヴォルフ(れりうす・あいぜんう゛ぉるふ)は拭い一息を吐く。
 輸送車と並走しているため、速度は普段よりも控えめに運転している。
 遮蔽物もなく、影のできないこの地形では風を切ったとしても、そこまで涼しい風が入ってくることはないようだった。しかし高速飛行さえできればそれも違うのだろう。
「護衛任務のいい修練とか言ってたが、こんな悪環境な護衛滅多にみねぇぞ?」
 同じように並走しているパートナーのハイラル・ヘイル(はいらる・へいる)がレリウスを気遣うような声をかけた。
「これくらいはどうってことありませんよ。それより騒ぎ立てると余計暑くなりますので、落ち着いたらどうでしょう?」
 額に汗を浮かべながらも涼しげな表情を崩さないレリウスに、ハイラルは段々とイライラが募ってきた。
「ああ、もう! お前な! 暑いときは正直に暑いと言え! 明らかにクソあちぃだろうが! それに輸送車と同じスピードで走ってても涼しい風なんて味わえねぇよ! そもそも、お前、汗かいてるし目元も赤いじゃないか!」
「ハイラル、落ち着いてくださいって、それに前見てください。敵襲で……」
 レリウスが眼前に50人弱の人影を目視し、注意を促そうとしたところで二機のヘリフォルテに向かってレーザー光線が放たれた。
 しかしそれは狙いが甘く、回避するのは容易だった。
「うお、あっぶねぇ!」
 ガンッ!
 そんな鉄同士をぶつけるような鈍い音が聞こえた。
「ハイラル!」
 レリウスは事態にいち早く気づいた。回避行動を取ったハイラルのヘリフォルテがレリウスの操縦するヘリフォルテへとぶつかったのだ。
 ただ一度の接触で行動不能となってしまった二機のヘリフォルテは流れるように近くの川へと墜落してしまう。
 深さはそこまであるわけではなく、ヘリフォルテ事態も点検をすればまだ飛べるのだろう。
「ああ、なんかもうここでいい気がするわ……冷たくて気持ちいいぜ……」
 ハイラルが軍服姿のまま川の流れに身を寄せていた。
「はあ、任務が……」
 どうしてこうなってしまったんだろうと、考える暇もなく突き抜けるような青空を見上げ冷たい清水に身を預けたのだった。
 その後二人の間で口論が起こったが、暑さにやられて真っ白に燃え尽きたとか。
「フリーズ。手を上げろ!」
 そんな真っ白に燃え尽きている二人は武器を突きつけられる。
「どういうことだよ」
 数にして10。いつの間にか取り囲まれていた。
「どうもこうもありません。俺たちが口論してる間に囲まれたようです」
「この数じゃ、抵抗しても仕方なさそうだな」
「そうですね」
 二人は大人しく手を上げた。
「よしよしそれでい……ぎゃあ!」
 突如として爆発。
 下卑た笑みを浮かべてレリウスとハイラルに歩み寄っていた悪党が吹き飛んだ。
「何が起こった!」
「敵襲です! 突如としてミサイルが……ぎゃあぁぁぁ!」
 悪党に容赦なく降り注ぐ銃弾とミサイル。
「どうやら、助かったみたいだな」
「そのようですね……」
 取り囲んでいた悪党の数は半分以下になっており、レリウスとハイラルはそれを容易に制圧した。
 二人を助けたクァイトス・サンダーボルト(くぁいとす・さんだーぼると)は、何事もなかったかのように他の悪党のところへと向かっていくのだった。
 会話はできないクァイトスだが、依頼の仲間を助けることくらいはできるようだった。

    †――†

 上空から鈍い音が聞こえた。
 それをトラックの助手席に座っていた、ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は聞き逃さない。
「現われたみたいね!」
 双眼鏡で先を見据える。
「数は20……いかないくらいかな。ちょっと多い……武器は、剣に銃に……うわぁ、全員乗り物乗ってるし」
 辟易した様子でミルディアは言った。
「側面からも敵がっ!」
 トラックと共にやとった運転手がミルディアに告げた。
「え、ええー!」
 困惑する、ミルディア。そして、後ろの出窓に向かって、
「て、敵襲よ! みんな準備はいい!?」
 大声を上げた。
 それにおおー! と声を上げる護衛の者たち。
「あたしも出るよ! 確実に安全になるまで、あっちの氷を積んでるほうの運転手さんは待機してたほうがいいかも」
「了解です。待機命令だ後は皆に任せよう」
 無線機で運転手は連絡した。
 そしてトラックは停車。ばらばらと護衛のためについてきた人たちが走り出していくのを見届けると、ミルディアも助手席から戦場へと向かう。
「さて行きましょうか」
 八塚くらら(やつか・くらら)は武器を構え、目の前にいる悪党どもに向かっていく。
「ボクたちも行きますよ」
 非不未予異無亡病近遠(ひふみよいむなや・このとお)もパートナーである、ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)に声を掛け前線へと駆け出していった。
「俺たちも行こうか」
 紫月唯斗(しづき・ゆいと)も遅れるものかとパートナーである、エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)紫月睡蓮(しづき・すいれん)プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)に声を掛け走り出した。

    †――†

「氷を寄越せぇぇぇぇ!!!!」
 汗だくになっているむさ苦しい髭面の親父が怒声を上げて迫ってくる。
 暑さで気が狂っているんじゃないかと思うほどだ。
 遮蔽物はなく、さんさんと照りつける日の光は十分に体力を奪ってくれる。
「ああもう、暑苦しいわね!」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が悪態を吐いた。
「うっひょぉ! これはいい女じゃねーか! 氷と一緒に連れ帰ってやる!」
 暑さのお陰で彼女はラインの際どいメタリックブルーのトライアングルビキニ姿なのだ。その姿は悪党の……特に男の目は引いてしまう。
「うっさい、髭! あんたたちが来なければ何もなく冷たくて美味しいかき氷が食べれたのよ!」
 そういって、容赦なく、レーザー銃をぶっ放す。そして何も言うまもなく、まともに一撃を食らった髭面の悪党は気絶してしまう。
「こんな薄着してても、暑いなんて本当今年の夏はどうなってるのよ!!」
 クロスファイアでもう当たるとか当たらないとか関係なく、容赦なくぶっ放す。
 とりあえずぶっ放す。
「セレン落ち着きなさい!」
 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)がセレンフィリティの肩を押さえる。
「あ、あはは! もう知らないわよ! こいつら倒して、あたしはつめたーいカキ氷を心行くまで食べるのよ!」
 目を大きく見開き、笑い声を上げてセレンはレーザー銃をぶっ放し続けた。
「うわっと、あっぶなー」
 セレンフィリティの攻撃をレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)はすんでのところでよけつつ、則天去私を目の前の悪党どもに見舞う。
 悪党たちは強かなのか、弱いものを盾にし自分の身を守る。
「愚かですね」
 そんな下種のような行動を見た、赤嶺霜月(あかみね・そうげつ)は狐月を構え、悪党Aに肉薄。
「自分で努力もせずして、人の上前をはねようとするとは……」
 それでも情けはあるのか、峰打ちで悪党の一人を昏倒させた。
「おお、カッコいい」
 パチパチと拍手をするのはコンクリートモモ(こんくりーと・もも)だ。
 自慢の戦闘用ドリルがギュルギュルと音を立てて回転している。
「こう、暑いとどうしても力加減が難しいですね」
 そう言いながらも霜月は涼しげだ。
「いやいや、別に力加減しなくてもいいんじゃないかな? ほら、全力でぶっ放してる人もいるし」
 余裕が出てきたのかレキが軽口を叩く。
 そんな二人に向かってまだ立ち上がり襲い掛かろうとしている悪党Bがいた。
「残念でした。折角手に入れたものを奪われるわけにはいかないんだよ」
 レキが黄昏の星輝銃を突きつけ発砲。中身はゴム弾のお陰で致命傷にまでは至らないだろう。
「あ……、裸のおねーさん」
「「どこだっ!!」」
 モモが明後日というよりも、暑さで暴れているセレンフィリティを指差す。
 味方からも声が上がったかもしれないが、それはきっと多分、気のせいだろう
「あーもー、死ねぇ!」
 そんな声に気を取られた悪党Cはレーザー銃最大出力のとどめの一撃をその身にもろに食らった。
「むごいですね」
「さすがにこれは……」
 霜月とレキが言う。
「ドリルに負けない、ロマンが……ある」
 モモも少しずれた感想を漏らした。
 すでにここら一帯の敵は気絶するなり逃げ出すなりして、立ち向かってくるものはいない。
「だから、落ち着きなさいって!」
 セレアナは徹頭徹尾暴走を始めたセレンフィリティを抑えることに従事した。
 だが、暑さにやられてしまっているせいで声は届かなかったようだ。
「もう……はあ……」
 深くため息を吐き、セレアナはセレンフィリティに当身を食らわせて大人しくさせたのだった。