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Blutvergeltung…悲しみを与える報復

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Blutvergeltung…悲しみを与える報復

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第10章 和解などありえない・・・報復の殺し合い story3

 時は少し戻り、ルカルカたちが封神台に突入した頃・・・。
「屋敷から少し離れたところに埋めるのがベストですね。外や窓の明りが届かない位置なら、死角で認識しづらいでしょうし」
 ワイヤーを信管に結ぶとリュースは機晶手榴弾を土の中に埋める。
「レヴィアさん、ワイヤーは洞窟の外に伸ばして、地面からあまり浮かないように気をつけてくださいね」
 トラップを仕掛けたことがない彼に教えようと手本を見せる。
「ふむ・・・こういった細かい細工は不慣れでな」
「あははは、そうでしょうね。そのうち慣れると思いますし、ただの工作と考えれば楽しいですから」
 工作といっても学生の作品ではなく破壊工作の方だが、いつものように爽やかな青年の笑みを向ける。
「後・・・この辺りにも埋めておきましょうか」
 第一のトラップで殺しきれなかったゴーストを、数秒後に作動させてやろうと、長さの違うワイヤーを括りつけ念入りに仕掛ける。
「草と土で臭い消しをしておきましょう。鼻が効くかどうか分かりませんが、念のために・・・」
 レヴィアに土の上から草を蒔いてもらいながら足でズリズリと踏み均す。
「おっと、お客さんことを北都さんにも伝えておきましょう」
 屋敷の扉の近くまで行くとリュースは、窓にコツンッと石を投げて清泉 北都(いずみ・ほくと)を呼ぶ。
「礼のお客さんが大勢くるそうですから。もしもの時はお願いしますね」
「うん、こっちは任せて。向こうは・・・大丈夫なのかな?」
「やっぱり心配ですよね・・・。今、陣さんたちがお迎えに行っているみたいです。あの中は外と違いますから、情報を送りづらいかもしれませんね」
「そっか・・・」
 妖精を連れ出しに行きたいのに、状況も分からずしょんぼりとした顔をする。
「でも・・・敵にそれをキャッチされるよりは、いいかもしれませんよ?それに相手も簡単にやりとりが出来ないってことですからね」
「あまり送り合って拾われちゃうよりかはいいんだね。こっちの手を読んで仕組んでくるイヤな人たちだし」
「後2人消えていただければ、来客しに来なくなる・・・というかですね・・・。来ても主は常に外出中でいませんからね」
「新しい家が必要になるはずだけど、魔法学校の生徒の目が届く場所なのかな?」
「できるだけパラミタ内海が近いほうがいいと思いますし」
「僕たちで作ってあげようか?森の木を少しもらえれば、ログハウスが出来そうだよ」
「お客さんへおもてなしが終わったらそうしましょう」
 話を終えるとリュースは洞窟の外の茂みに隠れる。
「(陣さんから連絡があってから、3時間以上経ちましたね・・・。ゴーストは疲れ知らずでしょうから、そろそろ来そうです・・・)」
 ワイヤーの端を摘み息を潜めてじっと待つ。
 ガリリ・・・ベタベタベタッ。
 爪で土を引っ掻き、大量のゴーストが屋敷を襲撃しようとする。
 同時にワイヤーを引くように、リュースはペンライトの明りを点滅させてカウントする。
「(―・・・今です!)」
 ズドォンッ、ドガガガ、ドガァアンッ。
 ワイヤーを引いて信管を抜いた2人は、機晶手榴弾を連発させる。
 ベチッベチョリと肉片が洞窟内にへばりつく。
 キラーパペットは仕留められたが、ヒューマノイド・ドールは再生してしまい、奇声を上げながら屋敷へ駆ける。
「貴様らを屋敷の中に招いた覚えはない」
 ポータラカマスクを顔に装着すると乱撃ソニックブレードを放ち、空気の刃で斬り裂くように微塵切りにする。
「まだ汚く生者の世界に居座る気か?」
 再生しようとするゴーストの醜い殺意が禁猟区のエリアにかかり反応する。
「妖怪のおばさんが作った人形ども、薄汚く果てろ!」 
 四肢を断裂させ切っ先で目玉を抉り出し、ギョロリと薄気味悪く蠢くそれを足でぐりぐりと踏みつけた。
「リュース、オメガの屋敷にゴーストが向かったぞ」
「任せてくださいっ。―・・・貴様らは招いてないと言っただろうが!」
 黒曜石の覇剣の柄をガンッと蹴り、ゴーストの頭部を貫通させる。
 入れてやるものかと力いっぱい走り、柄を掴みズバッと真っ二つに裂く。
 それでも亡者は触手を支えに壁を這い、2階へ侵入しようとしている。
「―・・・オメガを殺そうとしているのか」
 恐怖に怯えさせる以上の殺意を感じたレヴィアは、余ったワイヤーを柄と鞘に括りつけ、地面に剣を突き刺すと柄を踏み台にした。
 ワイヤーを引っ張りズ・・・ッと刃を抜き、ターゲットの身体を串刺しにする。
 グシャリと地面へ落とされたそれは剣を引き抜かれても、もがき強酸を撒き散らしながら再生しようとする。
「くっ、この・・・デク人形の分際で・・・」
「ゴビャッ・・・ゴベァアッ」
 諦めも引き際も分からないゴーストは、触手で彼を囲んでマスクを剥ぎ取り、心臓の裂け目から強酸を放出させた。
 シュァアァア〜ッ。
「むぐっ、・・・・・・かはっ。楽に逝けると思うなよ・・・」
 ぬるりと口を濡らす血を袖で拭い、命のうねりで喉の痛みを癒すと、殺意に満ちた目で亡者を睨む。
「そんなにこの世にしがみついていたいか?寂しくはないはずだ、おばさんどもが貴様らの後を追ってくだろうからな!」
 檻から解き離れた猛獣の如く、原型を留めることは許さないと掻っ捌く。
「グギャアアっ、ベヒベヒャ」
 他のゴーストを囮にした亡者は、奇声を上げなら屋敷の中へ侵入してしまう。
「北都さん、お客さんが勝手に立ち入ってしまいました!」
 オメガを連れて逃げるようにリュースが玄関から叫ぶ。
「ちょっと大変なことになっちゃったね・・・」
 本物から奪った魂を返しに来るアルファを待っていたが、さすがにこの部屋にもいられなくなってしまった。



「(侵入してきたってことは1階は危険かな)」
「どうしたんですの?まさか・・・」
「ううん、アルファじゃなかったよ。でも・・・。もし不安だったら・・・手、握っていようか?」
「新しい命を得ても、必要以上に近づいてしまったら・・・。彼女が本能に支配されないという保証はありませんわ」
 気持ちが不安定な影響で魔力が溢れ出さないかと思いながらも、差し出された北都の手をそっと握る。
「うん・・・僕だちでいう水を飲んじゃいけない、って言われてるのと一緒なんだよね?あまり近寄らせないようにしてあげるよ」
 2人の魔女は互いに近くで暮らせない、ということを知った彼は無理に歩み寄らせないほうがいいね、どっちも傷ついちゃうことになるからと理解している。
 ブレスレットに禁猟区をかけなおし、超感覚の犬耳と尻尾をぴょこんと生やす。
「可愛いお耳と尻尾ですわね?」
「そうかな・・・」
 珍しそうに言うオメガに彼は照れ隠しをするように、自分の頬を人差し指でうにゅうにゅと撫でる。
「(来たみたいだね)」
 和んでいるのも束の間、ブレスレットにかけた禁猟区が反応した。
 穏やかな空気をぶち壊しに来た者がやってきたことを知らせる。
「何だこの匂いは・・・」
 ふわふわとオメガに撫でられていた白銀 昶(しろがね・あきら)は立ち上がると狼の姿から戻る。
 ジュワァアア・・・。
 ゴーストの強酸で扉をドロドロに溶かされてしまう。
 北都は触手をスウェーで受け流し、昶と則天去私の拳を叩き込む。
 ガガガガッガガガッ。
 立ち上がれないように足の関節を砕き、オメガを連れて部屋を出る。
「窓ガラスが割れてるぞ?」
「きっとゴーストがやったんだろうね。窓際は危険だから、その近くじゃないところにいってみようか。オメガさん、道案内よろしくね」
「はい・・・・・・。この部屋を入ると扉がありますから、そこへいってみましょう」
「ん、ここにはいないな」
 超感覚で死臭がしないのを確認すると昶は扉を閉めた。
「いくつかドアがあるけど、部屋同士がつながってるのか?」
「えぇ、客室がありますわ」
「へ〜、まー広い屋敷だし。いっぱいあるんだろうな」
「オメガさん、この屋敷好き?」
「はい、皆さんとの思い出が詰まった場所ですから」
「思い出か・・・確かに、楽しいこともいっぱいあったんだよね」
 初めて会ったのはハロウィンパーティーだし、名残惜しいのかも・・・と思うが、このまま住み続ければまた狙われてしまうかも・・・。
 新しい家に住むように勧めるか悩んでいると、ドアごしから死臭が漂う。
「こっちの部屋に逃げよう」
 強酸を撒き散らしながら侵入するゴーストの視界を塞ぐように、北都はサイコキネシスでテーブルクロスを被せる。
「待て、オレが先に入って安全を確認してから・・・」
「昶・・・、中にゴーストが!!」
「へっ?うおわぁあっ」
 シュゥウウウッ。
「きゃぁああぁっ、昶さんが!」
 ドロドロに溶かされていく様子に、オメガは悲鳴を上げる。
 亡者は次の狙いを魔女に決め、その細い身体を絞め殺そうと背の触手を伸ばす。
「オメガに手出すなっ」
 聞き慣れた声音が聞こえたかと思うと、突然ゴーストの胴体が断裂してしまった。
「ちゃーんと生きてるって」
 布団で即席のダミー人形を作った昶は空蝉の術で入れ変わり、背後からアサシンソードでゴーストを倒した。
「ほら、オレは何ともないぜ。だから安心しな」
 傷なんて負ってないぜ、と泣き出しそうな彼女に言う。
「よかったですわ・・・」
 無事な様子に、ほっと安堵の息を漏らす。
「(やっぱりこの屋敷に留まるのはよくないね。もし十天君が生き残ったら、皆の目の届きづらいこの場所で、何されるか分かったもんじゃないからね)」
 オメガが屋敷から出られるとうになったら、お家は必要かも・・・思い出の品だけ持っていけばいいんじゃないかな、と北都は考え込む。
 アウラネウクさんまで命を狙われているわけだし、十天君との悪縁を断ち切るためには、大切な場所でも離れたほうがいいね・・・。
 今頃・・・皆どうしてるのかな。
 状況が分からないのはつらいけど、きっと向こうも同じだよね。
 ゴーストの襲撃をオメガさんに知られちゃったし、早く再生能力が切れないかな。
 お互いに無事な姿を見れるといいな・・・。
 封神台に行った者たちの身を案じ、死臭が消えていくのをじっと待つ・・・。

担当マスターより

▼担当マスター

按条境一

▼マスターコメント

オメガの屋敷、封神台の外、封神台の中という流れで進むことになりました。

十天君の発動中の術は・・・。

金光陣と寒氷陣です。

陣の出入りなどの制限は、ガイドのマスターコメントの通りになります。


一部の方に称号をお送りさせていただきました。
それではまた次回、シナリオでお会いできる日を楽しみにお待ちしております。