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Blutvergeltung…悲しみを与える報復

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Blutvergeltung…悲しみを与える報復

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第6章 愛に敵も見方も関係ねぇ!

「あの追ってくる連中をいじめちゃいましょうかぁ〜?」
 ちらりと後ろを振り返った趙天君が、鬱陶しそうに睨む。
「だったら、あたしが片付けてやる」
「―・・・言っておきますけど、手加減なんか無用ですからねぇ〜?」
「どうして手加減してやらなきゃいけないんだ?」
「それならいいんですけど♪」
 にっこりと小悪魔な笑みを浮かべ、いってらっしゃい♪と、ひらひらと手を振る。
「ここであたしの前に現れたっていうことは、どうなるか・・・分かってんだろうな?」
 妖怪の夏祭りやモーント・ナハトタウンで、ナタクたちと遊んでいた時の表情は消え、憎い敵を見るように睨む。
「戦うってことだよな?そのつもりで来たんだぜ。(だったら、どうしてそんな苦しそうな顔してんだ)」
 だがナタクには董天君が迷っているように見えた。
「でもその前にいいですか?」
 ソニアはふぅとため息をつき、戦いに水を差しかねない輩の気配を感じ、怪植物のツタを飛び退ける。
「(これも主のため・・・悪く思うな)」
 トラッパーの仕掛けを軽々と避けられてしまったが、主の命令を遂行しようとする。
 広目天王は隠形の術で身を隠しながら彼女の死角を狙い、ブラインドナイブスの不意打ちを仕掛けようと忍び寄る。
「私たちも甘く見られたもんですね・・・。人の恋路を邪魔する人は・・・どうなると思います?」
 神の目の光で彼の姿を暴いたソニアは、鬼払いの弓の矢を放ち森の中へ追いやる。
「(くっ、あの2人も殺気看破で我の存在が分かるのか)」
 じっと自分を睨むグレンとナタクを、忌々しそうに睨み返す。
「なんか数が増えているようだが。いつも通り返り討ちにしてやるだけだぜ」
 董天君は寒氷陣を発動せ、彼らを陣の中へ取り込む。
「おい、なんだあいつ!?」
 ナタクが彼女に挑む前に玄秀が雪山を登り、十天君の1人を倒そうと迫る。
「―・・・そこのあなた。また私たちに何か仕掛けようものなら、神の目を使いますよ?」
 怒りを今にも爆発させそうなソニアが広目天王をギロリと睨む。
「(申し訳ない主・・・。今姿を暴かれると、今度こそバレてしまう・・・)」
 悪魔を嫌っているティアンに気づかれないように、彼女の後から玄秀が封神台に入ったのを思い出した彼は、これ以上手出しをして姿を晒してしまうと主の迷惑になると思いやめた。
「グレンさん、あの人を眠らせてしまいましょう!」
「ナタクとの決闘を、邪魔されるわけにはいかないからな・・・」
「おい、てめぇら。あたしの戦いを邪魔するんじゃねぇぞ」
「―・・・こっちが先約じゃないのか?」
「ナタクとは後で戦ってやるぜ」
「ふざけんじゃねぇよ、何で俺がそいつの後なんだ!」
 後回しにされ嫉妬したようにナタクが怒鳴る。
「フッ、同じ氷系の術で戦うのも楽しいじゃねぇか?1対2でも全然かまわねぇぜ」
「(なんだこいつ、どっちつかずで迷ってたんじゃないんですか?)」
 目的がなんであろうと何の恨み言もなしに闘気を向ける玄秀に、女は無遠慮にブリザードを放つ。
「(シュウのブリザードに、私の氷術を加えてもあまり変わらないわね)」
「ティア、アイスプロテクトは?」
 術比べで押され始め、小さな声音でパートナーに言う。
「やってるけど・・・あいつの魔法の威力が・・・っ」
 ティアンは彼の盾となり吹き飛ばされそうになりながらも、じりじりと董天君との距離を縮めていく。
「ねぇ、ティア。雷を流してやった後、氷術で刃を作ってくれない?小さなのでもいいですから」
「えぇ、そんなに大きいサイズはまだ無理だけど。それでよければ」
 何にに使うのかと疑問に思いながらも、ティアンは彼に頷いた。
「(後もう少し・・・・・・届いた!)」
 玄秀は自分の手を相手の手の平に近づけた瞬間、彼はパートナーに視線を送り、氷術でつなげさせる。
 パキキキ・・・。
「(こいつに弱点は見当たらないみたいですね・・・)」
 無理に探して策を練るよりも、攻撃あるのみとサンダーブラストの電撃を送り込む。
「―・・・・・・っ。(やっぱりこっちにも多少くらってしまいますね)」
 氷でつなげていれば自らくらってしまうことも承知の上だったが、ティアンに作ってもらった即席の刃を、もう片方の手で受け取る。
「へぇ〜、耐え切ったようですね?」
 直撃をくらっても董天君は表情を崩さず、目の前の敵を倒すことしか考えていない。
「・・・氷術での力比べならば負けないという自負が油断を生みましたね。とどめを刺させてもらいますよ!」
「な、なにを考えているのよ!そんなの駄目!許さないから!」
 名声を手に入れようと相手の喉元に刃を突き刺そうとする玄秀を、不要な殺生は騎士の道に外れるわ!とティアンが止めようとする。
 ドシュッ。
 白銀の雪に真っ赤な血が零れ落ちる。
「―・・・そんな、こんなことって・・・」
 目の前の光景にティアンは呆然と立ち尽くす。
「まぁ、ちょっとは楽しめたな」
「んなっ!?」
 つなげられていない手で刃を受け止められ、刃を握り砕かれた玄秀が驚愕の声を上げる。
「で、覚悟は出来てんだろうな?」
 ドガァッ。
「―・・・・・・かはっ」
 腹を殴れらた衝撃で、氷術でつながっていた手が離れ、雪の上へ膝をつく。
「まったくもう、シュウったら・・・」
 負かされた彼をティアンが助け起こしてやる。
「また面白い戦法を考えてきたら、その娘も一緒に相手してやってもいいぜ。気がむいたらだけどよ」
「えぇ〜・・・俺と対応なんか違くねぇか?」
「だが、殺す気ならそれ相応の覚悟をしろよ?」
 不服そうに言うナタクをムシし、氷のように冷たい表情に一変させ、こっちも殺す気でいくぜ?というふうに言う。
「えぇ・・・。でも、騎士道に反することはしたくないし。もちろん、シュウにそんなマネさせるつもりはないわ」
「ティア!何を勝手なことをっ」
「シュウはちょっと黙ってて!あなたは他の十天君と少し違うみたいね?そこの英霊の影響で、変わったのかもしれないけど」
 それに、倒すと命を奪う意味の倒すことは、全然違うもの・・・と心の中で呟いた。



「ここから先はもう邪魔するなよ・・・?」
 また2人の時間を妨害するなら石にするぞ、と脅すようにグレンは玄秀たちにさざれ石の短刀をちらつかせる。
「そんなに殺気立たなくても分かってますよ」
 見張りもついていますし・・・、とティアンをちらりと見る。
「董天君さん、傷を治してあげますね」
「フンッ。おまえなんかに治療されたくないな」
「まぁまぁ、そう言わずに。万全の体制でない状態で、万が一・・・負けてしまったらってこともありますよ♪」
 しかもその逆に手負いの彼女にナタクが負けてしまったら・・・という意味もあったが、それは言わずにソニアは命の息吹で傷を癒してやる。
「礼なんか言わねぇからなっ」
「はい♪存分に闘ってください」
「楽しむのもいいが。相手の力を見るためにとはいえ、ひやひやさせんなよ」
「どう闘おうがあたしの勝手だろ?」
 素直に礼の一つも言えない彼女は、雪に突き刺していた槍を抜く。
「まぁいいや。今日こそタイマンで勝負しようぜっ」
 だいぶ待たされたが、やっと2人きりで闘えるぜ!とナタクが董天君に槍を向ける。
「あ、今更だが言っておくことがあった・・・。董天君・・・俺はテメェに惚れている…テメェに夢中で・・・愛してる」
「こ、この野郎!!人前で言ってんじゃねぇよ!」
 動揺しながらも投擲された紅蓮の槍を弾き飛ばす。
「それに、あたしよりも弱い男には興味ねーつっただろうがっ」
「相変わらずつめてぇやつだぜ。それと、この野郎じゃなくって、名前で呼って言ったじゃねぇか?」
 にまっと笑うと雪山を駆け登り、龍飛翔突の衝撃で彼女の槍を弾き、得物がザッと雪に刺さる。
「―・・・ちっ。無駄口を言えねぇように、その顎を砕いてやりてぇな」
 スッと屈み相手の槍を蹴り飛ばし、彼の得物も失わせる。
「ん〜・・・割れるものならな!」
 ただの敵としてナタクと闘うことに迷っていた董天君だったが、純粋に闘いを楽しんでいる様子に、彼ももっと楽しみながら闘おうと肌を龍鱗化させる。
 封神しないためだが、もっともっと闘志をぶつけ合おうと、素手で立ち向かう。
「好きな相手を殴るわけ?向こうは弱いヤツがキライだっていうから、そうするしかないのかしら?」
 ティアンは十天君の研究を阻止するためのはずが、さらに深入りすることになったあげく、人の恋愛バトルを見物する羽目になった。
「あれも“愛”の表現の1つなんですよ♪」
 温かい目で見守るソニアが嬉しそうな笑顔を浮かべて言う。
「げっ・・・ぶはっ!?」
 ナタクは董天君の肩を狙うが、腕でガードされ背後をとられてしまい、背に肘鉄をくらい雪に埋もれる。
「―・・・英霊が踏まれたわ。シュウや私と戦っている時よりも、かなり容赦ない気がするわね」
「それは闘いを楽しむためにわざとだと思いますよ?」
「僕たちって手加減されてたわけ?」
「いいえ、ただ単に闘うことが好きなんですよ彼女は」
 不愉快そうに言う玄秀にソニアは首を振り、相手の力を甘くみるような人じゃないというふうに言う。
「だからといって董天君の所業が消えるわけじゃありませんよ?他の人が野放しにするとは思えませんけどね」
「確かに・・・十天君としての戦意を失い、どっちへつくわけでもなくふらりと旅に出たとしても。今までの罪は消せませんからね」
「はぁ・・・。だいぶよろけているようだが・・・勝つまでやめないんだろうな・・・」
「えぇ、そうかもしれませんね。気長に見守ってあげましょう♪」
「それまで僕たちって、この中から出られないんですか?」
 いい加減人の恋沙汰を見物するのも飽きてきた、という感じで玄秀は嘆息する。
「あまり水を差したくありませんけど。もし出たいのでしたら、私が董天君さんに言ってあげますね」
「ぜひ、そうしてください」
「(恋愛か・・・シュウにはまだ早いわね!)」
 彼が恋人を見つけるなんて、まだまだ先っていうか許さないわ、というふうにティアンは恋愛バトルを眺めている。