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リアクション
歌合戦
『皆さん、長らくお待たせしました。これより、声優たちによる歌合戦の開始です』
待っていましたと歓声が、ステージへと降り注ぐ。
『今回声帯ポリープの除去手術から復活した歌姫CY@Nの、オンステージに期待が膨らむところですが、実況のわたしはここでは出番がなさそうです。私の代わりにステージで司会を努めていただきましょう! 846ユニット『娘娘‘s』! ジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)&新谷 衛(しんたに・まもる)!』
ステージ奥より可愛い二人組が現れる。
「はーい、今回司会と出場者の紹介をするのは、ワタシジーナと」
「オレ様、マモルの『娘娘‘s』がお送りするぜっ!」
「では早速最初の歌。今回のステージはなななんと846プロ特別ユニットお送りしま〜す♪ 今回の曲はなんと乙川様の作詞作曲なのです!」
「それではいってみよーぜっ『あのね、の片思い』だっ!」
会場が暗転し、イントロが流れる。四拍子の可愛い曲調。
乙川 七ッ音(おとかわ・なつね)、神崎 輝(かんざき・ひかる)、柳玄 氷藍(りゅうげん・ひょうらん)が現れると明転。照明の演出は一瀬 瑞樹(いちのせ・みずき)が担当。
イントロフレーズが4ループ、一小節を挟んでAメロ。七ッ音が歌う。
「いつも見てた その暖かい眼差し
だけど離せない 臆病すぎる私
一緒にいるほど 泣きそうになる
…アナタが優しすぎる所為だよ?」
三人の合唱。サビのフレーズ。
『あのねと言ったり 言葉がつまったり
オドオドした私、どう見えてるかな…』
続いてAメロ2を輝が歌う。男とは思えない高めの声。
「あのね あのね やっぱり言えない
アナタと一緒にいられなくなるかも…
その想いだけが 私を邪魔するの
一言だけ好きって伝えたいよ」
Bメロは一転して氷藍の見た目に反したクールなボイスで変調する。観客席にいる亭主と子供であ真田 幸村(さなだ・ゆきむら)と真田 大助(さなだ・たいすけ)にもアピールを忘れない。
コーラスに『娘娘‘s』が加わる。
「少し 少し 勇気をちょうだい
どうしても 一緒にいて欲しいの!
純情すぎる恋心添えて
この想い 受けってほしいな」
そして最後にもう一度合唱のサビを繰り返す。
『あのねと言いたり 言葉が詰まったり
オドオドした私 どう見えているかな……』
伴奏が照明のカットと共にフェードアウト。
そして、喝采する拍手。
七ッ音は歌い終えた途端に急に恥ずかしくなって舞台袖に戻った。袖からはCY@Nが三人を見ていたらしく、七ッ音らに「初めてにしては上出来よ」とウィンクを投げ労った。
七ッ音はますます萎縮してしまった。
「なんだかんだで、息を合わせているな」
ステージで司会をする二人の姿を見て、付き人の林田 樹(はやしだ・いつき)はそう思った。衛がジーナに耳を引っ張られて、ステージに上がったとは思えない。
しかし、林田 コタロー(はやしだ・こたろう)にとっては――
「ねーたん、じにゃとまもだん、なんかへんらったれす。まもたんが、なつねしゃんとはなしらら、じにゃがへんらったのれす」
コタローはステージ裏での彼らのやり取りを見て、樹にそう報告した。
「あれはだなコタロー、『お医者様でも草津の湯でも治らない病気なんだ』 病気と言ってもなんだ、さっきの歌みたいなものだ」
「しゅきとか、きらいとかのはなしれしゅか?」
「どっちかというと魔鎧の方がかな。なんだかんだでジーナに付き合ってやろうとしている所が、私は健気だと思うだが……なぁ社長」
「イキナリそんな話俺に振られてもこまるで!?」
「ともあれ、鏖殺寺院の連中が来たら動ける状態にして捕らえることが先決だ。コタロー、お前さんの力が大切だ」
CY@Nのステージまで、彼女が何処にいるかを《情報撹乱》で特定しづらくする。それがコタローの役目。
「う! こた、がんまるれす!」
「いやはや、氷藍殿の初陣。なかなかに良かったでござる」
あれを初陣と言っていいのか疑問なところだが、【ガーゴイル】をつれて客席周辺を警備しながら、妻の晴れ舞台に満足気な様子な幸村だった。
そして、ふと気づく。
「ん……? 大助がおらぬ!? まさか変な所に潜り込んでいるんじゃ……いやアレはしっかりした子だ」
子供の事が心配だが、大助なら自分でなんとかする筈だと信じる幸村だった。
「しかし、ヤケにカメラを持ち込んだ客が多いな……注意せねば」
「続いて、CY@Nの妹分としてデビューするBR@Nとそのバンドの登場だ!」
「『BLUE WATER』の登場です!」
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