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葦原明倫館の食堂・秋の新めにゅ~開発企画☆

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第7章  書類整頓大作戦


「あ゛ぁっ、もうっ!」
「唯斗兄さん、落ち着いてください〜」
「そうですよ唯斗。
 焦ったところで早く済むわけではありませんから」

 昼下がり。
 腹減り紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は、とてつもなくイライラしていた。
 紫月 睡蓮(しづき・すいれん)プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)の説得も、効果はない。

「やってられっか〜!」

 と叫んで、また机上に視線を落とす。
 唯斗達がやっているのは、葦原明倫館陰陽科へ送られてきた、転学希望書類のチェックである。
 封を開け、必要な書類がすべて揃っているか、不備がないか、などを確認しているのだ。

「ちっ……ちょっと食堂行ってくるわ!
 みんなの飯、頼んでくる」 
「行ってらっしゃい、エクスによろしくね〜」
「ん〜」
「待って兄さん!
 私も行きます〜」

 がたんと立ち上がると、唯斗は部屋を出ていってしまった。
 プラチナムの言葉に、後ろを向いたまま手を挙げて。 
 睡蓮はというと、ぱたぱた足音を鳴らして唯斗を追いかけていく。

「あらら、残されてしまいましたね〜」
「こんにちは……あれ?」
「ごめんなさいね、いま少し席を外しておりますの。
 すぐに戻ると思いますから、お茶でも飲んでお待ちくださいな」

 そこへ訊ねてきた彼は、会いたかった、というか呼び出しやがった唯斗に、置いてきぼりにされた模様。
 プラチナムと一緒に、お茶とお菓子をいただくこととなった。

「はぁ、やっとお客さんも落ち着いてきましたな」

 たどり着いた食堂には、真昼の繁雑さはなかった。
 エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)も、休憩時間のようだ。
 お茶を飲みながら、気分転換をしている。

「おや、唯斗に睡蓮ではありませんか。
 今日はなにをしているのですか?」
「え?
 転学希望者の書類チェックだよ」
「私もう疲れました〜」
「そうですか、なぜ唯斗達が?」
「ハイナの指示だよ。
 なんか陰陽科の予算アップとか広報とかやってたからその流れでやれって。
 睡蓮とプラチナム、ほかにも匡壱とか、俺の友達とかいろいろとな」
「がんばりましたの〜」
「このタイミングで、そんなに希望者がいるのか?」
「ほら、いま明倫館に陰陽師の兄ちゃんが来てんだろ?
 あれで陰陽師になりたいやつが急増して、超忙しいんだよ!
 編入希望だけじゃなく、学科転向するもやつ出てきてるし」
「半日やってるのに、まだ3分の1も終わらないんですよ〜?」
「そうか、あいかわらずこき使われておるのだな」
「お前も今日はたいへんだろ、エクス?」
「まぁな。
 しかし、わらわが企画したのだからな。
 もっと食堂に親しんでもらうために……と。
 がんばらねばなるまいに」
「けどなんで『食堂のおばちゃん』とか名乗ったんだ?」
「あぁ、あれはハイナの趣味ですよ。
 謎の方が、参加者も増えるのではないかとかなんとか……」
「ふっ、そんなことだろうと思った。
 なんだかんだで、俺も準備とか手伝わされたもんなぁ」
「唯斗が言いふらしてくれたおかげで、陰陽科では真っ先に広まりましたものね」
「なんだよ、その言い方……」
「いえ、感謝しているのですよ?」
「ホントかよ」
「まぁいまのところ、どのメニューも『あり』ですよ。
 このまま、わらわのフライパンが飛ばないことを祈っていてください」
「ははは、そうだな……ん?
 ちょいと待ってくれ、電話だ」
「ねぇエクス姉さん。
 私、こっちをお手伝いしてもいいかしら?」
「えぇ、わらわは大歓迎ですよ」

 両隣に座ると、すぐに茶とおしぼりが出てきた。
 しばしゆっくりと、エクスとの会話を楽しんでいたのだが。
 唯斗は、風呂敷から携帯電話をとりだした。

「はいもしもし……うん、そうだ。
 ……あ?
 馬っ鹿おめぇ匡壱、佐保は朝からハイナに捕まってるって!
 向こうに人が集中しているいまのうちに、書類関係全部洗って備品もチェックだ!
 いまなら動きがないから、あとでチェックしなくて済むかんな。
 ……おう、みんなの飯注文したらすぐ戻るから。
 待たせてすまん、頼むぜー」

 通話を終わると、携帯電話を戻す唯斗。
 端を綺麗に縛ってから、風呂敷を持って立ち上がった。

「……っつーわけで忙しいんで行くわ。
 エクス、睡蓮、飯30人分頼む!」
「はいはい、なにをお持ちしましょう?」
「メニューは任せる!」
「わっかりました〜」
「あとでプラチナでも使って届けてくれ!
 場所は陰陽科の実習場に頼む!
 何人か死んでると思うから起こして渡しといてくれ!」
「30分後にとりに来るよう、伝えてくださいな。
 いつもどおり、ハイナにつけておきますね。
 まいどどうも〜」
「唯斗兄さん、がんばってくださいね〜」
「おぅ、ありがとな!」

 食堂を出た唯斗は再度、携帯電話を手にとった。

「おぅ、プラチナか?
 ……あぁ、そうだ。
 30分後に……うん、よろしくな」

 ぱたん……という音と同時に、溜息を吐く。

「つーかふと思ったけど……これ、学科長とかの仕事じゃねぇの?」

 気がついたものの、あとの祭り。
 きっと……葦原明倫館へ入学したときから、決まっていたのだから。
 そう、ハイナに眼をつけられたときから、ね。