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はんどめいど・らっきーちゃーむ★

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はんどめいど・らっきーちゃーむ★

リアクション

「絶対絶対大きくなってやる……一日でもいいから!」
お守りを作りながらアスカが嘆いています。
リューグナー・ファタリテート(りゅーぐなー・ふぁたりてーと)がぽむ、とアスカの肩にその手を置きます。
「キミが本当に胸が大きくなりたいと願うなら、ボクはそれを叶えてあげよう」
「え、いやそういうことじゃなくて私はお守りの効果を試したくて……」
「キミたちはいつもそうだ。そうやってお守りに縋っても努力しても胸が大きくならない。意味がわからないよ」
「そ、そこまでいうか!?」
ありがた迷惑気味なみんなの助言たちに半泣きになって傍にいた雅羅に抱きつきました。
「雅羅ちゃーん!」
「きゃっ、ちょ、ちょっと……」
「はっ、このふわふわ弾力……」
「へっ」
「雅羅ちゃんもおおきいよーうわーん! バナナの皮で転んじゃえ!」
「ちょっと! 微妙にありえそうな嫌味言うのやめてよ!」
「案じることはないわ。きっと大丈夫」
ドリス・ナイフィード(どりす・ないふぃーど)が宥めます。そういうドリスの胸も慎ましいものでした。
晒で誤魔化された偽の胸ではありましたが。
「お守りに縋りたい気持ちもわかるもの。魔女のお守りならきっと大丈夫よ。私たちも協力する」
「うう……ドリスちゃん……」
「だからデータをとらせてね……」
「え?」
「……騒がしいですね、マスター」
正悟の命で手伝いをしていたフォルテッシモ・グランド(ふぉるてっしも・ぐらんど)が、材料を片手に呟きました。
「あー……うん」
「姉様」
声をかけられて振り返ると、ハーモ二クス・グランド(はーもにくす・ぐらんど)クレッシェンド・グランド(くれっしぇんど・ぐらんど)がそこにいた。
姉妹機との邂逅にフォルテッシモの顔がほころぶ。
「あら、クレッシェンドにハーモニクス。貴方達も起動したのね。起動後はどう?」
「ええ、悪くありません」
「フォルテ姉様にクレス……完成された機晶姫……羨ましい」
「貴方もすぐになれるわ、ハーモニクス」
姉妹機との邂逅に、それぞれの機晶姫達の会話が弾んでいるようです。
彼女たちなりに積もる話もあったのでしょう。
これはこれでよかったのかな、と正悟は微笑ましくなりました。
少しだけ癒されたような気分になったその瞬間。
「まぁまぁアスカ、騒がないの。一休みしましょ。とっておきの体操教えてあげるわ」
宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が現れました。
励ますように肩に手を置きます。
「体操?」
「そうよ、大きくするのはともかく、バランスを保たなくちゃ悲惨なことになるのよ」
真剣に祥子に諭されて、アスカはこくりと頷きました。
「いつかアスカがきょぬーになった時のために……! 私が『ふわふわおっぱい体操』を伝授してあげる」
「へっ?」
「そうね……此処じゃ人目を憚るわよね。場所を変えましょうか」
言うが早いかアスカはずるずると物陰へと導かれていきました。
「……えーっと、俺はどうすればいいんだ」
残された正悟は溜息をつきながらそれでもお守り作りの戻るのでした。
「…………おっぱい、ってそんなに大事なのですか……」
「相手しなくていいわよ、ティア」
「はぁ……」
雅羅が呆れたように手を振り、お守り作りに戻ります。
「ああもう、編み直しだわついてない!」
「あのー、ティアさん」
「あっ、はい!」
「病気平癒のお守りって……これで合ってますか?」
騒がしい中、お守りを見せながら問うて来たのは高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)でした。
「ご病気、ですか。えーっとこの図の……これです」
ティアが指示した紋章を見て、咲耶が手直しを加えます。
途中ティアが手を貸しながら作り終えると、咲耶が安堵の息をこぼしました。
「これで兄さんが……」
「え?」
「フハハハ! 我が悪の秘密結社の改造人間サクヤよ、何を作っているのだ? もしや、世界征服のための秘密兵器かっ!?」
背後から高笑いが聞こえ、咲耶がため息と共に振り返ります。
その横ではティアや正悟や機晶姫たちが何事かとあっけに取られた視線を向けていました。
そこにいたのは他でもない咲耶の兄、ドクター・ハデス(どくたー・はです)こと高天原御雷。
「むっ、そこにいるのは……」
彼ははっと気付いたようにティアをじっと見ます。妖しく光る眼鏡にティアは思わず咲耶の後ろに隠れました。
「ティアではないか!?」
「はっ、はいい!」
ビシィッ! っと指をさされて、ティアが隠れたまま返事をします。
「ククク、我が名は天才科学者ドクター・ハデス! かつて冥界を追放されし伝説の魔女ティアよ! 今こそ、古の盟約に従い、我が秘密結社オリュンポスとともに世界征服の覇業を成し遂げようぞ!」
「ふぇ!?」
「ちょっと兄さん、ティアさんに迷惑かけちゃだめよ!!」
「何を言う改造人間サクヤよ! これは世界のため……」
「兄さん、その世界の為にこれをどうぞっ!」
咲耶が暴走する兄にお守りを押し付けるように渡したその瞬間。
「ハッ、お、俺はこんな所で一体何をっ!?」
雷に打たれたような効果音が何処からともなく聞こえて、ドクター・ハデスがぴしっと直立して首を左右に振りました。
「に、兄さん……? しっかりして」
「あ、ああ……そうか、確か今日は、妹の咲耶と一緒にティアさんのワークショップを手伝うのだったな」
そういうと途端に姿勢を正して眼鏡を外し、ゆっくりと微笑みました。
端正な顔立ちに浮かぶ柔らかな笑みは人好きのするそれで、隣にいた咲耶が何故か頬を染めました。
「や、やだ……兄さん、真面目にしてるとちょっとカッコいいかも……」
そんな咲耶の呟きが聞こえているのかいないのか、ドクター・ハデスこと御雷は、爽やかにティアに握手を求めました。
「ティアさん。俺は蒼空学園大学部所属の高天原御雷だ。こちらは妹の咲耶。今日は一日、ワークショップを手伝おうと思う。どうぞよろしく。」
「は、はい、あの、よろしくです……」
「あの、改めてよろしくお願いします……」
あまりの変わりように、寧ろドクター・ハデスは何だったのかと思いつつも、ティアも握手に応えるのでした。



「むぅ……難しいな」
「時間はあるんだから、ゆっくりやるといいですよ」
「う、うん……だけどここがどうしてもうまくいかなくて」
緋桜 霞憐(ひざくら・かれん)のお守り作りを緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)が手伝っていました。
「ここは……こうですよ、霞憐」
「あっ、ほんとだ」
「そう言えば、どんな願いを込めているんです?」
「え、それは、えーっと……折角だから遙遠と一緒にいられるようにって」
「え……このお守りに、ですか?」
「べ、別にどんな願いでもいいじゃないかよ。こういうのって想いの力が重要とか言うじゃん」
「霞憐……」
「……言ってる僕自身恥ずかしいんだからなっ! ほ、ほらほら、早く作ろうぜ!」
霞憐が顔を真っ赤にしていると、ティアが回ってきます。
「あ、魔女さん、ちょっとこれ見てくれよ」
「はい……あ、きれいにできてますねぇ」
「ホントか!?」
「はい、想いもすごくこもってて素敵です」
ティアが微笑むと、霞憐も照れくさそうにへへ、と笑った。
「ティアさーん、こっちも見てください!」
「あっ、はぁい。それじゃあ、わからなくなったらすぐ呼んでくださいね」
遠くから呼ぶ声に応えて離れていくティアを見て遙遠はそっと苦笑しました。
お守りにどれほどの効果があるかはわかりませんが、霞憐のこういった顔を見られるのであれば悪いものではありません。
この時間を楽しもうと遙遠はまた霞憐へ視線を向けました。
一方、メイ・アドネラ(めい・あどねら)赤嶺 卯月(あかみね・うき)に呼ばれてティアが行ってみると、二人が必死に紋様を編んでいました。
「これがわからないんです」
聞けばパートナーの赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)の為だと言います。
何時までも霜月と一緒にいられるように、元気でいられるようにと願いをかけたお守りを編む二人に、ティアもそっと願いの後押しをしました。
「出来た、っと」
エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は手早く紋様を編み終えると、メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)を振り返った。
「いつまでもつまらなそうな顔してるなよ、メシエ。これお前にやるからさ、何かいいことあるかもしれないし」
「……お守りも悪くはないが」
メシエも手を動かしながらその切れ長の目をエースに向ける。
「どうせいいコトが起きるならお前の意志で起こしてほしいものだな」
「え」
「血を吸わせてもらった方がよほどいいと言っているのだ」
「え、えーっと……か、帰ってからな!」
「ふむ、その言葉違えるなよ」
「二人ともそこまでですよ、これ以上は皆さんに迷惑がかかります」
二人を諌めたのはエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)でした。
緑の貴石をあしらった身を守るためのお守りを作りながら、両者にすいと視線を流します。
「メシエもあまりエースをからかわないでください」
そう咎める視線には、エースに怪我をさせることは許さないという強い光が宿っていました。
「はいはい、今はせいぜいお守り作りを楽しむとするさ」