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はんどめいど・らっきーちゃーむ★

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リアクション

「ティアさん!」
呼びかけられてティアは振り向きました。
お守りを手にした騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が手を挙げているところでした。
ぱたぱたと歩み寄って勧められるままに隣へ座ると、此処がうまく出来なくて、と詩穂が指差します。
実際に編んで見せながらティアが教えていると、編みながら詩穂が「ねぇ、ティアさん」と少しはにかみながら言いました。
「想いを伝えられるのは言葉だけじゃないよね。チャームは一日限りだけど、これからも一緒にいればお互いに気持ちが通じあうかな」
「詩穂さん……」
「長い時間がかかるかもしれない。でもきっと通じあうよね」
「もちろんです! きっと詩穂さんの想いも伝わりますよ」
少しでもお手伝いしますね、とティアも願いの後押しをします。
「うん……みんなの想いを大事にするティアさんは偉いと思うよ」
「えっ? そ、そんなことない、です……」
「何話してんの〜?」
と、ひょこっと横から顔をのぞかせたのはミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)でした。
「ミルディアさん」
「なになに〜想いがどうとか聞こえたけど、恋の話?」
「ふふ、大事なひとの話です」
「ああ〜いいなぁ。恋してる時って充実してるよねぇ」
「はい、毎日が楽しかったり大変だけど頑張れちゃったりしますよね」
「そうやって大切なひとがいて、頑張ってるひとって素敵ですねぇ……」
「魔女さんは好きな人いないの?」
「好きなひと?」
「はいはーい、それならいるいる!」
ぱたぱたと手を振って答えたのはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)でした。
「このお守りももっとラブラブになるために作ってるんだけどね」
堰を切ったように飛び出すセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)との惚気話。
「例えばどこが好きなの?」と問われれば、止まらないマシンガントークです。
「優しいとことか強いとことか私を好きなとことか料理がちょっと下手なのは玉にキズだけどそこも愛しいっていうか〜」
「せ、セレン」
「あっ、この人が私の運命の人よ!」
止めようとしたセレアナを抱き寄せてちゅっとキスをすると、あっけに取られているみんなを見回しました。
「それで、魔女さんは好きな人とかいるの?」
「え、うーん……」
「私も気になるなぁ、この人のこと考えるとキュンとしちゃう〜とか、ドキドキして夜も眠れない〜とか」
「きゅんとする……」
「お、その反応だといるのかな?」
ミルディアに覗きこまれてティアはわたわたと手を振ります。
「ち、ちがいますよぅ」
「照れなくていーって! 誰だれ〜?」
あわわわ、と言葉に詰まるティアをきゃっきゃとつつくその横のテーブルでは、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)イランダ・テューダー(いらんだ・てゅーだー)若松 未散(わかまつ・みちる)と共に話に花を咲かせていました。
どうやら内容はイランダの恋愛相談のようです。
「んー、やっぱり腕を触ったのがきっかけかな。男と女は筋肉が、何か、違うのよ。で、あぁこの人は男の人なんだって」
思い出しながら話すルカルカに、イランダがほぅ、と吐息をこぼします。
「やっぱりルカルカさんは大人っぽいよね……男性はそういう女性が好みなのかしら」
「え、いやー大人っぽくないよ。いっつもダリルに『もっと勉強しろタンポポ頭』とか子ども扱いされるもん。それにあんま女の子らしくないし……」
謙遜してみせるルカルカは、けれどちょっと恥ずかしそうににへ、と笑いました。
「ま、彼はそんなルカがいいって言ってくれるけども……」
「もう、結局幸せそうなのね」
「えへへー」
「でも、なかなか難しいわよね……」
「素直が一番だよ。その人が甘えたり拗たり出来る相手なら、そのままでちょっち勇気出すのもいいんじゃない?」
ねっ? といたずらっぽく笑って見せるルカルカ。
それが己のことだとわかっているイランダは、ただ小さく頷きました。
「未散さんも、ね」
「え、でも好きとか恋とかよくわかんないし……うう、なんでこんな顔が熱いんだろ」
もごもごと口ごもる未散の顔は真っ赤でした。
それを聞きながらも気恥かしさゆえに混ざることが出来ないよいこの絵本 『ももたろう』(よいこのえほん・ももたろう)は、眠りこける姫月 輝夜(きづき・かぐや)の横でお守りを作りながら聴き手に回るのでした。
そんな内気な少女がお守りにかけた小さな願いは『明るい自分になれますように』。
それぞれの恋がそれぞれのペースで進展するのに、そう時間は要らないのかもしれません。
「ところで、それは誰の為のお守りなんだ?」
「それは……ってダリルさん!?」
「ちょっともー、ガールズトークに入ってきちゃだめ! ダリルにはルカが今度作ってあげるから!」
「はいはい」
少女たちに追い払われたダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)を見て、気が気ではないのがハル・オールストローム(はる・おーるすとろーむ)
未散と何やら親しげに話し、あまつさえ未散の頭にお守りを乗せて戻ってきたダリルをしきりに気にしているのを、ダリルは見逃しませんでした。
「おやどうしたハル?」
「別に」
「未散のお守りは恋愛成就のもののようだったぞ」
「……そうですか」
そっけない反応のハルにダリルはおやおやと肩を竦めました。
「まあまあ、二人とも。でもまあパートナーが気になる気持ちはわからなくもないですが」
二人を宥めたのは柊 北斗(ひいらぎ・ほくと)です。
その北斗の言葉に、ほう、と片眉を跳ね上げ、ダリルは問いかけました。
「やっぱりパートナーは可愛く見えるものかな」
「……勿論それもあります。だが時々とても大人びて見える」
「ああ、それはわかる気がしますね。守りたいというのは変わりませんが、それでも時折すごく遠く感じることもある」
「ふむ……」
それは面白いことを聞いた、とダリルは口角を上げた。
「そうやって子ども扱いしていると大事なことを見逃してしまうかもしれないな」
「どういうことです?」
「パートナーの気持ちを察することも大事だと言いたいだけだ」
近くにいるうちに出来るだけ大切にするといい、とダリルは友人たちに助言するのでした。
自分の想い人はこの空の遠くにいる、その彼女に思いを馳せながら…………。