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Blutvergeltung…導が示す末路

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Blutvergeltung…導が示す末路

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第8章 戦慄せよ・・・道化のショータイム

「さっさと出てこないと、全部壊すわよ!」
 小瓶に入れておいたギャザリングヘクスを飲むと、怒り暴れまわるように鏡の破壊を続け、ほんの数秒前にそこに潜んでいたようなものを狙う。
 潜んでいた、というよりそこにいて、破壊されるのと同時に逃げているのだろう。
「(なんしても、鏡が復活する前に壊しきれなきゃ意味がないわね・・・。魔法の細工も気化しないうちに、あいつの隠れる場所を無くさなきゃね)」
 壊したり細工するにしても、時間との勝負だと少し焦りつつ、鏡の破壊を急ぐ。
「(そんなに必死に頑張っても、勝つのは私たちですよ。フフフ・・・)」
 金光聖母はその彼女を嘲笑うかのように追う。
「あれれ〜?独りなのかな。アルカさん、やっちゃおうか」
「―・・・・・・了解です、右天様」
 光線が放たれた瞬間、アルカが破片に光術を放ち、光を屈折させる。
「どうして突然方向がっ!?」
 避けたと思った光のレーザーが、泡の足を掠める。
「あははは、踊ってるみたいで面白いねー」
「そこかっ」
 殺気看破で2人の気配を探知し殴りかかるが、そこに右天たちの姿はない。
 どこかに潜んでいる2人が映されていただけだったのだろう。
 だが、術が届くということは、すぐ近くにいるはず・・・。
「(追ってる間に鏡が復活されると面倒だわ。ここは冷静にならなきゃ・・・)」
 しかし今は相手をしてやる暇はないと、鏡の破壊役に戻る。



「ふ〜ん。そんなに割りたければ手伝ってあげようかな♪なんてね」
 お望み通り全て破壊してあげようと、にっこりと右天が笑みを浮かべる。
「イッツ・ア・ショータイムー!!皆様方、素晴らしき嘲笑と侮蔑に満ちた卑しい時間をお楽しみください〜」
 そう言うと右天は真澄のマシンガンを撃ち鳴らして天井の鏡を割る。
「はぁ、まったくいい性格しているわっ」
 よくもこっちの計画まで壊してくれたわね、と泡は床に伏せる。
「淵っ」
「まさか天井の鏡を破壊しにかかるとはな!」
 ルカルカの声に降り注ぐ破片を、カタクリズムで防ぐ。
「破片の雨から逃れても、銃弾まで防ぎきれるかな?」
 ちらりと唯斗へ視線を向け、犠牲者が出ないなんてつまらないよ・・・と、彼を狙う。
「(右天のやつ、俺を狙っているのか)」
 淵がいるとはいえアルファと睡蓮からひとまず離れるべきかと駆ける。
 純白のフロアは美しい色とは真逆に、取り込んだ者たちを道に迷わし、彷徨わせようとする術者の薄汚い心が見える。
「まるで追われているウサギのようですね」
 周りに人がいないのを確認し、金光聖母が鏡の外へ出た。
「どうして魔女1人に、そこまで必死になれるのか・・・。私には・・・理解出来ません・・・」
「自分から出てくるとは愚かだな」
 彼が床につけた靴の泥を頼りに駆けつけた紫音は、魔女を狙う者へ刃の切先を向ける。
「ただ倒されるために出てきたとでも?その勇ましい表情を、恐怖と苦痛の苦しみで歪ませてさしあげます」
 金光聖母は2人に手の平を向け、エンドレス・ナイトメアの暗黒の闇で、白いフロアを黒く染める。
 それは生き物が這うようにズズズ・・・と彼らへ迫る。
「畏怖への耐性の補助を仲間からもらったとしても、どこまで耐えられるでしょうか?」
「この・・・っ」
「おっと、近づくと撃つよ?近づかなくても撃っちゃうけどね」
 ズドドドドドッ。
 紫音たちへ銃口を向けた右天が、真澄のマシンガンの銃声を鳴り響かせる。
「ちっ、アルファとオメガを苦しめる元凶が・・・目の前にいるっていうのに!」
 ここで無理に戦うのは相手のトラップにはまるのも同然だ。
 悔しげに言い放つと唯斗の腕を引っ張り走る。
「魔法で苦しむか、それとも弾に当たってのたうち回るか・・・楽しみだね!」
 彼らがどちらで苦痛を味わうのかと思うと、ニヤけが止らない。
「はぁ〜い残念、行き止まりっ」
「(相手がこんな手を使ってくるとはな・・・)」
 唯斗と紫音は銃口を向けられ銃弾の雨を、どう突破すればよいのか策を練ろうとしても、いいアイデアが浮かばない。
 弾丸の中を駆るは餌食になりにいくようなものだ。
 いったいどうすればと考えていると、プラチナムが小さな声音で呟き始める。
「Beziehung mit Sie es Band・・・Marke ich in ein Gef‘‘aβ und Nachgiebigkeit das Weitere Stahlmacht zu diesem K‘‘orper. Der Unternehmer wer sch‘‘utzen dagegen・・・. Der Name meines Meisters ist Yuito」

 “つながりしその絆・・・私を器にさらなる鋼鉄を、この身に与えよ。
 護るべき契約者・・・。
 この私のマスターの名は唯斗”

 唯斗が銃弾を浴びせられそうな危機に、プラチナムは五式から六式へと成長する詠唱をし、契約者である彼の身を護るための力を得る。
 彼との絆を力に変え、鋼鉄の身で迫りくる銃弾を弾く。
「マスター、今のうちにあの術を!」
「了解だ」
「なんかヤバそうだよ、どうする?金光聖母様」
「詠唱が終わる前に私の魔法にかかると思いますが・・・。念のため離れましょう。彼はどうしますか」
「カフカさんのこと?掴まってるやつをわざわざ救いにいって自爆するより、いったん退いたほうがいいね」
「―・・・この屈辱は、後ほど倍にして返してやりましょう」
 まだ痛めつけられている彼を気にかけながらも、右天のプランに頷く。
「紫音も唯斗さんも戻ってきませんぇ、早く戻ってきはるとえぇんですけど・・・。―・・・えっ!?金光陣が消えましたぇ!」
 敵が鏡を壊しにかかっただけでなく、術の解除までしたことに驚いた綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)が声を上げる。
「主よ、金光聖母たちが逃げようとしてるのじゃ」
 紫音に装着しているアストレイア・ロストチャイルド(あすとれいあ・ろすとちゃいるど)が叫ぶ。
「これ以上、アルファさんを悲しませんぇ」
 ダッシュローラーで駆ける紫音に抱えられながら風花は、地獄の天使の翼で飛んで逃げようとする金光聖母の服をサイコキネシスで引っ張る。
「あの女を殺されたら困るのよねぇ」
 駆けつけたコンジュラーが氷像のフラワシを、紫音たちに纏わりつかせる。
「凍えちゃいなさい♪」
「そこだ!」
「魔女はあまり傷つけたくないんだけどな・・・っ」
 見鬼で唯斗がフラワシの位置を見破り、エースがライトブリンガーで氷像のフラワシを怯ませる。
「こんなガキにやられるなんてっ」
 フラワシが受けたダメージをくらった魔女は、足元をよろけさせる。
「此方は我等に任すのじゃ!主はそちらに集中を」
 主から離れたアストレイアは、魔女の相手をしてやる。
「あぁ、悪いなっ」
「む、我1人か?ふむ・・・いたしかたあるまい・・・」
 他の者は皆、金光聖母たちを追っていってしまったらしく、アストレイアは1人でドルイドに挑む。
「あらら、薄情な人たちねー?」
「こちからすると、敵のサポートをされるほうが厄介でな。通させぬぞ」
 援護に行かせはせぬ、と光術で目晦ましをする。
「―・・・っ!」
「術が使えなければ、何も出来ないじゃろう?」
 ドルイドが目を瞑った隙を狙い、シーリングランスでスキルを封じてやる。
「さて、我は主を追わねばな・・・」
 スキルが使えなければ、特に害もないだろうと放置し、先に行った者たちの後を追う。



「何分の1かの成功率な上に、失敗したらしばらく動けなくなるとか・・・。どんだけハイリスクなんだっ!?」
 完全不死になる望みがほとんどないじゃないか、とゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)は、疲れ果ててしまった。
「くそぅ〜っ、あの悪魔のような女め」
 失敗率の高いギャンブルなんかやってるか!と、諦めてしまったようだ。
 本当は適当な言葉を並べ、別の研究をしたのだが。
 それも自分だけ不死という幸せを手に入れるためだ。
 サンプルが完成し、あいらの研究をぶっ壊そうと、危険な賭けだったが金光聖母と戦ったり・・・。
「ていうか、戦わずトンズラしてればよかった・・・。うぅっ・・・なんであの時、サンプル飲んじゃったんだ俺様!」
 今思うとそれも、かなりもったいないことをした。
 あいつらの能力を確かめようと、ヘタしたらリンチされる覚悟で、嫌々護衛やってやったのに・・・。
 この仕打ちはなんだ!?と悔しげに地団太を踏む。
 結果、手元に残されたのがリスクが高すぎる産物だ。
 いいことなんて1つもありゃしない。
「はぁ・・・あの人数じゃ、明らかにアウトだし。いや・・・数っていうより、生物兵器並のが何人もいたな」
 助力してやるとこっちが危ないし、今更してやる義理もない。
 せめて不幸の元凶ともいえる金光聖母の最後でも見に行こうと、トボトボと歩く・・・。