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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別

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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別
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第三十五篇:宙野 たまき×アリサ・ダリン
 二人の出会いは最悪だった。
 学校の新学期の初日、両者ともに遅刻寸前で学校まで走っている最中。
 なんとか時間ギリギリで校門を抜け、中庭を突っ切って、教室まで走り込もうかという所で、二人は正面衝突したのだ。
 一人は男子生徒――宙野 たまき(そらの・たまき)
 もう一人は女子生徒にして転校生――アリサ・ダリン(ありさ・だりん)
 だが、もう合うこともないと互いに思っていたにも関わらず、クラスが同じで席も隣という接触は避けられない状況になった。
 しかしながら、そうした状況の中で、いがみ合うように言葉を交わしていく内にたまきの心境に変化が訪れる。
(もしかしてコイツいい奴なのかも)
 ふと、アリサのことをそう思った途端、彼女に対する気持ちが驚くほど変化した。
 一旦そう思ってしまったら相手のことが気になって仕方が無い。
 一挙一動を目で追ってしまう。白い手や桃色の唇にドキドキしてしまう。
 周囲には気付かれないように装うが実はもうバレバレである。
 そして、二人が出合ってからそろそろ一年が経過しようかという時――そう、終業式の日。
 下駄箱に入っていた手紙で中庭に呼び出されたたまきは、二人が最初に出会った、もといぶつかった中庭でアリサを見つけた。
 聞けばアリサも手紙で呼び出されたのだという。
 とりあえずベンチに座ってみる二人。心地よい緊張の中、たまきは無意識にアリサの髪へ手を伸ばしていた。
 それに驚き、びくりと震えるアリサ。だが、アリサは微かに頬を赤らめると、恥じらいながら言った。
「そなたなら良い」
 アリサのその言葉にたまきは背中を押されたような気がした。
 そして、決意を固めたたまきは、彼女に言うべき言葉を唇に登らせる。
「最初に俺たちがぶつかった場所――俺達が始まったこの場所で、新しい俺達を始めよう。好きだ、アリサ」
 そして二人は唇を重ねる。
 こうして二人にとって最悪の接触をした場所は、最良の接触をした場所となったのだ。