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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 2

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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 2

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第14章 働かざる者食うべからず…

「賢者の石の作成進度は、どのような感じですか?」
 アゾートの姿を見つけた高月 玄秀(たかつき・げんしゅう)は彼女の元へ寄り、いつごろ賢者の石が出来そうか訊ねる。
「まだまだ材料集めの段階なんだよね。なるべく失敗はしたくないし、全部そろってから研究していきたいかな」
「えぇ、材料も皆で集めたものですからね。慎重に進めたほうがいいでしょう」
 今日も聞けずじまいか…と、ため息をつく。
「どの作業を手伝ってくれるのかな?」
「アダマンタイトを溶かすのを手伝いにきたんです」
「じゃあお願いね」
「はい。溶かしたアダマンタイトを、扱いやすいように冷却すること以外にも、何かと手間がかかりますし」
「使った炉を冷やしてもらわないと、蓋を開けられないからね」
「1500度まで中の温度を上げたんだけど、どうかしら?」
 これくらいでよいのか聞こうと、ティアン・メイ(てぃあん・めい)は2人の間に割って入る。
「それだとまだまだ低いかと…。クラスのこともあるけど、それなりの魔力がないと大変ですよ」
 アゾートの代わりに玄秀が言い、ウィザードのクラスであり、魔力が高くないと厳しいだろう説明する。
「僕がやりますから。ティアは空いている炉の中に、アダマンタイトとビリジアン・アルジーを入れてくれる?」
「ぇっ…うん……」
 手の中の炉をパートナーに回収されてしまい、しぶしぶ他の作業へ回る。
「ルカもこっちを手伝うね」
「鉄道名って、シャンバラレールウェイズになったんだよね?」
「そうなの!シャンバラレールウェイズを採用してもらったのよ♪」
 アゾートに聞かれたルカルカは、嬉しそうに答える。
「シャンバラレールウェイズ。カッコいいけどちと長ぇか」
「そゆときは、頭文字とってSRよ」
 ぼそっと呟くカルキノスのために短略式の名称を考える。
「JじゃなくてSなのな」
「それじゃジャンバラになっちゃうじゃん」
「すでに他の人もSRって呼んでるよ?」
「うそっ、そうなの!?」
「そのうちSR弁当とか出来るかもね」
「そういうアイデアを募集するんですか?」
「あるといいな、って思ってるよ。玄秀さん」
「他にはどんなアイデアを募集するの?」
 仲良さげに話す2人の間に、ティアンがまたもや入り込んだ。
「駅舎の中にお店も欲しいんだよね」
「食べ物だけじゃなくって、服とかもあるといいわね」
「旅用のオシャレ着のショップね?あっ、ダリルこれよろしくね」
 アダマンタイトを溶かしたルカルカは炉を彼に渡し、アイデア出しに加わる。
「これを誰に届ければいいんでしょうか?」
「ベアトリーチェさんのところへ持っていてくれるかな」
「3人で修繕工事してるなんて、なんだか大変そうですね」
 玄秀がベアトリーチェのところへ移動すると、ティアンも彼についていく。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「数人だけで作業だなんて、大変そうですね?」
「えぇ、でも溶かすのもそうなんじゃないんですか」
「こっちは結構人がいるから、そうでもないですよ」
「はい、シュウ。こっちのも溶かしてあげて」
 さらに2人の間にも、さっとティアンが割り込む。
「魔列車もかなり進展してきたけど、1段落したらこれに乗って旅行して見ます?採掘からレール敷設まで全部やって来た事だし」
「…え。ええ、そうね。それ凄く楽しみ…!あの…でも…それ私でいいの…?」
 嬉しさのあまり思わず頬を赤らめるが、本当に自分でよいのが聞いてします。
「1人旅は退屈ですからね」
「本当に私でいいのね?」
「行きたくないの?ティア」
「ううん!一緒に行くわ」
 列車の完成も待ち遠しいが、彼に誘われたことが嬉しいらしく、いつもの元気なティアンらしくなってきた。



「次はルカが、アダマンタイトを運んでくれ。ん…?どこへいったんだ」
「そこにいるようだぞ、カルキ」
 ダリルが指差す方を見ると、ルカルカが修復作業を終えた車両を覗き見している。
 2人がそこへ行くとエースたちが1等車両の内装工事を始めている。
「エースたちは内装か。メシエ、お前もたまには働け」
 口ばかりで手伝うそぶりすら見せない彼の姿にカルキノスが苦笑する。
「貴族の私に働けというのかい?」
「いや、貴族でも働くやつはいると思うが。パラミタ内海で芽美も働いてるんだぞ」
 女子が重労働を行っているのに男子のお前は何もしないのか?と言う。
「私に似合わないようなことはしないのだよ」
「ずーっとこんな感じなんだよな」
 エースも半ば諦めた感じで苦笑してしまう。
「ほら、差入れに茶と握り飯やるから」
「気が利くね」
「いや、ちゃんと労働してからな」
「なっ!?」
 貴族の自分がお預けをくらうなんて!?とまさかの展開に驚きの声を上げた。
「働かざるもの食うべからずって聞いたことないですか?」
 ちょっとキツイ言い方かと思いつつ、これもメシエのためだとエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)が言う。
「アダマンタイトの精錬に協力しから、それでもう十分じゃないかな?」
「労働してこそ、ご飯が美味しくなるんだよ」
 スイーツよりも考えが甘いと言われた弥十郎が、さっきのちょっとしたおかえしをする。
「枕程度なら…、運んでやらなくもないのだよ」
「おいおい、枕だけってどんだけだ」
「それで不服というなら、私は手を使わないよ」
「まー、とりあえず食っておけ」
 とりあえず動くなら食べさせてやるかと、ぽんっと握り飯と茶を渡してやる。
「時に2人は炉を持っているようだけど、修理担当へ持っていく途中じゃないのかな?」
「―…あっ」
「ルカ、持っていけ」
「美羽さんところに持っていくね」
 内装工事中の車両から出ると、美羽の元へ走っていった。



「魔列車にあったカーテンとか結構痛んでるけど、キレイに洗ってありますし、リバーシブルの枕カバーの布の材料に使わせてもらいましょう」
 エオリアはソーイングセットから針と糸を取り出して縫い物を始める。
「大人だけでなく子供も乗るはずですから。宿泊客に合わせた雰囲気作り用として、用意してあげませんとね」
「兄さん。床とかだけじゃなくって、配線も手伝ってよ」
「お前、テクノの資格もってるんだから本気出してみろよ」
「本気出しても、つなげるの大変なんだよ?」
「お前が前回意志を通したらから、食堂車がどうなったっけ?」
 大忙しの弥十郎を八雲が軽く睨む。
「えー…。だって、工事しないままお披露目するのもどうかと思うよ」
「それはそれ、これはこれだ」
 彼の泣き所を突きまわし、配線工事を彼に任せる。
「酷いや兄さん…」
 頬を膨らませる彼の傍を、壁紙を運ぶ珠ちゃんが通過する。
「珠ちゃん、そこに置いておいてくれる?」
 八雲の声にまるまったままのシートを床に転がす。
「シャワーの装置が届いたぞ」
「今行くよー!」
 業者から届いたとエースに言われ、いったん外へ出る。
「重いから気をつけろよ」
「わぁっ、確かに重たいよこれ。―…組み立てからじゃないにしてもキツイなぁ」
 2人で2等車へ運ぶと、そこからまた1人きりの過酷な作業が始まる。