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取り憑かれしモノを救え―調査の章―

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●迷子の後の現実

 調査の途中、リオン・ヴォルカン(りおん・う゛ぉるかん)はいつの間にか迷子になっていた。
「あれ、ここは……」
 どう考えても広場ではない。森の中だった。
 考え事をしていたら、というよりも早く事件を解決して、北都の獣耳と尻尾を思う存分もふもふしようとやる気を出していたのだが。
 目の前に広がるのは、澄んだ湖だった。
 湖底には大きな翠の宝石が沈んでいた。
「不気味ですね」
 呟き、リオンはこれが翠玉石なのだろうかと思った。
 水深が深く、手に取ることはできそうになかった。

 パキン

 清泉北都(いずみ・ほくと)に押し付けられるように持たされた禁猟区の力が込められたお守りが硬質的な音を立てて割れた。
 それは確実に危険の兆候だった。
 そして、水面が盛り上がる。
「えっ……?」
 緑色の物体が、ぷるんぷるんと揺れながら、リオンを押しつぶそうとする。
 巨大なスライムだった。
 あまりにも鈍重すぎて、リオンは簡単に避けることができたが、これは一人の手に負えるものではなかった。
 驚きは一瞬で引っ込め、逃げる。
 確実にこれは玉石の守護者だと確信が持てた。
『こっち』
 そして、リオンの耳朶を打つ細い声。
 こっち、こっち、と細い声に導かれながら、リオンは走る。巨大スライムはもう追ってきておらず、速度を緩める。
『本当は結界が発動したら、外には出られないんだけど』
「ええ……。それよりもどなたでしょうか?」
 率直な疑問を口にする。
『そんなことよりも、今君が一人でいると危ないよ』
 リオンの疑問に答えず、声はただ促す。
『色々調べているんでしょう? 早く戻って人を集めなきゃ』
「確かにそうですけれども……」
 納得がいかなかった。だからこそ渋るのだが、声はリオンを早く返そうとしているようだった。
「いえ、言い争いをしている場合じゃないですね」
 リオンは早々に諦めて、声に従うことにした。
『そうしてちょうだい。まだ避難させないといけない人いるから、バイバイ』
 声はそう言って気配を消した。辺りを探っても気配は伺えない。
 いつの間にか目の前には開けた場所だった。少しはなれたところには集落も見える。
 リオンは、北都に連絡をとったのだった。