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優しい誘拐犯達と寂しい女の子

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優しい誘拐犯達と寂しい女の子

リアクション

「絵音、今日は一緒にいられるよ。明日からしばらくずっと」
「一緒にお出掛けしてママとお揃いのリボンを買おうか」

「本当に!?」

 信じられない言葉に絵音は、驚くもほんの少し疑う心は消えていない。

「あぁ、本当に」
「これから少しずつ良いパパとママになっていくわ」

 両親は、絵音をぎゅっと抱き締めた。一番大事なものは分かっている。ただ、霧でかすんでいただけだ。

「バパ、ママ、大好き!!」
「絵音!!」

 今度は飛び込み、嬉しさに涙を流す親子。
 幸せな空気に周りのみんなはほっと安心していた。
 これで何もかも解決かと思いきやまだ一つだけ問題が残っていた。

「迷子になった絵音ちゃんを保護してくれた方達は……」
 ナコは保護した民間人のことを思い出すが、どこにも見当たらず困っていた。

「この薬で元に戻れますわ」

 綾瀬は大人薬を仲直りを見守っていた三人組に渡した。彼らは一気に飲み干して元の姿に戻り、ナコの前に姿を現した。

「申し訳ありません!!」

 三人は自分達のしたことを黙っていることに堪えられず、深く頭を下げて謝罪の言葉を口にした。
 ナコが不思議な顔をして訊ねる前に三人は本当の事情を話し出した。亡くなった妹と勘違いして連れ去ってしまったことを。

「……そうだったんですか」

 ナコはそれ以上のことは言えなかった。彼女は大好きな祖母を病で失っているので三人の悲しみが分かるから。

 三人組の話しが終わったところで

「……この子が彼らの妹さんです」

 陽一が聞き込みに使った写真を絵音の両親に見せた。

 絵音を抱き締めたまま不審な顔で三人の話を聞いていた二人は、

「これって絵音!!」
「そっくりだわ」

 とても驚き、娘と写真を見比べた。二人はナコを責めることで忙しく写真は見てもいなかった。ナコ自身も二人に写真を見せるどころではなかったのだ。

「本当に彼らには悪気はなく、亡くなった妹のサミエちゃんをとても大切に思っていたんだ。穏便に今回のことを済ませないだろうか。そして、良ければこれからも絵音ちゃんとこの三人が会えるようにできれば……」
 驚きが落ち着いたのを見計らって陽一は何とかうまく収拾できないかとお願いしてみる。ついでに絵音と三人が会えるようにも。

「お願い、パパ、ママ。許してあげて、とても楽しかったんだよ。また、遊んでもいいでしょ」
 決断に困っている両親に絵音は一生懸命心を入れて訴えた。

「彼らが絵音ちゃんに危害を加えるようなことは一切ありませんでしたので不安は無用のことです。頼みをきてあげてよろしいかと」
 洋も絵音の訴えの助けになればと今日一日彼らが絵音に対して優しく接していたことを報告した。

「……そうですか」
「あなた方の気持ちもよく分かりますし」

 両親は洋の言葉で陽一の願いを受け入れた。以前ならば、どんな事情であろうと警察に引き渡していただろうが絵音を永遠ではないが、ほんの少し失いかけた今なら三姉弟の気持ちがよく分かる。写真は両親から陽一へ、そして落としたナカトの手に戻った。

「ありがとうございます」
「感謝します。なぁ、ナカト」
「あぁ。ありがとうございます。本当に」

 三人は、予想外のことに涙を流しながら絵音の両親を見た。

 三人の喜びが落ち着いたところで、みとが最高の提案を言葉にした。

「……記念に写真を撮りましょうか」

 絵音と三人が出会い、これからも繋がっていく出発点である今日という日を思い出として形に残すために。

「……写真」
「これからも会ったりしてもいいのかな」
「……」

 イリアルは、サミエの写真を思い出し、ハルトは絵音を見てナカトは言葉を失う。事件解決して絵音と仲良くなる。それは幸せなことなのに踏み出せない。サミエはもう帰って来ないと分かっていても。ほんの少しの後押しが欲しい。

「悲しい過去は消せません。でも過去は過ぎて未来へ向かっているんです。ほら、新しいお友達、絵音ちゃんと出会えましたしね」

 みとは、ゆっくりと三人の後押しをし、最も三人の心に入り込む言葉を口にした。

「きっと、お姉ちゃんとお兄ちゃんのことが大好きなサミエちゃんが会わせてくれたんですわ」

「サミエが私達を……」
「僕らを会わせてくれたか」
「優しくていっつもナカト兄ちゃん大好きって」

 みとの言葉で在りし日のサミエを思い出していた。いつも優しくて笑顔の可愛い妹。みとの言うように本当に会わせてくれたのかもしれない。空にいる妹が元気を出してよと言って。

 記念写真は、三人の気持ちが落ち着いてから撮った。
「はい、笑顔で」
 みとの合図で絵音を真ん中にして四つの笑顔を形にした。

 この後、絵音は両親と共にたくさん遊んでから帰った。そして、娘との大切な絆を深めるように翌日からしばらく家族三人で仲良く過ごした。もちろん、お母さんとお揃いのリボンも忘れずに買って。一週間後、幼稚園に行く絵音の頭にはお母さんとお揃いのリボンが嬉しそうに揺れていた。

 三人は、サミエの記憶は消せないが、新たに新しい友達絵音の思い出を増やしていっている。四人でいろんな所に行ったりしてとても楽しい時間を過ごすようになった。

 今回のことで絵音はスノハとこれまでよりもずっと大切な友達になって両親との絆を確認し、新しい友達が三人も増えたのだった。

担当マスターより

▼担当マスター

夜月天音

▼マスターコメント

 はじめまして、またはこんにちは。
 今回のシナリオを担当させて頂きました夜月天音です。
 参加して下さった皆様、本当にお疲れ様です。皆様の様々なアクションのおかげで楽しく執筆ができ、愉快なものになりました。ありがとうございます。
 リアクションを雀の涙ほどでも楽しんで頂けましたら幸いです。
 これからも頑張っていきますので、どこかでお会いすることがありましたらどうぞよろしくお願いします。
 

▼マスター個別コメント