リアクション
【十二 宴の後】
狂乱の宴が繰り広げられたバラーハウスと地下闘技場だが、夜明けと共に、全てお開きとなった。
ホストとしてノルマを達成した者と、レスラーとして一勝以上を収めた者は約束通り、解放される運びとなった。
朝までVIPルームで特訓を続けていたセルシウスは、衿栖と一緒に正面玄関に姿を現した。彼もまた、ノルマを達成した者のひとりなのである。
「大変、お世話になった。これで私も、立派なホストのひとりとなれたようだ」
いいながら、セルシウスは軽く跪くと、紳士の礼を持って衿栖の手の甲に自身の唇を優しく押し当てた。
衿栖はセルシウスのキスを全く予想していなかったらしく、酷く狼狽してはいたが、同時に嬉しそうでもあった。
そんな衿栖とセルシウスの様子を片目に眺めながら、悠司はホール業務を終えたベファーナに、ふと思い出したように声をかける。
「よぉ、聞いたか? 何でもこのバラーハウスと地下闘技場、今後も存続するそうだぜ。お前、どうする? このままホール担当で残るか?」
「へぇ〜、そうなんだ……イケメンが集うバラーハウスか。ちょっと考えてもみても良いかもね」
ベファーナは、どこか嬉しそうに頬を軽く緩ませる。
その笑みが何を意味するのか、悠司にはよく分からない。
一方、バラーハウスが今後も営業を続けると聞いて、エメはふむ、と小さく考え込んだ。自身が携わるタシガンの薔薇での支配人業務に専念するのは勿論だが、このバラーハウスにも関心が高い。
今後、何かの形で関わってゆくのも、悪くはないという発想が、彼の頭の中で咄嗟に浮かんだのである。
「楽しそうだね……でも、今後は各校のトップクラスは参加しないのが基本方針らしいから、今夜みたいな華やかなキャストでお客様をもてなせるかどうかは、微妙なところだよ」
バラーハウス存続に、同じく強い関心を寄せる天音が、幾分微妙な表情でエメに告げる。
しかしエメは、苦笑混じりに小さく肩を竦めるばかりであった。
美男の楽園は本来、薔薇の学舎だけで十分にその役目を賄える筈であったが、バラーハウスの如き施設がシャンバラ政府公認で運営を続けるという事態は、それなりに考えさせられる話でもあった。
一方、地下闘技場の出口はバラーハウスとは別のところに設けられている。
やっとの思いで一勝をもぎ取ったラルクは、遂にこの夜、一度も勝てなかったマイトの背中をどやしつけながら、地上へと続く大階段を登りかけた。
「まぁ、そう落ち込みなさんなって。靴下マンの話じゃあ、もうあと二、三日戦ってりゃ、折を見て出して貰えるって話じゃねぇか」
ラルクの話は事実である。
靴下マンとアンズーサンタは、ノルマを達成出来なかったホストや、勝利を挙げられなかったレスラーに関しては、もう更に二日か三日程、それぞれの舞台で頑張って貰った後に全員を解放する、と宣言していた。
「けっ。てめぇはさっさと勝ち拾ったからって、呑気なこといってくれるぜ……」
しかし実際のところ、マイトは然程に落ち込んではいない。
戦う機会が増えるということは、その分イルミンスール武術を披露する機会が増えるということでもある。たとえ三日程度でも、宣伝の為に時間が確保出来るというのは、彼にとっては却って良かったのかも知れない。
「そうですか……空京に、正式なプロレスリング施設が残されるというのですか。これはプロレスファンとしては、大いに心躍るところではありませんか!」
何故か上半身どころか全身ほぼ裸に近い格好で地上へと上がったルイが、筋肉という筋肉を喜びに震わせながら、朝日に向かって歓喜の咆哮を上げた。
パラミタでは、パラミタ式サッカーやパラミタ式野球などが普及しているが、正式なプロレス施設というのは意外と少なかった。
今後は、ここで毎晩、熱い戦いが見られることになる。
そう考えるだけでルイの頬は自然と緩み、彼の筋肉は更にぴくぴくぶるんぶるんと、朝日の中で歓喜の震えを何度も繰り返していた。
『バラーハウスと地下闘技場へようこそ!』 了
当シナリオ担当の革酎です。
このたびは、たくさんの素敵なアクションをお送り頂きまして、まことにありがとうございました。
今回は何といっても、普段登場させたことのないNPCが大勢居ますので、もうそれだけで手一杯となってしまいました。
もっと日頃から、他マスターのシナリオを読んでおかないと、と痛感した次第です。
尚、バラーハウスにてピンク色の高級シャンパンをオーダーされた方には記念のアイテムを進呈する手続きを取っております。
お手数ですが間違いなく記念アイテムが配布されているか、一度ご確認頂きますようお願い申し上げます。
もし手違い等ございましたら、ご連絡頂ければすぐに対応致します。
それでは別の機会がありましたら、またどうぞ、宜しくお願い致します。